香港代表選手たちが中国リーグへ!中国のサッカー裏事情。

2016/01/18

香港プレミアリーグで活躍する香港代表選手たちが北上する。中国リーグの移籍市場で、実に7人もの選手が中国の超級(スーパーリーグ)と甲級(2部リーグ)チームへの移籍を果たしたのだ。
7人の内訳は、香港に帰化した外国人が5人と、香港人が2人。元々中国リーグでプレーしていた2人の選手も加えると、合計9人もの香港代表選手たちが、2016年の中国リーグを戦う事となった。それも「内援」扱いとして。つまり外国人選手としてではなく中国の国内選手として。
1997年に香港の主権が中国に返還されて以来、中国リーグにおける香港人選手の扱いが変わり、中国国内選手として登録可能となった為、これまでにも数人の香港人選手が中国リーグでプレーしていた。主権の返還という政治的な要素も然る事ながら、中国リーグのチームとしても、香港に帰化した外国人選手や一定の水準に達した香港人選手を、国内選手扱いで登録できる事にはメリットが存在する。活躍するサッカーチーム
中国リーグは1990年代にプロ化を果たした後、中国経済の急成長と比例する様に資金が流入している。2000年代に中国サッカー界を揺るがす組織的な八百長騒動の煽りで一時的に低迷したものの、2010年代に入り復調。潤沢な資金を背景にした強化合戦が始まり、世界的な名将やキラ星の有名選手たちを破格の待遇で招聘している。
現在の中国超級における外国人指導者や選手たちの待遇は、1990年代のJリーグ勃興期のそれを遥かに凌ぐ領域に達している。それに伴う形で中国人選手たちの待遇も飛躍的に向上した事で、リーグ全体の競技水準も格段に上昇している状況だ。
かつて中国リーグでの待遇が然程良くなかった時代は、むしろ香港リーグで得られる待遇を求めて、中国代表クラスの選手であっても、キャリアの晩年を外国人選手として香港リーグでプレーする、という選択も有りだったと聞く。今現在、その選択を下す中国人選手は極めて少ない。つまり香港リーグの待遇こそ然程良くないのだ。
香港で出生した香港人選手も、香港で市民権を得た外国人選手も、また香港に帰化した外国人選手も、香港リーグでは割と平穏にプレーを続ける事ができる。しかし低迷を続ける香港リーグのチームではなかなか稼ぐ事ができない。また彼らが高待遇を求めた場合でも、本場欧州やアジアの周辺国でプレーするという機会は滅多になく、唯一の可能性のある場所が現在の中国リーグであり、国内選手としてプレーする機会を伺っているのだ。
中国リーグのチームとしても、国内選手として登録できるのであれば、特に香港に帰化した外国人選手の起用には前向きだ。世界的には全くの無名選手ではあるが、一定の身体的な能力を持ち、自身が出生した祖国のサッカー文化を保ち、且つ、然程待遇の良くない香港での収入に多少の色を付けるだけで合意に達するからだ。
中国リーグのチームから話を受けた選手の側にとっても、香港での3倍程度の金額と複数年の契約期間を提示された場合、断わる理由などほとんど存在しないはずだ。家族の生活や教育の環境はやや劣るのかもしれないが、中国の主要都市では既に改善されつつある問題でもあり、何しろ5年も10年も中国に住まう様な事もない。
合計9人の選手の内、8人の選手が中国甲級(2部リーグ)のチームに移籍する。彼らの実力であればギリギリ通用するだろう。送り出した香港のチームにもそれぞれ違約金がもたらされ、9人の選手たちの待遇も良くなった。是非とも活躍してほしい。
しかし、この様な形で香港人選手や帰化選手たちが、中国リーグのチームに移籍を果たす事は当面ないだろう。中国リーグの内規が変わり、2016年1月1日から香港・マカオ・中華台北のパスポートを保有する選手は、中国国内選手としては登録できない事となり、この内規が今後運用され続ける限り、外国人選手として登録しなければならなくなったのだ。この9人の選手たちは、内規変更直前の2015年末までに契約を結んだ事で、それぞれの契約期限までは国内選手として登録されるものの、契約満了後は変更された内規に従わなければならない。
現実問題として、中国リーグのチームが香港人選手や帰化選手と、外国人選手枠を使ってまで契約する事はないと思われる。余程の選手が現れない限りだが。
一説によると、中国リーグの内規変更のきっかけは、ワールドカップのアジア2次予選で、香港代表が中国代表を相手に2戦続けて引き分けに持ち込んだ(中国代表のアジア最終予選進出の足を引っ張った)事だと言われている。
≪つづく≫
文/池田宣雄(香港サッカー協会会員)

AFCB 香港
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