メディポート健康コラム:認知症のお話

2023/07/05

スクリーンショット (2420)近年、がんの診断や治療に関しての進歩は目覚ましく、5年生存率どころか10年生存率までもが評価されるようになってきました。ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生によると、あと十数年もすればがんの死亡リスクはほとんどなくなるとのことです。にわかには信じられないお話ですが、仮にがんが死の病でなくなったら現在の平均寿命は8歳延びると試算されており、一気に進む超高齢化社会では100歳人口が激増します。心身ともに健康で超高齢期を迎えるのであれば問題は少ないのでしょうが、今後さらなる少子化で高齢者を支える若年者人口が減少するうえ、高齢化対策予算が不足することが懸念されます。介護の問題が著しく深刻化することに今から覚悟が必要です。運動機能の低下に関しては早くからの準備(努力)でその進行を緩やかにできますが、メンタルの問題は対応が極めて困難です。誰もがそろそろ開発されるのではないかと期待する認知症の治療法(治療薬等)は、今もまだ確立されたものがありません。幸いにも早期にその予兆をつかめたとしても、がんのように完治の可能性が高くなるというものではなく、がんの治療以上に難しいのが認知症の治療であると断言しても良いのかもしれません。高齢化が進むとともに認知症への関心は今後ますます高くなるのは当然の流れですが、一方でその対策が追い付かないことに対する不安も大きくなるでしょう。

<認知症の種類>
アルツハイマー型認知症
最も多いタイプの認知症で患者は全体のおよそ70%にもなります。認知症というと「アルツハイマー」と連想されるほど一般的な認識として浸透しており、この病気は高齢化社会に生きる我々の人生における大きな不安材料になっています。アミロイドβという特殊なタンパク質が脳組織に溜まるのがこの認知症の原因であるとされ、新しいことが覚えられなくなる記憶障害はもちろん、進行すると家族の認識さえできなくなります。新しい状況への対応が困難になったり、衝動的な行動を取ったりすることもあり、周囲の見守りが必要です。この認知症の初期の症状は、物忘れという高齢者では普通に起きる加齢現象との区別がつきにくいので、自分はアルツハイマーではないかと極端に心配になってしまう人も少なくないようです。

血管性認知症
脳出血や脳梗塞が原因になります。血液の循環が悪くなって脳の一部が壊死してしまい認知機能が低下します。認知症患者に占めるこのタイプの割合は15~20%程度でそれほど多いわけではありませんが、発症リスクを低くすることはある程度可能です。高血圧症、コレステロールや中性脂肪が多い脂質異常症、あるいは高血糖(糖尿病)といった血管に直接的に働くリスクを取り除くことは可能であり、それによって血管性認知症の発症リスクを低下させることができます。

レビー小体型認知症
脳内にレビー小体という異常タンパクが現れることで発症します。血管性認知症とほぼ同じくらいかやや多い患者がいるものと思われます。早期においての記憶障害のレベルは軽度ですが、幻覚を見ることが少なくありません。またレム睡眠行動異常症といって、睡眠時に叫んだり、身体を大きく動かすなどで患者自身がケガを負ったり、周囲の人を意識しないまま傷つけてしまうこともあります。その症状の割には自分がおかしいという自覚には乏しいタイプの認知症です。

前頭側頭型認知症
認知症の中では比較的まれなタイプです。人格の変化や異常な行動などが伴う一方で、ほかの認知症に認められる記憶障害や失語などは、初期にはあまり認められません。しかし症状が進むにしたがって周囲への関心が薄れたり、物事に異常に執着したりする行動が目立つようになり、同じことを繰り返すことも珍しくありません。だんだん行動範囲が狭くなって、最後は引きこもり状態から寝たきりになる可能性が高い認知症で、難病法に基づき医療費助成の対象となる「指定難病」に登録されています。

<認知症の予防>
残念ながらこれをやれば認知症が確実に予防できるというものはありませんが、少しでもそのリスクを低くする努力は無駄にはなりません。認知症は脳神経の問題なので、脳を普段から良く使うことや、血管の老化を遅らせるために循環器系疾患のリスクを高くしないことが大切です。ズバリ、生活習慣病の予防と治療です。軽度の運動の継続も効果的。ほかの人との交流をもって良く会話するなど、いくつになっても社会的つながりを持つことも大切です。

認知症の研究は世界中で盛んに行われ確実に成果は上がっているものの、予防や治療に明るい兆しが見えているとは言い難く、認知症対策は人類の永遠の課題になる予感さえします。がんの治療成績が確実に向上し寿命が延びるのに比例して認知症患者が増えます。認知症のリスクを少しでも低減させるために、可能な限りの努力が必須です。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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