中秋節特集4・歴史

2014/08/17

現代に生きる風水・占い

5000年の歴史を誇る中国に根づく知恵

協力:彦坂 久美子、陳永泰風水命理文化中心

中国や香港には、古代中国の陰陽五行思想に基づく学問やそれに基づく様々な占いがある。ジョーダン(佐敦)にある廟街へ行くと、様々な占い屋が軒を連ねており、タロット占いなどもある。香港のガイドブックには、そうした占いが紹介されており、来港する友人に「占いに行きたい」とリクエストされたという人も多い。で、中国古代の知恵とも言える占星術に、今後のことを聞いてみたいときもある。そこで、この特集では、香港人の占い事情や、どんな占いがあるのかなどを紹介しよう。ここでは、風水と算命学をピックアップ。

繁栄する国づくりに活用された風水
中国古代に生まれた思想に、森羅万象は相対する「陰」と「陽」の二つの気、五行(木・火・土・金・水)というエネルギーにつかさどられていると考える陰陽五行思想がある。風水は、この陰陽五行を把握・分析して、生活や仕事などに生かす方法として利用されている。
風水の本来の目的は、繁栄する都市づくり、ひいては繁栄する国家づくりで、そのために大地の気脈(エネルギーライン)を読む学問(気学)だった。現代に置き換えると、環境工学、都市工学、建築学に、地理学、天文学、地政学が加わったものといえるだろう。そして最大の使命は、国の首都を決めること。山や川の配置や方位から、大地のエネルギースポット「龍穴」を導き出し、その上に宮廷あるいは皇居をつくることだった。これら古代都市の宮殿などは、すべて「龍穴」というエネルギースポットに建てられているという。
「龍穴」の気脈を読むための基本とされているのが「四神相応」。玄武、青龍、朱雀、白虎の4つの神獣に囲まれた場所は栄えるとされ、それぞれの神獣に地形があてられている。たとえば、背後に高い山(玄武)、前方に河川などの水(朱雀)、左右に低い山や大きな道(青龍・白虎)がある場所がいいとされている。風と水に恵まれ、都市を建設するには、うってつけの場所だ。古代中国の皇帝はもちろん、日本の支配者たちも都市づくりに利用した。

日本では陰陽師が活躍
風水学は、日本でも推古朝(602年頃)に伝来し、藤原京、平安京、江戸、東照宮、その他高名な神社の場所決めや計画内容に深く関わってきた。「四神相応」の思想を取り入れた日本の都市の中でも、東京は最強とされている。一方、豊臣秀吉は大阪に風水を導入していないという説もあり、そのため、短命に終わったとも言われている。
古代日本では、今から1300年以上前、官職の1つとして確立されたのが「陰陽師」だ。風水と同じ、陰陽五行の思想に基づいた陰陽道によって占いや地相などを行っていた。また、宮中において建築を行う際の吉日選定や、土地・方角などの吉凶を占うことで、遷都の際などに重要な役割を果たした。後には、占術・呪術・祭祀全般を、陰陽師がつかさどるようになった。

古代中国と同様に、9世紀初頭の平安時代初期まで、陰陽道は国家機密として管理されていた。また、政治運営や人事決定から天皇の譲位に至るまで、多大な影響を及ぼした。中世以降は、主に各地において民間で個人的に占術・呪術・祭祀を行う者も。現代においては、民間で私的祈祷や占術を行う、神職の一種として定義付けられている。
「天中殺」も算命学に基づく考え方
陰陽五行の考え方に基づき、生年月日の干支から運命を占う学問のひとつに「算命学」がある。中国の戦国時代には、時の流れや敵方の大将の性格を読むために使われた。軍師に不可欠な知恵とされていたようだ。
日本に算命学が伝わったのは戦後。日本では学問というより「占い」と捉えている人も多い。1979年に算命学の「天中殺」という言葉がブームになったことがある。「天中殺」は、わかりやすくいうと、運命が味方してくれないめぐり合わせの時期のことをいう。このときに、事業や就職、結婚など新しいことを始めてもうまくいかないといわれている。算命学では、運気にも陰陽があり、天中殺は運気を休ませる休養の期間と説明している。
今の香港人は風水を信じる?
香港では、風水の専門誌「風水天地」をはじめ専門誌が何冊も発行され、日曜日のゴールデンタイムに風水の番組が放映されたり、香港大学専業進修学院の風水学コースや風水専門の学校や教室がいくつもある。あるフランス系銀行では、毎年旧正月前に風水を駆使して1年の株式市場や香港経済の動きを占っているようだ。風水は、建築やビジネス、心理学等様々な場面で参考にされている。風水学を迷信と捉える方もいるだろうが、当たっている部分もあるかもしれない。

風水グッズならここ!陳永泰風水命理文化中心

陳永泰風水命理文化中心

創業60年の「陳永泰風水命理文化中心」では風水算命のグッズを販売している。初心者向けの羅盤から、占いアイテム、ベテランしか解読できない風水書籍までをも、いつも台湾から入荷している。算命、囲碁、中華画の教室も開催しており、生徒の中に日本人もいるようだ。風水師育成所の雰囲気、一度感じてみては?

陳永泰風水命理文化中心
住所:2/F., National Court,
242 Nathan Rd., Jordan
電話:(852)2374-0489

大マジメ!香港に見る「おもしろ風水的事件簿」

風水で裁判沙汰に!?
香港天文台と村民の対決

香港天文台

香港政府は人々の信仰心に敬意を示すが、風水により政府と民衆の間で訴訟問題までに発展した事件をご存じだろうか?2012年、香港天文台はタイラムチュン(大欖涌)に空港用のウインドシア・レーダーの建設を開始。しかし、村民たちは建設に反対した。理由は、レーダーが風水の四神のひとつである「青龍」の位置にかかるため、村の風水が乱され、その結果、寿命が縮んでしまう人や、健康と財産に悪影響を及ぼす人が出るから。そこで、村民の1人が高等裁判所に訴訟を起こし、司法による再調査を要求。「建設を実行して風水が乱されたら、それに対する補償を政府が村民に支払うべきだ」と訴えた。しかし、最終的に、高等裁判所は司法による再調査は必要ないと判決。天文台は建設を続けたが、風水への影響を最小限に抑えるため、設置場所を17メートルずらし、建物は2階から1階に、
樹木を植えてレーダー基地を隠すようになど変更を余儀なくされた。

金融業界で起こった風水戦争!?
大手銀行による「刃と大砲の戦い」

HSBC(匯豐)

香港では、金融業界と言う超現実的な世界でも、風水が良ければ起業成績も繁栄すると信じられ、風水師を雇い、オフィスビルのデザインを決めるのが当たり前。かつてHSBC(匯豐)と中国銀行(Bank of China)の間でも、風水が深く関わる「戦い」が繰り広げられた。セントラル(中環)にある中国銀行のビルは、1985年に建設が開始された。デザインされた「3枚の刃」は、風水では相手の運気を下げる意味合いだ。するとこのビルが完成した時期と同じくして、HSBCの業績が悪化してしまう。そこでHSBCは対抗策として、「大砲」に模した外壁掃除用のエレベーターを設置。中国銀行側に向け風水的に相殺した。そのため、この事件は「刃と大砲の戦い」と名付けられた。しかしこの戦いはここで終わらない。台風により「大砲」が曲がり、スタンダード・チャータード銀行(Standard Chartered Bank)の方角に向きが変わったのだ。そこで、スタンダード・チャータード銀行は弁護士を通し、HSBCに大砲の向きを元に戻すこと、修理期限を要求した。果たして今後どんな展開を見せるのか…。

屋根の色で大問題!?ピンシャンで起こった風水事件

カニ

1899年、ピンシャン(屏山)に警察署が建設された際、その建物を巡って風水問題が勃発。小高い丘に建てられたこの警察署は、住民を牽制するため屋根が赤色に塗られたのだが、この色が悪かった。風水師によると、元々、ピンシャンを囲む3つの丘は、中心の丘が甲羅、両側の丘が爪として「カニ」を形成しているという。風水では「毛蟹局」と呼ばれ、住民に幸運をもたらすと信じられていた。しかし、料理されたカニを表す「赤い」屋根の警察署は甲羅の位置に建設されたため、警察署がカニを殺したと地域住民は大反発。色を変えろと反対運動が起こったが変更はされず、警察と住民との間にはわだかまりが残った。これは政府が風水を考えなかったために起きた出来事だ。

長い年月の後、ピンシャン警察署建物は「タン族伝統博物館(鄧族文物館)」に改築され、その屋根は「赤」から、生きているカニを表す「緑」へ塗り替えられたことで、全ては丸く収まったという。

 

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