尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.47

2021/06/30

労働紛争の解決手段

 労働紛争が生じた場合、労使双方間の和解合意または労働組合等を介しての和解合意、調停機構による調停、労働紛争仲裁委員会による仲裁及び人民法院による訴訟により、労働紛争を解決することができます。

 

⑴労働紛争の範囲

 労働争議調解仲裁法第2条によれば、中国国内の使用者と労働者の間に生じた次に掲げる労働紛争は同法を適用するとされています。

①労働関係の確認に起因して生じた紛争
②労働契約の締結、履行、変更、解除及び終了に起因して生じた紛争
③除籍、解雇及び辞職、離職に起因して生じた紛争
④労働時間、休息休暇、社会保険、福利、研修及び労働保護に起因して生じた紛争
⑤労働報酬、労働災害医療費、経済補償金または賠償金等に起因して生じた紛争
⑥法律、法規に定めるその他の労働紛争

 

⑵労働紛争の解決手段

 労働紛争が生じた場合、①労使双方間の和解合意または労働組合等を介しての和解合意、②調停機構による調停、③労働紛争仲裁委員会による仲裁、④人民法院による訴訟により、労働紛争を解決することができます(労働争議調解仲裁法第4条、第5条)。

 

⑶労働仲裁

 労使双方が協議もしくは調停を望まない場合、または労使双方間で協議もしくは調停を経ても労働紛争を解決することができない場合、当事者は労働契約の履行地または使用者所在地の労働紛争仲裁委員会に仲裁を申し立てることができます。

 つまり、労使双方は、上記の和解合意及び調停を行わずに、直接労働紛争仲裁委員会に仲裁を申し立てることができ、労働仲裁申請の時効期間は、当事者がその権利が侵害されていることを知り、または知り得るべき日から起算して1年とされます(労働争議調解仲裁法第27条第1項)。

 労働関係の存続期間中に、労働報酬の支払遅延に起因して紛争が生じた場合は、労働者による仲裁の申立ては上記1年の仲裁の時効期間の制限を受けないとされます。ただし、労働関係が終了した場合は、労働関係の終了日より1年以内に仲裁の申立てをしなければなりません(労働争議調解仲裁法第27条第4項)。

 労働紛争は、労働契約の履行地または使用者所在地の労働紛争仲裁委員会が管轄し、当事者がそれぞれ労働契約の履行地及び使用者所在地の労働紛争仲裁委員会に対し仲裁を申し立てた場合は、労働契約の履行地の労働紛争仲裁委員会が管轄することになります(労働争議調解仲裁法第21条第2項)。

 

⑷訴訟

 労働争議調解仲裁法第5条の規定により、同法が適用される労働紛争に関して、労働紛争仲裁委員会による仲裁判断を不服とする場合、当事者は人民法院に対し訴訟を提起することができるとされますので、労働紛争事項については、労働紛争仲裁委員会による仲裁を経なければ、訴訟手続に入ることはできません。

 ただし、①労働紛争仲裁委員会が仲裁申立事件を受理しない場合、②労働紛争仲裁委員会が仲裁申立を受けた日から5日以内に受理するか否かの決定を下さない場合、③労働紛争仲裁委員会が所定の仲裁期間内に仲裁判断を下さない場合、当事者は当該労働紛争事項について人民法院に訴訟を提起することができます(労働争議調解仲裁法第29条、第43条第1項)。

 なお、労働紛争事件が訴訟手続に入った場合は民事訴訟法が適用されます。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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