中国・暮らしの歳時記 家族円満・春節と並ぶ重要行事【中秋節】

2016/09/06

アジアには古くから「月見」にまつわる風習がある。日本では、中国から中秋の祭事が伝わり、平安時代ころから貴族などの間で観月の宴や、舟遊びで歌を詠む宴を催すようになった。現在でも、すすきを飾り、月見団子や里芋を供えて月を眺める風習がある。では本家中国では現在どのような風習がみられるのか調べてみよう。

「中秋節」とは?
中秋節は中国の伝統的な祭日で、「唐書・太宗記」では「八月十五日中秋節」に言及されている。宋代に入ってから流行し始め、明、清の時代になってからは春節(旧正月)と並ぶ重要な祭日となった。旧暦(農暦)の八月は秋に入って二つ目の月となる。つまりこの月は秋の半ばにあたるので「仲秋」と呼ばれた。旧暦八月十五日は「仲秋」のさらに中頃に当たるため「中秋」と称されている。2016年の中秋節は新暦の9月15日で、16日と17日が連休となる。

中秋節には、「秋夕」「八月節」、「八月半」などの呼び方もある。中秋節の際に行う主な行事は月とかかわりがあるため、「月節」「月夕」とも呼ばれる。また、丸い月が“團圓”(団欒・円満)を象徴するので「團圓節」とも呼ばれる。「團圓節」についての最も古い記述は明の時代のもので、「月餅を送り合い、団欒とした」とか、家族が集まる「團圓節」に言及されている。そのため、毎年この季節になると、人々は各地からふるさとに帰り、家族一緒に団欒の食事を囲む。

「月餅」について

月餅

中秋節に欠かせないものといえば「月餅」だ。月餅はもともと月神を祭る供物だった。後に、中秋に月見をすることと月餅を食べることは家族円満の象徴とされ、中秋節の贈答品となった。現在ではたくさんの種類があり、風味も各地で異なる。「広式」(広東風)、「京式」(北京・天津風)、「蘇式」(蘇州・パイ風)、「徽式」(安徽・徽州風)などが代表的。たいていの日本人がイメージする月餅は、そのほとんどが広東風だと思ってよい。特徴は、皮と餡の比率が1:4、薄皮であること。餡の種類は非常に多いが、この時期必ず見かけるのが「蛋黄月餅」。餡の中にアヒルの塩漬け卵の黄身が丸ごと入っている。甘い餡に塩味のきいた濃厚な黄身が合わさり、絶妙な味わいとなる。丸い黄身が月を象徴しているため、最も中秋らしい月餅といえる。

広州の風習
樹中秋:竹を編んで作った様々な形の行灯をともし、樹木やバルコニーや屋根に吊るす広州伝統の風習。夜になると、あちらこちらで行灯が輝く。この風習は「豎中秋」とか「樹中秋」と呼ばれる。かかげる行灯が高ければ高いほど縁起が良いとされている。かつては祖父母が孫に行灯と「七星旗」(北斗七星旗)を贈って、賢い子に育つよう願った。

月

拝月光:広州の中心である広府地区では、中秋節は「月光誕」と呼ばれる。中秋節の夜は、一家団欒の食事の後、バルコニーまたは門前に供物台を置き、線香を立て礼拝する「月光祭」が執り行われる。月餅のほかに、柚子(ブンタン)、柿子(カキ)、香蕉(バナナ)、楊桃(スターフルーツ)、芋頭(サトイモ)などが供物とされ
る。月光祭の後は、家族が車座になって、果物や炒めたタニシなどを食べる。

ブンタン

吃柚子:満月の月と同じように丸いブンタンは「團圓(団欒・円満)」を象徴している。ブンタン(ザポン)の中国語は「柚子」で、「柚」(you)と同じ発音の「佑」(you、護る)を連想させることから、月のご加護を祈願する意味を持つ。また、この季節が柚子の旬であるため、中秋節には欠かせない果物とされている。

菱の実

吃菱角:子どもがいる家庭では、「菱角」(菱の実)を子どもたちに食べさせる。菱角には子どもたちが賢くなるようにという願いが込められている。菱の実は表面の皮をむいて粒状に切り分けお粥にし、月餅の後に食べる。

里芋

吃芋頭:里芋には「魔除け・厄除け」の意味がある。中秋節で食べるのは、この季節が里芋の旬であること、さらに春に親芋を植えると秋には一株の親芋からたくさんの小芋がなることから「母子團圓」の象徴とされている。

タニシ

炒田螺:中秋節に田螺(タニシ)や石螺(石巻貝)を食べる風習の起源は、ある秀才に由来するという。中秋節に貧しくて肉を買えなかったこの秀才は、タニシと石巻貝を集めて煮て、月を見ながらこれを食べた。後に、秀才はみごと科挙に合格する。田螺は「攀桂」(科挙合格)ともいわれ、中秋節で食べられるようになった。この季節のタニシは食べごろで、目に良いとされる。

中秋の漢詩

中秋月(蘇軾)
暮雲収盡溢清寒
銀漢無聲轉玉盤
此生此夜不長好
明月明年何處看

日暮れ時、雲はすっかりなくなり、心地よい涼風が吹いている。銀河には音もなく玉の盆のような月があらわれた。こんな楽しい人生、楽しい夜、しかし永遠に続くものではない。この名月を、来年は、どこで見ているだろう。

十五夜望月(王建)
中庭地白樹棲鴉
冷露無声湿桂花
今夜月明人尽望
不知秋思在誰家

中庭の地面は月明かりで白く輝き、樹上の巣には烏が休む。冷たい露は声もなく桂(もくせい)の花を潤している。今宵の月明かりをみな眺めていることだろうが、秋の夜の物思いにふける人は、どこの家にいるのだろう。

 

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