PPWビジネス通信 × アナシス Vol.47

2021/11/24

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

 

 「SDGsって、踊らされていませんか?」

 

 

問い:COP26とか脱炭素とかSDGsとか。なんか踊らされている感がありますが、人事マネジメントにはどう影響がありますか?

黒崎:SDGsに絞ってお話しします。それは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人を取り残さない」ことを誓い、全世界で取り組むものとしています。この趣旨に賛同し、本社の意向含めて遂行しようとする方がいらっしゃる一方で、私の周囲にも懐疑派が少なからず見受けられます。曰く、「内容が抽象的であいまい」「17の目標は多すぎて、よく分からない」「目標設定の根拠が不明」「大手企業だけのもので、中堅中小企業には関係ないのでは?」などなど。

 「踊らされていないか?」とメタ認知しながら考えることが肝要となるでしょうが、将来的に経営リスクとなり得る無視できない課題として突きつけられています。と同時に、未来のビジネス獲得のための機会として捉える必要性を感じます。

 ただし、その目的が重要です。周りがやっているからなどと、腹落ちしないで手をつけると危険です。特に現地法人においては、日本本社からの要請などで動かされることもあり、どうしても主体的に関われないこともあるでしょう。なぜ本社が真剣かと言えば、投資の判断材料となっていることもその一つです。ESG投資と言われ、環境・社会・ガバナンスに配慮されている企業に投資が集まるような動きがあります。

 SDGsに取り組む企業のメリットはよく三つ取り上げられます。ブランドイメージの向上、投資家含むステークホルダーからの評価の向上、そして採用力の向上。社会貢献度を見て就職を考える人々が増加してくると言われています。人権や環境などSDGsの目標に配慮しないと、投資も人もビジネスも失う可能性があるということです。

 SDGsが単なる社会貢献と違うのは、本業を活かした目標達成を目指すものだということです。3,500兆円と言われる新しいビジネスの糧になる可能性があるわけですが、主体的に取り組まないとコストとストレスに倒れてしまいます。将来儲かるかも知れませんが、今ではない。だからこそ現地法人マネジメントでは難しい。期限付きの駐在では、その期間内では成果を上げにくいのです。不確実で先が見えない時代に、とりあえずは2030年までの国連お墨付きの課題は見えている。それが17の目標と169のターゲットという経営のヒントであり、そこからバックキャスティングしてアクションプランをたてることは有効だと思われます。

 その中で直接人事的にかかわる課題は4つと言われています。

(1)健康経営

  17の目標で言えば、「3.すべての人に健康と福祉を」の目標。たとえばジムの利用料補助やメンタルヘルスに関する研修などが考えられます。

(2)ダイバーシティ

 「5.ジェンダー平等を実現しよう」から、男女差別問題や仕事と育児の両立支援、あるいはダイバーシティに関連する研修など。

(3)働き方・人材育成

 「8.働きがいも経済成長も」という目標。仕事に意義を感じていない現地スタッフは少なくありません。この分野は是非とも進めていくテーマです。

(4)障害者・地域間差別をなくす

 「10.人や国の不平等をなくそう」という目標ですが、香港・華南では二つの地域での賃金レベルや権限の差が存在するケースがあります。これをどう埋めていくのかは、今後注目されるところです。そして香港では4つの差別条例がありますので、それを侵害しないマネジメントも当然求められます。

 以上17の目標の中で人事に関連すると思われるのはこの4つです。そしてなによりも理念との関連性です。理念やミッション・ビジョンといったものの実現に、このSDGsの目標がしっかり組み込まれていくと、企業と社会の関係性が明確になって、その理念の実現である日常の仕事へのコミットメントが生まれるのではないか。それが、このテーマを考えることの最も深いところにあると私は考えます。このSDGsの全体像は、現地経営マネジメントの「軸」となるものへのヒントとなりますので、一度思考を通しておくことをお勧めします。経済産業省の『SDGs経営ガイド』は一読の価値ありです。


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