目から鱗の中国法律事情 Vol.78

2023/04/05

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国の非法人組織 その2

前回、中国では民法典によって、法人ではない団体(非法人組 織)にも財産関係を持つことが許されていると言いました。これ について、より深く見ていきましょう。

中国での条文解説
前回も、法律上は、生きている人間が「自然人」で、自然人ではないけれど法律上「人」として扱い、財産の所有などが認められている存在が「法人」であると説明しました。このような棲み分けをしている以上、理論上「財産の所有ができる『法人』ではない組織」という団体が存在するはずがないことになります。
しかし、例えば、石宏(主編)『中華人民共和国民法総則条文説明、立法理由及相関規定』(北京大学出版社、2017年)8頁や楊立新(主編)『中華人民共和国民法総則要義与案例解読』(中国法制出版社、2017年)35頁などでも、「自然人、法人、非法人組織の間の社会関係は多種多様で、さらに所有に関する社会関係以外についても、民法典によって調整することとしている」とだけ説明しています。そして、ここにはなぜ中国では非法人組織にも財産関係があり得るのかが説明されていません。
中国では、非法人組織も財産関係を持つということが当たり前すぎてわざわざ説明することもないということなのでしょう。

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非法人組織に財産関係を認めるのは中国独自の規定?
中国では、非法人組織も財産関係を持つことが当たり前と認識されているため、なぜこのような規定となっているのか明確な説明はなされません。そのため、根拠のない筆者の想像の域を出ないのですが、中国の非法人組織に関する規定は以下のような理由があって制定されたのではないでしょうか。社会主義国では、もともと個人が財産を所有するという発想がなかった(薄かった)ため、外国との貿易を行うために財産関係の法律を急ぎ制定したという経緯があります。そのとき、中国は法律を実態に合わせるという制定方法を採っていたので、サークルのように、法人格を取得していないにもかかわらず、「組織」として成立している団体と「法人」の違いが明確には分かっていなかったのではないでしょうか。
このため、中国以外の社会主義国の民法には、このような規定は必ずしもあるわけではありません。例えば、北朝鮮の民法などは、非法人組織が財産関係を持てるという規定は持っていません。(続く)

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

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