僕の香妻交際日記 第67回 成功が幸せ?それとも幸せが成功?

2021/11/10

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 先日、社内でのミーティング中に副社長(女性)がこんなことを口にした。

 

 「多くの男性にとっては成功が幸せで、多くの女性にとっては幸せが成功だから、
男女間で意見が食い違うのは仕方がない」

 

「成功が幸せ」と「幸せが成功」…

 

 両者は言葉が似ているので、一瞬理解に苦しんだが、よくよく考えてみたら結構深い意味合いが込められていることにようやく気がつき、よっ!さすが副社長!とは声には出さなかったが、たまには良いこと言うよねと改めて感心したものである。

 

 自分自身はどちらかというと、やはり今の自分に関しては前者だろうと思う。振り返れば大学卒業後、就職もせず東京の親元を離れて大阪、韓国、中国、そして香港と転々としてきたのも無性に成功意欲に駆られていたからであった。今年で34歳だというのに、自分の中では未だにお金持ちになりたい、有名になりたい、大きな家に住みたい新車のテスラに乗りたいという中学生みたいな野心がゴォーゴォーと燃えているのだ。

 ただ、中学生と少し異なる部分は、お金持ちになることで家族も幸せにできるし、チャリティー活動で貧しい人たちも助けられるはずだと偽善に満ちた考えを持っていることだろう。

 一方で、私の妻はというと完全に後者である。家族で過ごす時間こそが最高の幸せの瞬間だと思っているので、私が仕事や飲み会で夜遅くなるのをすごい嫌がる。私からすれば飲み会だって将来の成功のために乾杯しているのであるからその辺はちょっと理解してほしいなあと思うのだが、妻は「そんなの関係ねえ、そんなの関係ねえ」の小島よしお一辺倒。

ただ、小島よしおと少し異なる部分は、妻は最後に「はい、おっぱっぴー!」…とは言わないので、最終的に空気が重くなり笑いが絶えないどころか家の中の笑い声が絶えるというところだろう。

 

 このように私は成功すれば幸せになれると思っていて、妻は幸せに過ごすことが成功だと思っているので、それはもう常日頃から意見の食い違いは避けられない。私は良かれと思って仕事に精を出し、妻は良かれと思って家族との時間を確保しようとする、お互いが良かれと思ってやっていることなので、否定されたり受け入れてもらえないとどうしてもイラっとしてしまうのである。

 

 それでも副社長の言葉を聞いた後はさすがに、「そうか、だから自分はしょっちゅう妻と喧嘩するのか。世界一の富豪、Amazonのジェフベゾスが離婚した理由もきっとそうだったに違いない」ということを感じ、反省というか、ワークライフバランスは大事だなあと考えさせられた。

 

 それにしても、人間の成功欲というものは厄介なものである。34歳にもなると、自分の頭の中では「お金では幸せになれないし、他人を幸せにすることもできない」と理解しているのにも関わらず、依然としてお金が欲しい、有名になりたいという欲望は消えない。

 

 そもそも成功とは何を指しているのか? 家を買うことなのか?会社が上場することなのか? それらを達成したところで果たして自分の心は満たされるのだろうか?9月から娘が幼稚園に行くようになり、夜も9時には寝るようになった。そうなると、私が家に帰るともう寝ているなんて日も増えて、娘と会話ができずに一日が終わることも増えてきた。

 

 将来の不透明な成功のために今を犠牲にしている自分は果たして幸せと言えるのだろうか。否、幸せではない。

 

 成功が幸せなのか、それとも幸せこそが成功なのか。その答えは明確ではないか。


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴8年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。

 

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