中国法律コラム53 「中国輸出管理法について」

2020/11/25

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 今回の法律コラムでは、2020年12月から施行される「中国輸出管理法」について解説させていただきます。

 この中国輸出管理法は、米国の華為などに代表される中国企業への禁輸措置に対する対抗措置(報復)であると考えられます。2020年9月、米国にて、米国の製造装置や設計ソフトを使用した半導体の華為への供給が全面的に禁止されるという措置がなされた背景があります。

 中国輸出管理法は、簡単に理解すると、中国の戦略物資やハイテク技術の輸出管理を強化する法律です。中国は、安全保障などを理由に禁輸企業リスト(米国のエンティティリストのいわゆる中国版)を作成し、米国等の特定の企業への輸出を禁止するつもりです。つまり、中国も米国と同じ理由で禁輸措置を講じて反撃をしたいというものです。

 中国当局は、今後、戦略物資などについて管理品目を決定し、対象の物品の輸出を許可制にしようとしています。この管理品目のリストはまだ公布されていませんが、中国輸出管理法の施行日が来月であることから、近日中に公布されるものと考えられます。

 この管理品目にリストアップされた品目については、中国の輸出企業は、あらかじめ最終ユーザーと使い道に関する証明書を当局に提出しなければならないとされています。当局は、その証明書をもとに、「国家安全への影響」、「軍事転用の可能性」「輸出先」などを考慮し、輸出の許可を判断することになります。

 さらに、中国当局は、特定の企業を「中国の安全や”利益“に危害を加える恐れがある」と判断すれば、これを禁輸リストに掲載し、その企業に対する輸出を禁じることができるようになります。国家の“安全“ということであれば、軍事的な内容に限定されそうなものですが、国家の”利益“に危害を加える恐れがあるという表現は、当局の裁量により非常に広範囲にわたって適用できる表現と理解できます。

 なお、禁輸リストの対象は、米国などの最終ユーザーに限られず、中国から輸入した原材料を加工し、中間財や完成品を最終ユーザーに輸出する日本など第三国の企業も対象となりえるとされています。

 中国が実際に禁輸企業リストに米国の企業を載せる措置に踏み出せば、報復の応酬がエスカレートする懸念があります。日本の企業についても、中国の政治的な主張に同調しなければ、不利益を与えるという強権的な姿勢が懸念されます。

 日本企業は米国の輸出規制に従わざるを得ないところ、それが中国の国家安全又は利益に危害を及ぼしたと判断される可能性もあり、それにより、日本企業が禁輸対象となる恐れがあります。

 中国でビジネス活動をされている日系企業の皆様には、今後近い将来公布されるであろう禁輸リスト、管理品目リスト、実施細則などの関連法令に留意され、今後の最終ユーザーを米国企業とする輸出への影響を極力回避すべく、今後の対策を講じされるように助言差し上げます。

以 上

 

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ddd広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問

大嶽 徳洋  Roy Odake

行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:odake@yamatolaw.com

中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
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九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
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