花樣方言 言葉の発音と口の形

2014/09/01

豚肉料理この夏、日本の人気者は、いまだ勢いが衰えないディズニーの『アナと雪の女王』と、小学生が熱中している『妖怪ウォッチ』。『アナ雪』は、日本で人気が出たときはすでにヨーロッパでも香港でも劇場公開が終わっていて、日本では「世界的大ヒット」などと銘打っていますがその「世界」では今、なぜあの映画が日本でこんなに受けるのか…ということが話題になっています。『妖怪ウォッチ』は、日本の小学生の日常を鋭くとらえていて、かなり日本ローカルな内容。今後は海外にも販路を広げる予定だそうですが、はたして香港でも受けるかどうか。

さて、ディズニーなどアメリカのアニメと日本のアニメとでは、大きな違いがあります。ディズニー・アニメのキャラクターは、英語の発音に合わせて、発音のとおりに口が動きます。「see」と言うときは唇が横に引かれて平らになり、「no」と言うときは唇が丸くなります。対して日本のアニメは、「口パク」です。発音に関係なく、唇がただ、開いたり閉じたり、パクパクするだけ。日本人は口パクが嫌いなんじゃなかったの、なんてことを言うつもりは毛頭ありませんが、キャラの口パクは、日本アニメの大きな特徴です。

そもそも日本人のほとんどは、言葉の発音と口の形が関係あるということを全く意識していません。ヨーロッパでもアフリカでもアジアでも、母親は子供に言葉を教えるとき、よく自分の口を指さして、「ほら、お母さんの口をよく見てごらんなさい」とやりますが、日本ではこの、世界中どこでもやっている母子の行動が見られないのです。日本人は言葉を話すときの口の動きがとても小さくて、なるほどこれでは口元を見ていても音声習得の参考にならないだろうなと思うときもありますし、これではあらゆる外国語の学習に苦労するぞと思うこともあります。日本人に口の形や舌の動きの話をすると眠りだしたり怒りだしたりするので難儀なのですが、香港でもヨーロッパでも、人々は言語の発音の話題になると、自分の口を指さしたりして、舌を上げるだの、唇を丸めるだの、言っているのです。

ディズニー・アニメの口の動きは、ナマの人間の口の動きより誇張されていてわかりやすく、英語の発音の良い教材になります。「teacher」「center」「her」などの「-er」を日本では「ア」に置き換えて「ティーチャー」「センター」「ハー」としますが、ディズニー・アニメを見ると「-er」の口の形は「a」の口の形とはおよそかけ離れた、むしろ「o」に近い、唇を丸くする発音なのだということがわかります。いずれにせよ外国語学習に口の動きの観察は不可欠です。広東語でも、日本人が聞き分けられない「虱=sat」「塞=sak」「濕(湿)=sap」(全部「サッ」のように聞こえる)、これらも広東語話者の口をしっかり見ていれば、3つとも違っていることが一目瞭然。違いの存在さえわかれば、いずれ耳も慣れてきます。(ちなみに音声学では「at、ak、ap」のようなものを「入りわたり」、「ta、ka、pa」のようなものを「出わたり」といっていますが、日本語話者や北京語話者は「t、k、p」を出わたりのときにしか聞き取れないのに対して、広東語、タイ語、韓国語などの話者は、出わたり、入りわたり、いずれも聞き取れるのです。)

洋画やアメリカアニメの吹き替えでは、口の形が考慮されることもあります。特にセンテンスの最後の部分、つまり言葉を言い切ったときの唇の形に合うように日本語を選ぶ工夫がほどこされます。『アナ雪』の歌「Let it go」のシーンはこれが実にうまく合わせられていて、吹き替えの秀作。韓国ドラマ(の日本語吹き替え版)を「言葉と口の動きが合ってないドラマ」と揶揄する声がありましたが、口の形は、気になる人にとっては、やはり気になるものなのです。尚、ドラえもんの劇場版最新作、立体CG版の『STAND BY ME』では、口の形がだいたい合わせられています。

政治家にして著名な文人である蘇東坡について、岳飛の孫、岳珂は次のような逸話を残しています(『

Pocket
LINEで送る