目から鱗の中国法律事情 Vol.58

2021/08/11

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国における保証契約(中国民法第681条~第702条)その5

 今シリーズでは、2021年1月1日から施行された中国民法典上の保証契約について見てきました。今回は、最高額保証契約という日本でいう「根保証(ねほしょう)」について見て今シリーズの締めくくりとしましょう。

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  根保証(ねほしょう)とは

 根保証とは、将来発生する不特定の債務を保証することをいいます。例えば、継続的に売買取引をしている会社同士があったとします。そこでは、絶えず売買が発生して、金銭のやり取りをしています。この金銭に保証をかける場合、売買を行う一回ごとに保証契約を締結することは非効率と言えるでしょう。そこで、〇月〇日までに発生する、売買契約により発生する金銭支払い債務について、〇〇円を限度として、一括して保証すると、不特定の債務に対して保証を行うのが根保証契約なのです。

 

最高額保証契約

 中国民法典第690条は、日本でいう根保証に相当する最高額保証契約について規定しています。条文は以下の通りです。


第1項
保証人と債権者は、協議により最高額保証の契約を締結し、約定した最高債権額限度の範囲内で一定期間に連続して発生した債権について保証を提供することができる。

第2項
最高額保証は本章の規定の他、本法第2編の最高額抵当権の規定を参照するものとする。


 ここで参照される最高額抵当権の規定で、最も重要なのは、その額の確定の時でしょう。中国民法典第423条を最高額保証契約に合わせて読み直すと、①約定された債権確定期間となったとき、②債権確定期間を約定していないか、その約定が明確でない場合に、債権者または保証人が最高額保証契約を締結してから2年を経過した後に債権を確定しようと請求したとき、③新たな債権が発生する可能性がないとき、④本来の債務者または保証人が破産を宣告されたときなどに最高額保証契約が保証する金額が確定するとされています。これにより金額が確定した場合は、通常の保証契約と同じ取扱いになります。

 保証契約というのは、2人で行っていたはずの契約に保証人が出てくるなどやや複雑になる場合があります。しかし、民法典の基本的な規定ではあります。本シリーズ第2回では日本と異なる点についても触れました。そのあたりについてはよく知っておく必要があるでしょう。


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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