香港と広東のアート特集6・広東アートスポット

2015/02/02

歴史について語られることの多い広東だが、現代美術や芸術について取り上げられる機会は意外に少ない。ところが近年、街の変貌とともに続々と注目のアートスポットが登場している。世界が注目する絵画村、工場跡地を再利用したおしゃれスポット、斬新なデザインの建物―。一歩足を踏み入れるとそこには驚きの光景が広がっていた。広東が誇るアートの世界へようこそ!

紅専廠芸術創意区(Redtory)

缶詰工場跡を利用したアートスポット

缶詰工場跡を利用したアートスポット   紅専廠芸術創意区(Redtory)

工場跡を改造したおしゃれなアートエリアが広州にも増えつつある。そのなかでも注目なのが「紅専廠」だ。広州の新都心開発エリア「員村」の一角に位置する。有名な缶詰ブランド「鷹金銭」の工場跡地を利用したアートスポットで、画廊やイベントスペース、おしゃれなカフェやレストランが建ち並ぶ。

赤レンガ工場を意味する「紅専廠」は、その名のとおり、赤レンガ造りの建物が主体となっている。1956年、旧ソ連による協力のもと建てられたため、広州では珍しい赤レンガに三角屋根というロシア風建築となった。当時はアジア最大の缶詰工場として、中国人なら知らない人はいない「豆豉鯪魚」を生産していたという。工場閉鎖後しばらくは何の変哲もない工場跡地だったが、現在では数十棟の赤レンガ建築物が良い状態で保存され、おしゃれな店舗なども入り、見事な変貌を遂げた。工場の建物をそのまま利用しているので、どの店舗も天井が高く広々としており、ゆったりとした空間が広がる。エリア内では個性的なオブジェを目にするが、これらはすべて鷹金銭工場の機械や部品で作られた作品だ。

そんな独特の雰囲気を求めて訪れるのは、おしゃれに敏感な若い人たちだけではなく中高年も多い。夜になるとレストランでゆっくりディナーを楽しむ人の姿が見られる。また、地元の文化に触れることもでき、絵画や写真の展覧会が催されていたり、中国伝統の切り紙細工を体験することも可能だ。世界の工場といわれるほど製造に力を入れる中国だが、ここに来れば「中国製造」だけではなく「中国創造」にも明るい未来があることを感じられる。

紅専廠芸術創意区(Redtory)
住所:広州市天河区員村四横路128号
電話:(86)20-6631-9930
ファクス:(86)20-8557-8470
ウェブ:http://www.redtory.com.cn
アクセス:地下鉄5号線「員村」駅B出口を左手に進み、珠江にぶつかる突き当りを左折、10分ほど歩くと赤い看板が見える。

大芬油画村(DAFEN Village)

レプリカ〝製造工場〞!?
世界屈指のアートな村を行く!

大芬油画村(DAFEN Village)   レプリカを製作

世の中には良質のレプリカ(複製画)が数多く流通しているが、それらはどこで作られているかご存じだろうか?深セン市龍崗区布吉街道・深セン地下鉄3号線「大芬」駅のA1出口から歩くこと3分のところにある「大芬油画村」。ここでは世界市場のおよそ6割のレプリカが作られているといわれている。街のど真ん中に形成されたこの“レプリカ村”では、至る所で筆を走らせる人たちを見ることができる。油絵を中心に書画、刺繍、彫塑、工芸品を扱う美術商が立ち並び、1,200以上のギャラリーが軒を連ねる。中国各地から芸術を志す者が集まっており、この地に住む画家・絵師は8,000人以上ともいわれる。

かつてはひなびた農村だった大芬。1989年、香港の画商が20人の職人を連れて移住したのをきっかけに芸術文化が芽生えた。その後、行政もこの村の発展に寄与し、レプリカのみを手がける画工は深セン市の公募展に3回入選すると「画家」と呼ばれ、画家専用の住居に周辺の賃料の3分の1の値段で住めるなどの恩恵を受けられるようになった。そのため大量オーダーにも対応できる技術力と人材が育まれたのだ。

ここには、世界各地からお目当ての複製画を求めて訪れる人、ホテルやレストランなどに飾る絵画を大量に買い付けるバイヤーなど実に多くの人が押し寄せる。これほどまでに人気の理由は、クオリティーの高さと驚きの価格にある。余談だが、これらは決して贋作ではない。複製画は原則作者の死後50年が経過した作品で、サインは入れず、著作権を侵害していないかどうかはスタッフがチェックしている。「大芬美術館」で、新進のオリジナル絵画の展示などが行われており、この地で作品を生み出す画家たちのコレクションを鑑賞することも可能だ。

大芬油画村(DAFEN Village)
住所:深セン市龍崗区布吉街道布沙路・深恵路
電話:(86)755-8473-2633
ウェブ:http://www.cndafen.com
アクセス:深セン地下鉄3号線「大芬」駅から「ウォルマート」方向へ約500メートル

牧羊語咖啡画廊

牧羊語咖啡画廊

草原に建つ小さな家のような牧歌的佇まいの「牧羊語咖啡画廊」では、油絵を中心とした絵画を多数展示している。アンティーク調の革のソファーやレトロなシャンデリアがオシャレな店内はどこか懐かしい雰囲気。植物を題材にした作品が多く、優しい色合いの絵画に囲まれながらゆっくりと一休みできるリラックス空間だ。

90~96℃の温度で蒸らすことで豆の風味を最大限に引き出したコーヒーが同店のもうひとつの自慢。すべて手づくりという各種デザートも充実しており、油画村散策で疲れた時には嬉しいカフェだ。味わい深い牧羊語咖啡画廊で芸術の香りに酔いしれてみるのも良いかもしれない。

住所:深セン市龍岗区布吉鎮大芬油画村老囲東十巷3-2

木馬咖啡画廊

木馬咖啡画廊

オーナー自身がアーティストだという「木馬咖啡画廊」は、油画村を囲むようにして通っている目抜き通り・油画街沿いにあるため誰でもすぐに見つけることができる。淹れたての新鮮コーヒーが飲める喫茶店としても人気がある同店では、すでに絶版した建築や写真、絵画などアート関連の本が豊富に取り揃えられており、どれも閲覧可能だ。店内の一角に設けられたギャラリースペースでは、オーナー厳選の作品を集めた展示会や自身の個展も定期的に開催している。上品でちょっと個性的な作品たちを楽しみながらアートなひと時を味わってみてはいかがだろうか。

住所:深セン市龍岗区布吉鎮大芬油画村内

360店

360店

「360店」。このユニークなネーミングは、「お客様の期待に360度応えられるような商品を取り扱う」という同店のモットーが由来。広州で生まれたアートな雑貨を中心に画集・文学書などの書籍、手づくり天然石鹸、ガラス茶具、フォトフレームなど、アナログもデジタルも引っくるめた豊富な品揃え。とにかくオシャレなものが沢山詰まったこの雑貨店は、見ているだけでも楽しめる。2012年に広州のアートスポット「紅専廠芸術創意区」内にオープンして以来、休日ともなると多くのオシャレっ子たちが訪れる同店で広州アートに触れてみよう!

住所:広州市天河区員村四横路128号
紅専工場芸術生活区制罐街F13棟
電話:(86)20-3703-9737

鉄幕BAR

鉄幕BAR

隠れ家を思わせる小さな入口から店内に入ると鉄製のレトロなテーブルセットに木製の棚。ロフトスタイルの広々としたスペースが何ともオシャレなバーだ。シンプルな造りの店内では豊富な種類のお酒はもちろんのこと、手の込んだディナーを楽しむこともできる。そんな同店では、毎週水曜日と土曜日の夜9時には地元バンドによるライブパフォーマンスが行われており、地元のミュージシャンへ表現の場を積極的に提供している。多彩なバンドが出演する同店主催のライブステージ。広州の音楽シーンを牽引する若き才能に出会えるかも!?

住所:広州市天河区員村四横路128号
紅専工場生活区制罐街F11棟
電話:(86)20-3703-9736

Pocket
LINEで送る