~香港で田舎暮らし~ ヴィレッジ・ハウス(村屋)通信 Vol.1

2023/11/29
Vol.1 不動産仲介手数料のグレーゾーン

文・鳥丸雄樹

先日、ある理由で住んでいた部屋を退去しなければならないことになった。猶予は約2ヶ月。さて、どこに住もうか。20年ほどの香港生活、振り返ると尖沙咀のビルの屋上にあるペントハウス(違法建築)、牢屋のように狭い套房、プールなど施設が充実した高層マンションと、色々なところに住んできた。
思案していると、半年前にオフィス近くまで打合せに来てくれた日本人男性の言葉を思い出した。「今日は元朗の自宅から来ました。私は【村屋】に住んでいるんですよ。交通は不便ですが、広いし家賃も安くて良いですよ」。コロナ禍において、多くの人が距離ある生活に身を置くことになり、例外なく私にも【アウトドア・ブーム】が訪れた。今では自然の中でワイルドに料理をするソロキャンパーとなってしまった。なんか、村屋いいかも。いつの間にか不動産サイトで【村屋】のみにチェックマークを入れ検索を始めていた。IMG_8053

不動産サイトで気になった【村屋】のエージェント10社くらいに予め準備していた中文をWhatsAppから送る。日本人であること、予算感、理想の村屋、2ヶ月後には引越さないといけないことなどを綴った文章だ。エージェントの反応は様々で、挨拶もなく「仕事なに?給料いくら?何人で住むつもり?ペットは?」とだけ返信してくる者がいたり、内覧には立ち会わずWhatsAppからの文書と写真とで済ませようとする者がいたりして、営業マンとして反面教師にさせて頂いた。「ここからタクシーで〇〇まで行って、この石碑を右に曲がって、この建物の裏側の2番目の部屋だから。鍵はここに隠してあるから勝手に入って見て。気に入ったら連絡ちょうだい。」と当日になって立ち会わないことを知り、現地で唖然としたこともあった。
結局のところは、最初に返信をくれたビリーさんの紹介物件を借りることとなる。メッセージだけではなく、電話もくれ「掲載している物件の他にもあるから、是非一度現地に来て欲しい」と言ってくれた。営業の鉄則=鉄は熱いうちに打て、である。

ビリーさんと他のエージェントの物件とを天秤にかけながら、トータルで10軒は見ただろうか。ランタオ島、粉嶺、元朗と足を運んだが、最初に見たビリーさんの物件が一番バランス良く気に入った。
村屋を選ぶ上で、譲れない条件があった。①屋上つき、もしくはG/Fで庭つきのどちらかであること、②BBQができることだ。三階建ての二階などは、論外である。
中には、屋上と部屋まで行く階段とが住民の共用エリアという物件もあったが、気を遣いそうで選考から外した。ビリーさんの物件は①②を満たし、しかもG/Fに私のみの玄関があり、独立した階段で上がることができた。屋上も私のみのスペースだ。IMG_8059

ビリーさんは、物件以外にも「この街は、あそこにスーパーがあって、ここからミニバスが出ていて都市部に行ける、あそこのタイ料理屋は美味い」など車でアテンドをしてくれた。契約時も一句一句丁寧に説明してくれ、「納得してから、デポジットを支払えば良いから。」「賃貸条件をちゃんと理解してから、サインすれば良いから。」と大変丁寧に対応をしてくれた。彼からはプロ意識を感じた。IMG_8055

ただ、ひとつだけ気になっていることがある。仲介手数料は一般的にどこの不動産仲介業者も【家賃1ヶ月分の半額】だと認識していたのだが、彼曰く「尖沙咀とか銅鑼湾と違って、村屋は家賃が安いから、我々の仲介手数料は【家賃丸々1ヶ月分】となりますので。」と言うのだ。あまりにもサラッと言うので、ああ、そんなもんなんだ。と納得してしまったが、契約書に書かれた大家の仲介手数料は家賃1ヶ月分の【半額】だった。
知り合いの香港人にこのことを話すと「ああ、それはヤラれてるね。」とか「実は大家は仲介手数料を支払わない取り決めが事前にあって、あなたが大家の分まで肩代わりされているから丸々家賃1ヶ月分なんだよ。」という反応が返ってくる。
しかし、しかしである。では、他の物件に住みたいと思ったのか。否である。私は【プライベートなBBQスペース】を手に入れたのだ。それが最優先事項である。

つづく

※登場する固有名詞は全て仮名です。※写真はイメージです。

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