カフェ特集6・カフェの裏事情

2015/07/27

掘り下げたら面白い!
何気ない1杯に隠されたコーヒー店の裏側

1杯のコーヒー

1999年のスターバックスの中国進出から16年。今や街のそこかしこに見られるコーヒーチェーン店。仕事の合間や休日の“息抜き”に利用する人も多いだろう。本ページでは、中国・香港で市場調査を行う「アライジェンス コンサルタンツ有限公司」代表の太田基寛さんに中国のコーヒーチェーン店事情を実際の調査結果とともに紹介してもらう。

中国コーヒーチェーン店事情
~フランチャイズは儲かるのか~

まず初めにフランチャイズ加盟時のコストについての市場調査結果から紹介したい。

■フランチャイズ加盟時のコスト例
【某中国系有名コーヒーチェーンの場合】
・加盟金は4年契約で15万元(この内2万元は契約時に支払われるべき意向金)。20人までのトレーニング費用が含まれ、それ以上の人数に対するトレーニングは追加費用が発生する。会計や経営に関するトレーニングも本部からの提供も可能だが、1セット3000元などとここでも追加費用が発生する。
・その他、内装設計のデザイン費用、立地調査、F/S調査、メニューとレシピの提供。ここには食材、食事の半完成品の一括提供等のサービスが含まれるが、基本的に本部はメニューの管理は行わず、各店舗メニューのローカライズを任されることになる。改装工事は、本部で紹介・実施する事もできるが追加費用が必要となる。一般的には契約から1、2ヶ月で開店可能で4年目以降の加盟金更新は7.5万元。

次に中国のコーヒー店事情について

■中国のコーヒー店事情
【1級都市の場合】
・地区の選択が非常に重要で成功すれば安定した売り上げを見込めるが失敗すると競争過多で経営不振に陥る。レストランなどがある程度集中していて客足が遠のかない立地が必要だが、バッティングする店舗があり過ぎるのはよくない。
【2・3級都市の場合】
・開店後2~3年間は客足も増加傾向にあるが、中国の根本的なコーヒーにかける消費能力は高くないため、地元の人々の好奇心が薄れる時期から売上高が減少するケースが多い。
食事の「おいしいさ」というよりもスターバックスのような「第3空間」を求めるニーズが大半をしめる1級都市に対して、2・3級都市では「味」の価値を第一に考える人々はまだ多いようだ。相対的に見て、都市部のビジネス地区(若しくは1級都市)以外は、コーヒーだけで儲ける事が難しく、パスタやステーキのような“コーヒーと絡めて提供することができる安い洋食”を併せて売るというビジネスに流れる傾向にある。

■中国チェーン展開の要はセントラルキッチン
コーヒー豆本店側のセントラルキッチンと、店舗側にはフランチャイズの仕入れに関する次のような規定がある。
コーヒー、ミルクティー、その他ドリンクの豆、原材料はすべて本部が統一提供する。その他原材料を使用する事は基本的に許されない。また本部からの原材料購買費用は年間で3~4万元を超えなければならないなどの規定がある。それ以外の原材料、例えばステーキ牛肉や油、米、バターなどを本部から購買するかどうかは各コーヒーチェーンの判断に任せられる。また野菜、卵、フルーツなど鮮度が要求されるものは基本的に各コーヒーチェーンが独自で購買する。
購買の際の鮮度、スペックに関しては一定の規定がある…等等。ここには食材を近隣から調達して仕入れコストを下げたい店舗と、指定の食材などを色々売りつけてロイヤリティーを稼ぎたい本店との温度差も垣間見れる。中国市場での展開の際のチェーンの良さと欠点の行き着くところはセントラルキッチンにあり、仕入れ品質管理と在庫管理ができる事の代わりに、お客を惹きつけるための食事鮮度とメニューの柔軟さを失う事になる、と言える。

それでは、実際に運営している店舗の実際の状況をご紹介しよう。

■コーヒーチェーンは儲かるのか?
【店舗面積460平米のコーヒーチェーン店の場合】
・開業資金は160万元(加盟金、トレーニング、内装設計及び内装材料、空調、照明、家具、初期食材仕入れなどを含む)。家具、空調などは約20万元、調理器具や水回り設備は深センの中古市場で購買するなどして約7万元に抑えた。
・開店後の毎月の運営費用と利益は、約30万元の月間売上から店舗家賃5万元、食材原料の仕入れ月約5万元、人件費2.6万元、本部管理費5000元、光熱水道費1万~2万元といった運営費を引いて、税引き収益は約4~9万元。ちなみにメニューの原価は、コーヒー原価:10%以下お茶・ソフトドリンク原価:5~10%食事セット原価:約30%

【オフィス棟内のコーヒーチェーンの場合】
・開業資金は120万元。店舗スペースはオーナーの持ち物件だが、立地上、土日の集客は期待できず、平日営業を中心に運営。セントラルキッチンなので店舗での調理が不要なことからこのチェーン店を選択したが、ここ数年の賃金上昇による店員の流動増で経営の一番のネックは人の管理なのだという。
・原材料費用は30%を占めるが、家賃負担がないため現状売上9万元弱でも少し儲けがある。毎月4500元発生する本部管理費は、持ち物件の一部を貸し出すことで対応。

お茶の文化が強い中国でコーヒーを飲む習慣が根付きつつある昨今。中国市場におけるフードビジネスの1つとして「コーヒー」を思い浮かべる人も多いことだろう。普段何気なく飲んでいる“やすらぎの1杯”の裏でうごめくビジネスに思いを巡らすのもたまには良いかもしれない。

【アライジェンス コンサルタンツ有限公司】
中国業界・市場・企業調査のお問い合わせは
住所:広州市天河区体育東路横街3号設計大厦18楼
電話:(86)20-3860-2648(総経理 太田まで)
メール:info@alligence.jp
ウェブ:www.alligence.jp

 

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