目から鱗の中国法律事情 Vol.48

2020/10/07

中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国民法における所有権(中国民法第240条~第270条) その2

 前回は、中国民法が制定されたことをきっかけに中国の所有権の構造について簡単に見てきました。今回はその続きです。(※ 以下、「民〇条」は、2021年1月1日から施行される中国民法の条文番号を、「物〇条」は、2020年12月31日まで施行される物権法の条文番号を意味します)

 

国家所有の財物とは

 それでは中国で国家の所有とされているものにはどのようなものがあるのでしょう。これは例が非常に多いので、全てを列挙することはできませんが、代表例をあげれば以下のようになります。鉱物資源、河川、海域(民247条、物46条)、無人島(民248条)、都市の土地、法律で国家所有とされた農村の都市郊外および農村の土地(民249条、物47条)、森林、連峰、荒地、砂浜などの天然資源(法律で集団所有とされたものを除く)(民250条、物48条)、国防施設(民254条第1項、物52条前段)、鉄道、道路、電力設備、電話・通信およびガスなどの基礎施設で法律で国家所有とされたもの(民254条第2項、物52条後段)。概ねこのようなものが国家所有とされています。基本的には土地(人間が居住する土地については都市部)などが国家所有の財物とされていると考えてよいでしょう。また、民法では物権法では制定されていなかった「無人島は国家所有とする」という規定ができました

 

(Confirmed)759_中國法律集団所有の財物とは

 国家所有の次に法律で規定されているのは、「集団所有の財物」についてです。これも、細かく全ての例をあげることは難しいですが、代表例をあげれば以下のようになります。法律の規定により集団所有とされた土地、森林、連峰、草原、荒地、砂浜(民260条(一)、物58条(一))、集団所有の建築物、生産施設、田畑の水利施設(民260条(二)、物58条(二))、集団所有の教育、科学、文化、衛生、体育などの施設(民260条(三)、物58条(三))、集団所有のその他の不動産および動産(民260条(四)、物58条(四))。

 これらのうち特に農民が集団所有している不動産や動産については、具体的に誰が利用するのかや土地に生じる費用をどのように負担するかなどはその集団のメンバーで決定することとされ(民261条、物59条)、集団が所有している土地および森林、連峰、草原、荒地、砂浜などは集団の経済組織もしくは村民委員会で所有権の行使方法を決定するとしています(民262条、物60条)。(続く)

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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