僕の香妻交際日記 第83回 もし「あんた、豚みたいね」と言われたら?

2023/04/05

P16 HK Wife_727私は味にうるさくない。辛いものも甘いものも、熱いものも冷たいものもなんでも食べる。中国米もタイ米も大好きだ。ストレスがたまると、白飯は夕飯だけで一人で4合食べる時もある。勢いあまって昔はよく妻の分のおかずまで食べてしまいマジギレされることもしばしばあったが、最近は私のこの来るもの拒まずの食欲に対して妻がときおり感心するしぐさを見せてくれるようになった。

食べなくても生きていける
夕飯に白飯を4合も食べると聞くと、では朝食と昼食は何を食べているんですかと疑問に思う読者もいるかもしれない。意外に思われるかもしれないが、私は子供のころから朝食を食べない子で今でも基本的には食べない。敢えて挙げるなら水。朝食は水。昼食は前の晩の残り物があれば弁当にして持っていくが、残り物がなければ何も食べない。なので弁当を持参しない日は夕飯まで特に何も食べずに一日を過ごすのだ。
何も食べないで大丈夫なんですかと思われるかもしれないが、ハングリー精神というものはハングリーな状態でなければ湧いてこないと信じているので、胃に何もない状態のほうが仕事に集中できるのである。

ゴミはゴミ箱へ、食べ残しはパパへ
小さいころ、祖父に「茶碗の米粒は最後の一粒までありがたく味わうんだ」と食べ物を粗末にするんじゃねえ精神を教え込まれた。その精神は今も私の食の基本姿勢として、いつ何時誰とどこで食事をしようとも胃袋に伱間がある限り最後まで食べ切るように心がけている。
例えば、妻はタピオカミルクティーが大好きで、週に3回は仕事帰りに駅前で買って帰ってくるのだが、毎回必ず飲みきれない。なので残ったタピオカとミルクティーは私が飲み干す役割を担っている。また、来客者が娘のために買ってきたケーキや妻が会社でもらってきた軽食、義父が作って持ってきた焼きそばなど我が家の冷蔵庫は常に食べ物で溢れていて、そのほとんどが3日経っても冷蔵庫内の同じポジションに居座っている。そして、いよいよ食べ物の表面が傷み始めたころ、私の出番である。妻からは「もう食べなくていいわよ」と言われるが祖父の教えに背くわけにはいかないと箸の動きを止めることはない。

豚のように食べる
「胃に入ればみんな同じだろう」という信念は食べる時間がろくに取れない時に功を奏する。特に娘は食べるのが遅いのでその面倒を見ていると自分が食べる時間が削られる。しかし、だからと言って先に自分の食事を済ませようとするとうっかり妻の分までおかずを食べてしまう可能性があり、結局妻と娘の二人が食べ終わるまで待つことになり、だいたい自分に残された食事時間はいつも5分程度である。

先週の土曜日、幼稚園のクラスメートの誕生日会に招かれたのだが、出発まであと10分しかないというところで娘の皿にはまだ肉やら野菜やらが半分ほど残っていた。娘は麺好きで麺ばかり食べておかずを食べないのだ。しかし、この日ばかりはさすがに時間がなかったので、「えいっ」と娘の食べ残しや食卓に置かれていた残りの肉から野菜からスープまですべて自分のボウルに放り込み口の中にかき込んだ。かつてTVチャンピオンで活躍された大食い女王の赤坂さんを彷彿とさせた私の食べっぷりを向かいで見ていた妻がボソッと「あんた、豚みたいに食べるわね。すごっ」と私の豪傑食いを褒めてくれた。

人間が豚に例えられる場合、たいていはネガティブな印象を受けるが、この日私はなんだか新しい自分を見つけられた気がして、初めて自分で自分を褒めたいと思えた。

 


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴10年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。

 

Pocket
LINEで送る