尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.39

2021/03/03

製造物責任について

 日本の製造物責任法にあたる中国の「製品品質法」では、誰が、どのような場合に、いかなる責任を負うのでしょうか。

 

製造者への請求

 製造者は、製品の欠陥により人身、欠陥製品以外のその他の財産(以下「他人の財産」という)に損害を及ぼした場合、賠償責任を負います(製品品質法第41条第1項、民法典第1202条)。この「欠陥」とは、以下のいずれかの場合をいいます(製品品質法第46条)

 ①人身、他人の財産の安全に危害を及ぼす不合理な危険(設計上、製造上又は告知上の原因で危険なもの)があること。

 ②人体の健康、人身、他人の財産を保障する国家基準、業界基準がある場合、これに適合しないこと。

 このように、製品に欠陥が存在(欠陥の存在)し、これにより(因果関係)、損害が発生(損害の発生)したことが認められれば、「欠陥について自分には過失がない」という反論をすることはできません。但し、以下a.~c.の事情を証明した場合、製造者は賠償責任を負いません(製品品質法第41条第2項)。

a.製品の流通を開始していない
b.製品の流通を開始した時点では、損害を引き起こした欠陥が存在していなかった
c.製品の流通開始時点の科学技術水準では欠陥の存在を発見できなかった

 

販売者への請求

 販売者の過失によって製品に欠陥が生じ、その欠陥により人身、他人の財産に損害が生じた場合、販売者は賠償責任を負います(製品品質法第42条第1項)。つまり、「欠陥の存在」、「因果関係」、「損害の発生」の要件に加えて、販売者の賠償責任には「過失」という要件が加わります。

 また、販売者は欠陥製品の製造者、供給者を明確に示すことができない場合、損害賠償責任を負わなくてはなりません(製品品質法第42条第2項)。

 

販売者と製造者間の求償

 例えば、本当は製造者に責任があるのに、販売者が被害者に損害を賠償した場合、販売者は製造者から賠償額を回収できるのでしょうか。

 このような販売者と製造者の間の損害の分担を求償といい、以下の通り定められています(製品品質法第40条第2項、第43条)。

・欠陥が製造者の責任である場合、被害者に賠償した販売者は、賠償額を製造者に請求できる。
・欠陥が販売者の責任である場合、被害者に賠償した製造者は、賠償額を販売者に請求できる。

 

親会社が訴えられる可能性

 中国の子会社が製造した製品について、企業マークや商標等を理由に、日本の親会社に対して訴訟が提起された場合はどうなるのでしょうか。

 「製品品質法」では、上記のように製造者と販売者について責任が規定されています。日本の親会社は、一見すると製造者でも販売者でもないため、訴えられるリスクはないようにも思います。

 この点について、子会社が製造した自動車について、商標権を保有する親会社を被告として提訴することを認めた最高人民法院の判断が出ています。中国企業に商標の使用を許諾した場合、その中国企業の製品について、商標権者である日本企業が被告となる可能性があるため、注意が必要です。

 


zhuojian

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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害

 

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