通貨の分散。Borderless Management & Investment Ltd. - ビジネス投稿

「通貨分散の重要性はよくわかった。だけど実際には各通貨をどのぐらいの割合で持てば良いのか?」という質問を最近よくいただく。1国に資産を集中させていて、さらにすべてを１種類の通貨で保有している。財産は日本の銀行に預金している日本円と日本の株式、そして自宅（日本円建ての不動産）というようなケースである。
日本に住んでいる多くの人はこういうかたちで持っているのではないだろうか。そういう状態で、もし日本円が暴落した場合、世界レベルで見た自分の資産を大きく縮小する。国際通貨の中で中心、支配的な役割を占め、為替や国際金融取引で基準として採用されている通貨を基軸通貨というが、現在世界の基軸通貨は米ドル（USD）である。なので世界レベルでは資産は米ドルで換算して評価するのが普通である。
例えば日本円の預金、株式、不動産の合計で5,000万円の資産を持っている人がいるとする。2016年2月現在でUSD1=約JPY113なので、5,000万円はを米ドルに換算すると約USD44万ということになる。
仮に日本円が50%下落すればUSD1=JPY226となり、5,000万円は約USD22万ドルになってしまう。基軸通貨である米ドル建ての資産は半分になる。日本国内では5,000万円を持っていることに代わりはないが、こうなるとまず海外に旅行に行ったり、買い物をするのが困難になる。
一泊USD150のハワイのホテルは現在日本円換算16,950円で宿泊できるが、日本円が下落してUSD1=JPY226になるとハワイのホテルも1泊33,900円になってしまう。これでは誰だって海外に行く気にはなれなくなるだろう。
実際に45年ぐらい前まで日本はUSD1に対してJPY360と非常に安かったので、その時代の海外旅行は実際庶民には高嶺の花だった。
経済大国となった日本の通貨が再びそこまで下落するかどうかはわからないが、最近でもUSD1=JPY70円台からわずか3年の間に120円台まで30%以上の変動を記録した。為替変動とはかくも激しく、資産に与える影響が大きいのである。
そのリスクを避けるためにやらなければならないことは自分の資産の一部を複数の外貨に両替したり、外貨建ての資産を購入したりして単一通貨建てで保有している状態から解放してやること。これが「通貨の分散」である。
具体的には日本円の預金の他に米ドルやユーロで積立投資をおこない、人民元で定期預金を組んで、オーストラリアで不動産（豪ドル）を所有する、というようなことである。通貨の分散が進めばそのうちのどの通貨が下落しても別の通貨が上昇する、ということが起こるので世界レベルで見た全体の資産はそれほど変動しなくなる。「通貨の分散」は資産防衛のために欠かせない要素なのである。これはもちろん日本人だけではなく、世界のすべての人に必要な資産防衛活動だと言える。
そこで冒頭の問いに回答したい。
為替変動による資産の増減を極力小さくするためには各主要通貨の流通割合（シェア）になるべく合わせることであると私は考える。
ちなみに国際決済銀行がおこなっている外国為替市場の調査データを参照すると、
米ドル（USD）約43%
欧ユーロ（EUR）約20%
日本円（JPY）約10%
英ポンド（GBP）約6%
豪ドル（AUD）約4%
スイスフラン(CHF)約3%
という具合である。
自分の資産をこの割合に合わせて両替し、通貨分散しておけば為替変動があっても基軸通貨米ドルで換算した全体の資産はほとんど変動ないはずである。ただこれは国際取引に使われた量を示すものなので、完全な自由化がなされてない中国の人民元の数値はその潜在的な影響力に比べてごく小さい。この辺りは杓子定規にはいかない。また日本に住む人は日本円を使う機会が多いので全体の9%では足りないかもしれない。
つまり基本的には主要通貨の流通割合を意識しながら分散を行い、このデータだけではわからない要素や自分の生活環境を加味してカスタマイズするというのがあるべき通貨分
散のかたちだと言えるだろう。

玉利将彦　（タマリ　マサヒコ）
上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は20年に渡る。
香港の証券取扱免許（SFC）と保険取扱免許(PIBA)を保有する資産運用アドバイザーとして、顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港BOOM証券・中国銀行など海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている。

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