僕の香妻交際日記 100通の履歴書から5分で5人を厳選する方法

2023/10/04

P16 HK Wife_727第86回

香港の大学生は6月で卒業、7月8月の最後の夏休みを満喫し、個人差はあるもののだいたい9月から本格的に就職活動を開始する。エネルギッシュで優秀な若い人材を欲する企業としては、この時期が一つ採用活動への力の入れどころである。

OKR/KPIを事前に設定する
新しい人材を採用する際にまず会社がするべきことは、どのような機能が今会社に求められているか(欠けているのか)を明確に理解することである。求人広告を出す前にその職位の職務内容はもちろんのこと、毎月、毎週、毎日の業務及び行動目標、いわゆるOKRやKPIを詳細に決めておく必要がある。新入社員が達成すべき項目とそのための日々の行動目標が事前に明確であればあるほど、入社1 日目から即戦力として期待ができる。
日々の行動目標を設定することは新入社員にとってだけでなく上司の助けにもなる。入社当初は会社のこと仕事のことがよく分からないので、中には入社初日からあれだこれだ質問攻めをしてくる新入社員がいる。上司に質問すること自体は悪いことではないが、あまりに質問の頻度が多かったり常識はずれな行動があったりすると、その新入社員の世話に追われて自分の仕事ができなくなってしまうケースも少なくない。人手不足で新入社員を雇ったのにも関わらず、その新入社員のせいでより一層生産性が下がったとなれば本末転倒である。

履歴書で見極める
香港での新卒採用の場合、履歴書で注目すべきところは大学名とGPA(学業成績)、インターン経験といったところであろう。香港内の5大大学出身やGPA3.0以上(4.0が最高)などの情報から学業優秀な人材かどうかはある程度見極められるが、結局のところ長く戦力になる若手人材は素直でどんな仕事にも積極的に取り組める人間に限る。
中途採用の場合は、履歴書である程度会社に必要な知恵と経験を持った人材かどうかの篩(ふるい)にかけることができるだろう。経験値以外の部分で注目すべき点は前職で昇進経験があるかどうかである。香港では2,3年ごとに転職しながら給与や職位を上げていく人が多いので、意外に一つの会社で昇進経験のある人が多くない。なので、この条件を満たす履歴書に焦点を当てることで、たとえ100通の履歴書が目の前にあったとしても比較的簡単に5人の候補者に絞ることができる。27263554_l

正しく求人広告サイトを活用する
香港での求人広告といえばJobsDBが一番に頭に思い浮かぶ人が多いだろう。求職者の登録人数も豊富で広告掲載費も比較的安く、タレントサーチという機能で企業側から直接目ぼしい人材にアプローチもできる。ただし、JobsDBが強いのはSenior OfficerからAssistant Manager層の人材で、新卒採用やSenior Manager層の採用にはあまり向いていない。
新卒採用で一番効率がいいのは大学のキャリアセンターに連絡を取って求人広告を掲載、または採用を希望する学部の教授から直接生徒や卒業生に求人広告を流してもらうことである。それぞれの大学で専門性の高い学部が異なるので、どの学部出身の人材が欲しいのか、どの大学がその分野で強いのかを調べてから大学に連絡を取ることで、最短距離で優秀な人材に巡り合うことができる。そして何よりも大学経由での求人広告は費用が掛からないのと、学生の就職活動のサポートをキッカケに大学や教授とのネットワークを構築できるのでまさに一石三鳥だ。

採用に焦りは禁物
私が今勤めている会社も、私の妻の勤めている会社も、私の友人が経営している会社もどこも皆社員教育や人材採用で苦労している。
私の会社では常に人手不足が発生している。以前はとりあえず頭数だけでも揃えておきたいと星5段階評価のうち星3つくらいの印象ならその人材を採用していたこともあったが、彼らが入社してみたら見事に期待を裏切られたという苦い経験も少なくない。そのような経験もふまえて、今年度始めに採用した中国部門のマネジャー職は適材者を見つけるまで半年の時間を費やしたが、その我慢の甲斐もあり、彼女のおかげでようやく中国ビジネスが軌道に乗ってきた。猫の手も借りたいくらい人手が不足しているからといって、本当に猫の手を借りてしまってはやはりうまくはいかない。人手不足の状況下でも、人事担当は平常心で辛抱強く人材選びに励むべきである。そうすれば必ず星5つの人材と巡り合うことができるはずだ。


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴10年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。

 

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