香港サッカー ロンドンにて活躍する裏方2
前節に引き続き、昨年11月下旬に訪れたロンドンの模様を。
ロンドンでは2つ、フランクフルトでも2つのミーティングをこなしながらも、せっかくサッカーの本場を訪れたのだからと、短かい日程の許す範囲でスタジアムツアーに参加した。
プレミアリーグの名門、北ロンドンのトットナムホットスパーの本拠地ホワイトハートレーンと、チャンピオンシップ(2部)を戦う、南ロンドンのミルウォールの本拠地ザ・デンに脚を運んだ。
本来であれば試合を観戦したいところだが、ロンドンでのミーティングを組んだ週末は、両チームともアウェーゲームの日程だったので、この2つのスタジアムは見学ツアーで我慢する事に。
木曜日の明け方にヒースロー空港に降り立ち、HSBCのATMで英ポンドを用意して、地下鉄と鉄道を乗り継ぎ、スタジアムの最寄駅ホワイトハートレーン駅に着くと、まず向かったのはトットナムファンが集う食堂。
店内に飾られた数々の写真に眼を奪われつつも、フルブレックファストとミルクティーで腹ごしらえ。どう見てもツーリストの筆者に、朝食を摂る隣りのテーブルの紳士から声が掛かった。
「中村俊輔はまだプレーしてるのかい?」
挨拶するまでもなく、どこから来たかを説明するまでもなく、いきなり俊輔の話題を振られたので話は早い。やっぱり彼がCLで決めたマンチェスターU戦の2つのフリーキックは、本場の皆さんの印象に刻まれている事を実感した。
トットナムファンが集う食堂に来たのだから、てっきり戸田和幸の話になると思って、筆者が一昨年シンガポールで会った時の戸田本人との写真まで準備していたのだけれど。
食事を済ませてスタジアムに向かった。途中、大規模な建設現場を横切ったのだが、これはトットナムの新しいスタジアムの建設現場で、現在のホワイトハートレーンのすぐ北隣りの敷地で工事が行なわれていた。
今回の目的は、今季終了を持って取り壊される現在のホワイトハートレーンを見納める事だった。数々のタイトルを獲得し、多くの名監督と名選手が躍動した古き良き英国の歴史あるスタジアムが、またひとつ姿を消す。
土曜日の朝は、今回のロンドンの宿の隣りにあるミルウォールファンが集う食堂で朝食を済ませて、サザークの寂れたエリアを本拠地とするミルウォールのザ・デンまで散策した。
2部と3部を行き来するミルウォールが、スタジアムツアーを行なっている事自体に感動を覚えたが、感動はそれだけに留まらなかった。ツアーの参加者は、筆者とカーディフから来たという4人組の同世代グループだけだった。
「キミは本当にミルウォールファンなのかい?」
実はミルウォールのファンではない事を告げ、ロンドンに仕事で来た事と、実はマイナーカテゴリーにも精通している男だと話したところ、ツアーのナビゲーターも含めて大歓迎してくれたのだ。海外に住む東洋人がミルウォールのスタジアムツアーに参加した事は、おそらく初めての事だと。
ミルウォールは、日本でも馴染みのあるオーストラリア代表のティム・ケーヒルが、プロキャリアをスタートさせたクラブだ。歴史あるFAカップの決勝に駒を進めた時に大活躍した選手として、今でもミルウォールのファンとティム・ケーヒル本人は、相思相愛の関係を続けている。
スタジアムツアーは、実際の試合観戦ではないものの、普段は入れない選手の控え室や、ピッチサイドやベンチなどにも通して貰えるファン垂涎の催しで、スタジアムを本拠地とする各クラブが主催している。
≪つづく≫
文/池田宣雄(香港サッカー協会 賛助会員)
香港サッカー協会賛助会員
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