目から鱗の中国法律事情 「中国の労働分野における「集団契約」④」

2024/01/03

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

Vol.87 中国の労働分野における「集団契約」 その4

今回のシリーズではこれまで、中国の労働分野における「集団契約」の定義と規定すべき内容について見てきました。それでは、集団契約とはどのように締結するのでしょうか。今回はこれを見ていきましょう。

集団契約の締結方法
本シリーズ第1回で見たように、集団契約は、基本的に工会(労働組合)と企業が締結しますが、工会がない場合には、労働者の代表が工会に代わって集団契約を締結することになります。23196919_m

①協議の準備
まず、労働者側もしくは企業側が集団契約を締結したいと考えた場合、相手方に集団契約締結のための協議を要求することになります。この協議の要求は書面で相手方に通知し、この要求を受けた側は、20日以内に書面によりどのように協議を行うか回答をしなければならないとされています。

②協議
協議のためには、労働者側と企業側がそれぞれ3人以上かつ同じ人数の代表者を選びます。そして、それぞれその代表者の中から、1人首席代表を選んで、協議を行います。
協議は双方対等の立場で、相互尊重、誠実信頼、公平協力、双方利益に配慮して、過度な要求はしてはならないとされています。

③次回の協議
協議で意見が一致した場合、それを集団契約の草案とし、双方の首席代表がこれに署名します。協議で意見が一致しない場合には、次の協議時間、場所および内容について協議します。次回の協議については、地方性法規(条例)で北京市や大連市などでは、60日以内に次回の協議を行わなければならないとされています。

④協議で意見が一致した場合
協議で意見が一致し、集団契約の草案が完成し、首席代表がこれに署名した場合、この労働契約の草案を労働者代表大会もしくは労働者全員に配布します。そして、労働者代表大会もしくは労働者全員の討論によって集団契約が可決された場合、「集団契約の草案」を「集団契約」とし、双方の首席代表は集団契約を3部印刷して署名します。そして、それぞれ労働者側、企業側で集団契約を保管し、残り1部は労働行政部門(労働を司る政府機関)に提出します。(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

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