100年以上続く贖罪の大砲「ヌーンデイ・ガン」

2023/11/29

海岸沿いで毎日鳴りひびく大砲
ドーーーン!!
香港随一の繁華街、銅鑼湾の海岸沿いにとどろく大砲の音。知らずに近くを通り過ぎる人は、この地鳴りのような轟音にさぞや驚かされることだろう。これは毎日正午に発射されている「怡和午砲(ヌーンデイ・ガン)」と呼ばれる空砲である。

よそ見している暇はない!
銅鑼湾のヨットハーバー前に、ぽつんと設置されているこの大砲。小さな砲台以外には特に建物などもなく、なんとも地味な佇まいだ。周囲を柵に覆われ普段は施錠されていることから近づくこともできず、その存在に気付かず通り過ぎる人も多い。
しかし決まって正午前になると、柵の周りに小さな人だかりができ始める。100年以上にわたり必ずこの時間に行われる儀式を見学するためだ。
発射まではほんの一瞬。12時が近づき、正装した砲手によってカンカンと小さく鐘が打たれたかと思うと、流れ作業のごとく準備が進み、気づけば凄まじい大砲音があたりを包む。あっという間の出来ごとだ。
発砲が終われば、ここからは観光客向けの撮影タイム。30分間だけは敷地内に入ることが許され、大砲を近距離で見ることができたり、砲手と一緒に記念写真が撮れたりする。

砲手が何度も腕時計を確認しながら砲台に立つ。右手で引き金にかけた紐を持ち…

①砲手が何度も腕時計を確認しながら砲台に立つ。右手で引き金にかけた紐を持ち…

左手を高く上げて…

②左手を高く上げて…

③発射!

③発射!

④煙残るなか定位置へ戻る砲手。ここまでわずか10秒!見逃すなかれ。

④煙残るなか定位置へ戻る砲手。ここまでわずか10秒!見逃すなかれ。

元々は刑罰だった!?
現在となっては、すっかり観光名所のひとつとなったこのヌーンデイ・ガン。起源は、香港にヘッドオフィスを置くイギリス資本の世界最大級商社、怡和洋行(ジャーディン・マセソン)による祝砲だった。1860年ごろから始まったというこの祝砲は、港に到着したVIPへの歓迎として撃っていたのだという。
これがどうして正午を知らせる時報となったのかに関しては諸説あるが、一般的に広まっているのは、イギリス海軍による「刑罰」というもの。
ある時、VIP中のVIPの来港に気合いを入れた同社が、21発もの大砲で盛大に迎えたところ、「一般企業が大砲を無駄遣いするなど何事か」とイギリス海軍に叱責を受け、罰として正午に毎日大砲を鳴らすことを要求されたのだとか。日本占領時など一時的に中止となっていた期間はあるが、イギリスの植民地時代が終りを迎えた後も、現在に至るまでこの独特な伝統は続いている。

貴方も撃てる!
実はこの大砲、一般人でも放つことができる。体験者には発砲記念として銃弾のレプリカが贈られるほか、リクエストをすれば有料でバグパイプ奏者が発射を盛り上げてくれるそう。ただし、これには条件が1つある。慈善団体である「香港公益金(コミュニティチェスト)」にHKD33,000以上の寄付金を納めることだ。

行き方)MTR銅鑼湾駅D1出口からワールドトレードセンターへ。ビル横にある階段からトンネルを通って海側地上階に出たらすぐ。

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