尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.40

2021/03/17

商業賄賂

 中国では、誰に対する、どのような利益提供が賄賂になるのでしょうか

 中国で「賄賂」は、主に刑法と不正競争防止法で規制されています。

 本稿は主に公務員(中国語で「国家工作人員」)に対する賄賂及び民間企業等の職員(中国語で「非国家工作人員」)に対する賄賂について検討します。

 

1.刑法上の賄賂について

 刑法で規定されている賄賂罪には、主に以下2つの場合があります。

(1)公務員等に対する賄賂(刑法第389条、刑法第391条)

 日本と異なるのは、国家機関等への賄賂も処罰対象となっている点です。不正な利益を図るために利益を提供した場合、それが特定の担当者に対するものではなく、国家機関等に対するものであっても賄賂となります。

ここでいう国家機関等には、国有企業が含まれます。また、国有企業等で働いている人は公務員と非公務員に分類され、非公務員については、以下の(2)として処理されます。

(2)民間企業等の職員に対する賄賂

 不正な利益を得るための取引先職員に対する利益供与も、贈賄に該当する場合があります(刑法第164条)。また、利益供与を受けた企業の職員も、収賄に該当する場合があります(刑法第163条)。

 

2.不正競争防止法上の賄賂について

 上記の刑法とは別に、不正競争防止法も賄賂についての規制を定めています。

 不正競争防止法は、経営者が財物又はその他の手段で賄賂行為を行なうことにより取引機会又は競争上の優位を図ることを禁止しています。つまり、取引先にリベートなどを渡して取引することを禁じているのです。

 帳簿外で密かに相手方である会社又は個人にリベートを渡す・受け取る行為が賄賂として扱うとしています。値引きや仲介人手数料については、事実通りに帳簿に記載することが求められており、正確な帳簿への記載が重要です。

 

3.刑事立件基準

 では、軽い飲食代を支払ったり、ちょっとしたお土産を持っていくこと等も、常に賄賂として処罰されてしまうのでしょうか。

 賄賂に該当するかどうかは様々な要素を考慮する必要があり、一律に判断することは困難ですが、1つの目安として立件基準というものがあります。刑事責任の立件基準に関する規定によれば、類型ごとに下記金額に該当する疑いがある場合、立件しなくてはならないとされています。

(1)公務員に対する賄賂罪

① 贈賄金額は3万元以上
② 贈賄金額は1万元以上、3万元未満であるが、下記の事情がある場合、刑法の第390条に基づき賄賂罪により刑事責任を追及しなければならない。
a.3人以上に対して賄賂を行った場合
b.違法所得を賄賂に用いた場合
c.賄賂により職務の抜擢、調整を図った場合
d.食品、薬品、安全生産、環境保護などの監督管理職責を負う公務員に賄賂を行い、違法活動を実施した場合。
e.司法職員に賄賂を行い、司法の公正性に影響を与えた場合
f.もたらした経済損失金額は50万元以上、100万元未満の場合

(2)民間企業等の職員に対する賄賂

a. 会社等の職員の収賄:6万元以上
b. 会社等の職員への贈賄:6万元以上

 

 商業賄賂について何かご相談がありましたら気軽にご連絡ください。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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