教えて!総経理!第12回【大幸藥品(亜洲太平洋)有限公司 李少程氏】

2024/02/14

120年以上続く日本のブランド
正露丸がアジア圏でヒットした理由とはmain1 大幸藥品(亜洲太平洋)有限公司
総経理 李少程氏

私たちの生活に深く根付いている家庭常備薬「ラッパのマークの正露丸」。販売開始から120年以上経つ今でも、競合他社を引き離し、日本だけでなく海外でも多くのファンを獲得しつづけている。今回は香港をはじめ台湾、中国、その他アジアを統括する大幸藥品(亜洲太平洋)有限公司の総経理、李少程氏にお話を伺った。

Q:ご入社のきっかけからお聞かせください。
A:日本との出会いは19歳の時です。80年代当時はまさに留学ブーム。その波に乗り、日本にいた親戚をたより若い好奇心片手に大阪へ参りました。関西エリアで、関西大学、大阪大学(修士課程)で学びながら、香港貿易発展局大阪事務所で通訳のアルバイトをしたり、カラオケ店の店長として大学生スタッフをまとめるなど、若いうちからいろいろな体験をしました。そして卒業前に、大学の就職課から大幸薬品のお話をいただき入社を決めた次第です。
1996年入社後、海外課に配属された私は、同年に開設された深圳事務所、98年には台湾事務所の立ち上げなどに奔走しました。当時は中華圏で正露丸のコピー商品が出回っていたので、その対策として各地にオフィスを構えた次第です。その後、香港には04年に進出し、現在に至るまで香港を拠点にしながら、アジア地域を統括しています。

Q:着任後、どのような大きなイベントがありましたか?
A:2002年に正露丸100周年記念イベントがあり、アジア各都市で盛大に式典が開かれました。富士山が描かれた会場で着物を大勢で着たりと親日のムードの中、また新たなスタートをきれたと思います。
また、以前まで扱う商品によって対立していた代理店と協議し、「Co-Marketing」のコンセプトを導入。弊社の2大商品である正露丸と糖衣Aの両方を店舗に置いていただくことで、知名度、流通網などの面から相乗効果を生み出すことに成功しました。これは日系企業としては初の試みとなりました。

Q:貴社のシンボル「正露丸」ですが、世界中で浸透している理由は何ですか?
A:2つありますね。まずは、製品やサービスを通して、お客様から「ないと困る」と思っていただける会社になるという企業ビジョンがあります。そのためには研究から商品づくりまで一貫して真摯に向き合い、確かな商品を生産することに尽きます。弊社が扱う商品は厳選された天然の原料のみを使い、すべて日本で生産されています。正露丸の主成分である木クレオソートの単味剤として、米国食品医薬品局(FDA)へフェーズⅠの臨床試験通過や、中国CFDA(日本の厚生労働省に相当)に臨床許可を取り、GCP基準に基づき臨床試験実施済みなど、科学技術面からも立証されているんですよ。処方箋のいらない薬OTC(Over The Counter)の中で、日本製での飲み薬という分野では弊社だけに許された唯一のライセンスです。
もう一つは、皆さんも「ラッパのマークの正露丸」というキャッチコピーを聞いたことがあると思います。海外展開を開始した当時からプロモーションを精力的に行ってきました。私自身も幼少の頃からテレビCMを頻繁に見るなど正露丸が身近にあり、香港の薬だとさえ思っていました(笑)。このように香港・広東で「喇叭牌正露丸」として次第に知名度を上げていった同商品は、華僑の手によってさらに世界各地へ広められたのです。

Q:貴社のスタッフは離職率が低いと伺いました。
A:そうですね、立ち上げ時から長く働いてくれるスタッフや、入社したら長年勤続してくれる人ばかりです。人材不足が叫ばれる香港では特に「人材は企業の宝」であるという考えが重要だと思います。賃金の面も大事ですが、私がスタッフに奨励しているのは専門分野以外にも自らのスキルアップを図り、自信をつけてほしいということです。弊社で働いてもらうからには、我が子のように育ってほしい。そのためには常にトレーニング機会を持ってもらうようにしています。社員とその家族が幸せでいることが企業活動の一番の目的だと思います。
もちろん結果重視でスタッフに厳しく指摘することもありますよ。しかし、皆で揃ってランチをとったり、スタッフの誕生日にはケーキを用意したり、懇親会を開催するなど交流を非常に大事にしています。

Q:近年注目を浴びる「クレベリン」について活動を教えてください。
A:コロナ禍で人々の衛生意識が高まったことで弊社の感染管理製品の空間除菌グッズ「クレベリン」の需要が伸びました。香港では引き続きBtoB販路を拡大し、医療の現場などにも浸透していくように邁進する所存です。また、置き型だけでなくスプレータイプの商品をBtoC向けに販売網を拡大し、存在感をアピールできたらと思います。ジャパンクオリティの商品を今後も、中華圏をはじめ海外市場でシェア拡大を図ってまいります。

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社員旅行や代理店との会合の様子。礼儀を重んじ、人とのコミュニケーションを大事にする李氏の周りにはいつも笑顔が溢れている。

社員旅行や代理店との会合の様子。礼儀を重んじ、人とのコミュニケーションを大事にする李氏の周りにはいつも笑顔が溢れている。

大幸藥品(亜洲太平洋)有限公司
1902年から販売開始されていた「正露丸」を46年に前身である柴田製薬所が継承、大幸薬品株式会社を設立した。54年正露丸の海外輸出がスタート、海外事務所は96年深圳、98年台湾、04年に香港進出した。李氏は日々各地をまわりアジア地域取り分け中華圏市場の運営を統括している。
Office No.2, 16/F., No.148 Electric Rd., North Point
(852)2907-7300
www.seirogan.co.jp

 

教えて!総経理!第11回目  
Unison Manufacturing HK Ltd. 赤星 誠氏
のインタビュー記事は
こちら
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