エッセーの瀬!Vol. 123

2022/07/13

essay (2)

~在中邦人の感賞的後日談~
音楽、文藝、料理、絵画…世の中のありとあらゆる藝術を、市井の目線から解いてゆく…
気鋭のライター4人が送る痛快リレーエッセイ

〈森のようちえん〉と子どもたち③

興味あることに心ゆくまで、徹底的に打ち込ませる環境がものすごい集中力を育てる。
俗に言う、学習中のトランス状態。それをここでは大人の都合で中断したりしないから、そのタイミングでグッと覚えてしまうのだろう。そして常に自分で考え、自分で選択する訓練をしている彼らは、大人にだって誰にだって臆さず自分の意見を言えるようになる。大人顔負けの鋭いコメントもしばしば。子供でなく、1人の人間として尊重されて生活しているから、誰に対しても忖度無く、自己肯定感も高く堂々と付き合える。羨ましいなー。
そして〈森のようちえん〉の特徴の1つである「縦割りクラス」。年齢別にしない混合クラスにより、下の子は上の子を見てどんどん新しいことに興味を覚えるし、優しくされたことをまた下の子にできるようになる。上の子は下の子の面倒を自然とみる。社会性、コミュニケーション能力が育つ循環だ。

色んな年齢と触れ合うことでお互いに影響し合う

色んな年齢と触れ合うことでお互いに影響し合う

時には小学校と幼稚園の合同もあるから、遊びながら更に学習の幅は広がる。小学生なんて、もうあなたは子育てできるんじゃないですか? と思うくらいの強者も出てくる。おまけに彼らはすこぶる丈夫だ。屋外で自然と色んな菌が体内に入るからかもしれない。風邪をひく、体調悪いって滅多に聞かない。体力を自然と使うから2、3年いると腹筋も割れちゃうんだって。
コロナの影響で野外保育にスポットが当たって、新しい園もどんどんできているらしい。ここ1、2年で女子児童の入学も格段に増えた。いいじゃない、大いに広がってよ。心身共に健康な子が増えるなんていいことばっかりでしょ。なんなら日本が今抱えている問題、ストレス、心の病や自死などなど。こんな教育で育った子が増えたらわりと解決しちゃいそうな気さえしてくるけど。

カニ? 魚? 川は遊びと発見の宝庫!

カニ? 魚? 川は遊びと発見の宝庫!

そして、何よりスタッフのスキルが高い! 適度な距離感で子供たちの好奇心をくすぐり、環境だけを整え、とことん見守る。ひたすら見守る。口を出したくなることもある。それはちょっと……とか、それはえらいね! とか評価したくなる。でもそれは大人の基準。本当に一人ずつの子供のことを真剣に考えてないとできない教育をしている。
通常の保育園は3歳児20人に対し定められたスタッフは1名(さすがに現場はもうちょっと配置しているだろうけど)。それに対し〈森のようちえん〉はスタッフ1人にマックスで園児6名程度だから、細かく1人ずつを見てもらえるし、親子共に関係が密になる。スタッフとの距離感は今まで私が経験した通常の教育機関とは全く異なり、同じ目標の同志か身内(イトコくらい?)と言った方が近い。
これも強制ではないが、園によっては様々なアートや音楽などの時間があり、プロのアーティストに参加してもらい本物に触れたりと、感性をくすぐるイベントを設けていたりする。農業や食育に力を入れている園も多い。保護者からも提案オーケー。スープ、アロマ、農業にヨガ、語学、味噌作り、カメラ、陶芸など子供に刺激を与えそうなイベントなど企画し、園の活動に参加できたりする。
彼らは未来の希望の光に見える。
さて、その光たちを待ち受けているものは……? 次回に続きます。


スクリーンショット (1691)

Mami&さとけん
ほんの一時帰国のつもりがコロナの影響で戻れなくなり“元”在中邦人に。夫婦間の会話での口癖は「中国だったら……」と、なんでも中国ベースで思考。
老珠江(珠江ビール)を片手に小炒肉や麻辣烫や东北饺子や花甲粉や炒面や抄手や重庆小面や猪杂汤や烧烤が食べられる日をただただ待ち焦がれる。

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