殿方 育児あそばせ!第30回

2022/02/23

殿方育児あそばせ

 

葉子と春の雪

今年の春節は離れ離れに過ごした。葉子とママは実家のある安徽省に里帰りし、終わりのなかなか見えないコロナ禍で、万が一にも広州に戻ってこれなくなり仕事に支障が出る事態を心配した私は、一人広州に残った。葉子とママは、帰省ラッシュとUターンラッシュに巻き込まれないよう、また、コロナ感染のリスクを減らすためにも、早めに行って、遅めに帰ってくるという策をとった。なんだか文章にしてみると程度は違えど、戦時中の疎開をイメージさせる緊張感がある。
聞けば、中国に赴任している方々の多くが苦労され、寂しい思いをしているようだ。コロナ禍で家族は先行して帰国、当人は一時帰国もままならず、もし行って戻ってくるならば、ひと月は隔離に費やす必要が有り、家族に会うのも一大決心が必要だという。(最近では、日本での自主隔離期間は14日から7日間に短縮されたらしい)これほどまでに私達を翻弄し、人々の生活を変えてしまったコロナ禍とは、どれほど恐ろしいものか改めて思い知らされる。

美顔アプリを使った葉子  パパではなく、ママに似て美しく育ってほしいと切に願う

美顔アプリを使った葉子 
パパではなく、ママに似て美しく育ってほしいと切に願う

しかしながら、この厳しい状況にもてあそばれ、家庭をダメにしてしまうのか、それとも共に立ち向かい絆を強固なものにするのか、それは選択であると思った。現に、私の周りには離れ離れになっても家族のことを想い、本当に大切にしている人たちがいる。どうか、全ての家庭が最良の選択をすることを祈りたいものである。
それに比べ、我が家といえば、大したことはない。実に恵まれた状況である。中国大陸は広く、そこそこの距離はあるが、たかだか数週間の「離れ離れ」である。寂しくないかといえば嘘で、それでも寂しいに決まっているが、それを紛らすように頻繁にWeChatでやり取りをした。残念ながら、ほとんどをビデオ通話でやり取りをしたため、肝心の春節らしい写真や動画は残らなかった。だが、「離れ離れ」を超えて同じ時間を過ごしたことが私の心には残っている。

親戚の家の近所では アヒルやニワトリに出会った

親戚の家の近所ではアヒルやニワトリに出会った

葉子は、また新しい体験をしたそうだ。春節といったら、花火や、爆竹、豪華な家庭料理は外せない。360°――全方位、そこかしこから花火が打ち上げられる。とんでもない規模の花火は中国でしか、春節のその瞬間にしか味わえないだろう。初めての爆竹、花火は怖がっていたらしいが、おいしい料理は堪能したという。私もコロナ禍以前の春節には何度も一緒に実家に行って春節を満喫したが、毎度、義母や義姉たち自慢の手料理が朝昼晩、毎日のように食べられる。義弟は怯え切った私に、爆竹の安全なやり方を教えてくれた。さらには、昼から義父とお酒を交し、家族全員で夜更かしをするという実に贅沢な時間である。中国では、春節をとことんまで楽しむのだ。
実家でしか体験できない本当の春節を、葉子は目の当たりにしたことだろう。
そして、葉子にとって、さらにうれしい出来事があったという。雪が降ったのだ。
生まれて初めての雪をどう感じたのだろうか、その場に居合わせることが出来なかったのは、残念だがその時の動画と写真で喜びようを見ることは出来た。

初めての雪  パパはいっしょに雪だ るまを作りたかった

初めての雪 
パパはいっしょに雪だ
るまを作りたかった

雪かきを手伝った

雪かきを手伝った

 

 

 

 

 

 


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神沼昇壱(かみぬま しょういち)

随筆家。広州在住の日本人。2002年に中国に渡り留学と就職を経験。その後、中国人女性と結婚した。2021年現在一児の父として育児に奮闘中。

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