総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:紫外線と日焼け

2022/05/25

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日焼けというと、子供の頃に袖をめくりあげてお互いの肌の黒さを競った経験がある人は少なくないと思います。夏休みが終わって2学期の始業式に久しぶりに顔を合わせた子供たちの恒例行事でもありました。休み中、子供たちはより黒くなろうとしてできる限り日にあたって遊んだものです。なかには日焼けしても黒くなり難い人もあります。最初赤くなった肌は触れないほどヒリヒリとして火照っていますが、1週間もすると皮膚が剥けてきます。幼少時に、親父の背中の皮をできるだけ大きくむくことを、まるでゲームのように楽しんでいた記憶もあります。

ところで、黒く日焼けした姿に健康美を重ねる風潮は少なくとも10数年前まで続いていたのではないでしょうか。当時、日焼けサロンなるものも流行っていましたが、日焼けに対するイメージはこのところ大きく変わり、最近は日光を悪者と捉える傾向さえあります。日焼けどころか、直射日光に当たることを極端に避けるようになり、行き過ぎた日焼け予防に弊害が生じたりする事態も起きるほどです。何事にも極端にぶれてしまう傾向が強いのは日本人の特徴なのかもしれませんが、日焼けの原因である紫外線に対して、ただ悪いものとみなすのではなく、その正体を正しく知る必要があるのではないでしょうか。

紫外線とは
日光をプリズムに通すと、光は赤から紫までいくつもの色に分かれます。プリズムを通して太陽光をいくつもの色に分離して見せたのは、万有引力の法則で有名な英国のアイザック・ニュートンでした。彼は、虹は7色と定義したものの、これはただ7つの音階を意識しただけだとの説もあります。虹のもっとも内側は紫で反対に外側は赤ですが、実際には虹色はグラデーションとなっているのでいくつの色に分かれているという言い方はできません。国や民族によって虹の色数を8色としたり、反対になんと2色と子供に教えたりすることもあるそうです。そんな虹の赤のさらに外側にあるのが赤外線、そして紫の内側にあるのが紫外線ですが、もちろんそのどちらも見ることはできません。赤外線は熱線とも呼ばれ暖かさを感じるものであるのに対して、紫外線は化学線と呼ばれ、その作用は強く生物の遺伝子にまで影響し、シミやしわの原因であるばかりか皮膚がんのリスクを高めてしまうものでもあります。ヒトの健康にまで影響する紫外線ですが、その多くは上空のオゾン層で吸収されるので地上に降り注ぐ量はそれほど多くありません。この紫外線、悪い作用ばかりではなく、その強力な殺菌作用を応用した殺菌滅菌装置が食品や医療といった分野で使われています。女性にとってはネイルアートのジェルネイルが身近かもしれません。ジェルを硬化させるのに紫外線を利用しています。またヒトの皮下では紫外線の作用を利用してビタミンDの合成を行っています。日本での話ですが、日焼けを極端に避けている若い女性に骨粗しょう症が急増したり、その子供にくる病が増えたりしており、小児科医の間では大きな話題になっています。紫外線は必ずしも有害と言えるものではなく、健康のために必要なものでもあります。

肌の色と紫外線
肌の色がより白くありたいと願う女性は少なくないようですね。「美白効果」をうたう化粧品も良く売れているようです。肌の色は何万年もかかって地域ごとに変わっていったものです。北国では極端に少ない紫外線を効率よく吸収するために肌がより白い人が生き残ってきたのです。反対に紫外線量が強い地域に住む人は、強烈な紫外線から身体を守るために肌は黒くなければいけないのです。日本人など中緯度地方の人はその中間です。オーストラリアなど紫外線がとても強い地域に住んでいる白人は、もともとそんな地域には住んでいなかった人々です。彼らの間には近年皮膚がんの罹患率が激増しており社会問題化しています。知らなかったこととはいえ大きなリスクを背負って移民してしまったのです。地域の紫外線量に適した肌の色はとても大切であり、いたずらに白くするのは決して好ましいことではありません。何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。

夏の紫外線との付き合い方
成層圏のオゾン層といっても、仮にそのオゾンを集めて0℃の地上に敷き詰めたとしても、その厚さはわずか3mm程度にしかなりません。たったそれだけのオゾンが大きな役割を演じており、紫外線の中でも特にエネルギーが大きく人体への影響が強い波長のものを効率よく吸収してくれています。つまり適度な紫外線が降り注いでいる環境ができたことで人類が生き延びてきたともいえます。我々は紫外線を避けながらもそれを適度に利用して生きています。それを一方的に悪いものだと決めつけ、徹底的に排除していこうとする姿勢は決して好ましいものではありません。

5月から8月ころまでは紫外線量が特に多い季節です。夏のレジャーを楽しむにはしっかりとした紫外線対策が必要ですが、いつであっても正しい知識を持つことが大切です。


堀様1
藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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