PPWビジネス通信 × アナシス Vol.42

2021/06/23

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

 

 「マネジャーの職務と賃金が合っていない気がするのですが?」

 

 

問い:会社ができた当時から頑張ってくれているスタッフがマネジャーなのですが、どうも管理職とは言えない気がするのです。またマーケットプライスで賃金を払っているのですが高く感じてしまうのですが?

黒崎:残念ながら年功序列的な賃上げと昇格によるマネジャーのポジションであるから、そういう感想を持たれてしまうのではないでしょうか。タイトルと賃金だけがマネジャーであり、その役割の本来の責務は果たしてないものと思われます。経験年数が長いだけで「便利」だからそのポジションを与えてきて、実際には管理職としての役割も要望せず、しかし給与は現地の管理職の水準を支給してきたケースは数知れずあります。

 これは当人の問題というよりも、経営側の問題。約2~3年で変わる駐在員派遣という制度と、人事課題を先送りしてきたツケとも言えるでしょう。新型コロナの影響もあって駐在員の数はさらに減っていく傾向もある中、現地管理者の育成は待ったなしの企業が増えています。しかしその定義がされてないか、あるいは周知徹底・人材開発がなされてないことが非常に多いのです。

 あらためて自社の管理職の定義をご確認ください。例えば「課の目標策定に参加し、実行計画を立案し、担当チームを指揮・監督・指導・育成して当該目標を達成する」「会社の戦略や方針についての概要の指示に基づき、課またはそれに準じる組織の業務について、自主的に企画・運営し、かつ実施上の実質的責任をもって部下を管理する」などがあります。あるいはごく簡単に「担当組織の基本計画・管理・成果責任」ということもあるでしょう。決して言われたことだけをする、ベテラン社員のことを意味しません。

 その管理職の賃金にも課題があります。例えば香港の日系企業の管理職の給与レンジは月給で3万から4.2万香港ドルぐらいが全体の5割です(アナシス調べ)。一方日本の課長クラスの平均は香港ドル換算すると、月約4.1万香港ドル(『労政時報』発表の2020年度の平均年収829.4万円を元に、年で14ヶ月分の月収とした計算による)。同じく日本の係長クラスでおよそ3万香港ドルとなり、まさに上述のレンジとほぼ同じとなります。

 日本の課長クラスが現地では部長や社長となり、その人達からみれば「香港の給与は高い」と思ってしまうのもある意味理解できます。昨今香港の賃金が割高なのではとも言われますが、それなりの職務価値を発揮すればいいのだと考えます。その為にも本来の役割をしっかり定義し、それを要求し続けていかないと、その部下達は市場での雇用され続ける能力=エンプロイヤビリティを失っていくことになるのではないかと危惧しています。日系企業に勤めることで、外で通用しなくなるなんてことが起こらないようにしたいものです。

 さらに現地化も本格的に進めなければならないという状況もあるのであれば、一歩進んで経営層の育成が必要になります。「個人の管理」から「組織の管理」へ移れるかどうか。一番難題となるのが「本社と現地法人」「自社と顧客」「経営と現場」など、利害が対立する場面やトレードオフ下での判断ができるかどうか。管理職の仕事もままならない人にこのあたりまで任せるのは無理だと、これまでずっと先送りされてきた課題です。

 また、香港などでは小さな組織の中で、「持ち上がり昇進」が起こります。いままで同僚だった仲間のうちの1人がいきなりその中の上司になるという状況。すると「ポストは課長だが、心とスキルは一般層」というケースが起こりやすいのです。そして知っている領域はマイクロマネジメントとなって部下が成長せず、知らない領域は何の貢献もできないなどということも起こります。組織が大きければ、人事異動で違う職場のマネジメントをさせるということもあるでしょうが、多くの職場ではその職務経験者を昇格させるという考えでしょう。その場合、昇進した階層の意識を持ってどう行動してもらうか、その変革の時期をどう創造していくかが現地トップの役割のひとつです。外部の研修だけでは当然足りません。研修に頼るという考えでは現地管理者は育たないのです。

 こうした現地管理者の育成そのものが、現地トップの成長そのものにもつながります。そして彼ら現地管理者を、「点」ではなく「面」で日本からサポートできる体制も創造していく必要性があるのです。

 


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