「NWB 春の集中講座」レポート

2017/04/11

    香港在住日本人向けの保険や証券などの金融商品をはじめ、日本での不動産投資に興味 のある、香港人富裕層に向けて金融サービスを提供しているNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(以下NWB)。昨年実施した投資フォーラムや保険活用セミナー の成功を受け、3月24日と25日の2日間、春の集中講座を開催。同講座では、長谷川建一CIO や幾田朋彦商品部長、外部からの特別講師らによって世界の経済・金融事情、今後注目の 投資商品など全6セッションの講演が行われた。今回はその中の1つ、「2017年世界経済と市 場見通し」を紹介しよう。

「2017年世界経済と市場見通し」
[講演者] NWB CIO 
                   長谷川 建一氏

NWB

  去年2016年を振り返ると、米国経済は、悪くなくはなく、実際はかなり堅調に推 移しました。ところが、市場もメディアも悪いイメージが強く、実態を見誤ったのです。 株価の動きをみると、2016年1月中国株の下落による混乱から始まりましたが、終 わって振り返ると株価は1月安値の12月高値となり、利幅も9%から10%上昇してい たのです。現状でも、米国経済は、足腰がしっかりしており懸念だけでは、見誤る可能 性が高いと思っています。

 今年2017年に入り、マーケットで一番注目されているのは、政権交代が行われた アメリカです。ドナルド・トランプ大統領(以下、トランプ)は先日、いわゆるオバマケア (バラク・オバマ政権が推進していた医療保険制度改革の通称)の修正法案を議会に 提出していましたが、共和党保守派からも批判が出て、法案の通過が見込めなくな り、撤回すると表明しました。この表明により、トランプ大統領の言及してきた政策へ の期待が後退し、不透明感が強まりました。

 トランプ政権が掲げている政策は、基本的には以下の3つです。1つ目は財政出動 による景気刺激です。これまでの政権では、財政赤字を理由にインフラ投資を控えて きました。アメリカ国内の空港や地下鉄などのインフラは、設備が古いというのが現 状です。トランプ大統領はメリハリをつけ、インフラを重点に実行しようと考えていま す。その投資額は一兆ドル(約110兆円)にも及ぶ大規模な投資になる見込みです。2 つ目は税制改革です。年収2万5000ドル未満の単身世帯と、年収5万ドル未満の夫 婦世帯を対象に、個人所得税を免除する減税を目指しています。これは、ダイレクトに 消費刺激を狙っています。さらに、法人税を35%から15%まで引き下げることを掲げ ています。15%の法人税の水準はどれくらいの低さかというと、香港の法人税でも 16.5%のため、それとの比較からしても、かなり前のめりな減税と言えます。その背景 には、アメリカ企業のCEOを対象にした経済活動のし易さをヒアリングした調査結果 にあります。20年前には、CEOの7割が経済活動しやすい良い国と答えていましたが、 昨年に実施された同調査の結果では、経済活動しやすい良い国と回答した人は2割 ほどしかいませんでした。こうしたことを、トランプは大統領に なってからも、経営者としての肌感覚から感じていたでしょう し、米企業のCEOと毎日会合を重ねることからも確信して、引き 下げを決めたのでしょう。選挙期間で言及していた法人税15% という水準は難しいかもしれませんが、20%前後を目処に議論 が進んでいくと予想します。また、アメリカ企業が米国外事業か ら得た利益を米国に還流させたいとトランプ大統領は考えてい ます。そのためにトランプは、一回限り税率を10%で、利益を還 流させることを提言しています。アメリカ企業では、資本効率を 重要視するため、余剰資金がある企業は、いかに次のリターン に繋げるかを模索します。そのため、10%の減税であれば、米 国に資金を還流させて投資をしたほうがいいとのインセンティ ブが働く可能性は十分にあります。何故なら今、アメリカには新 しい産業の種が沢山あるといわれているからです。シリコンバ レーでも、南部のエネルギー地帯でも、新医療や宇宙関連、 フィンテックや代替エネルギーなど、新しい産業に成るかもし れない小さな企業がたくさんあるからです。これは新たな産業 の創出に繋がり、21世紀の新産業を米国企業がリードし続ける とおいうシナリオも描けます。まさに「アメリカ・ファースト」です。 一方で3つ目は、通商政策に関しては、やや懐疑的に観ていま す。個人的には度をこすと、そのツケは結局アメリカにとってマ イナスに影響が出る可能性が高いと考えています。もし、アメリ カが輸入をやめて自国内で生産をすべて行う場合、雇用コスト が高い米国内での生産は、製品価格を跳ね上げることになる でしょう。産業にも寄りますが、メキシコとアメリカの雇用コストをみると、5倍から7倍というデータもあります。保護主義は、現在アメリカが自由貿易 から受けている恩恵をギブアップしてしまう可能性があるのです。一見、産業を保護 しているように見えますが、その代償をトランプを支持してくれた人たちに払わせるこ とになるため、私はこの政策に関しては、主張し続けられない矛盾を抱えていると考 えています。

 心配なのは、ヨーロッパ諸国です。経済的に観るとEUの28各国というのは、かなり の格差があることを認めざるを得ません。各国の経済的な格差は、人々の不満の根 底にあり、それが顕在化しやすい年になると思います。それが顕在化した事象が昨年 6月の英国国民投票によるEU離脱の決定です。また、今年は、フランスの大統領選と ドイツと選挙の年があり、政治的にもナショナリスティックな主張が目立つことになり ます。さらに、累積債務の問題がのしかかります。一例として、ギリシャの債務問題に 関しては、期限を繰り延べてきただけで、根本的には解決していないというべきもの です。EUの中で、何とか繰り延べを認めて、IMFやドイツ・フランスを中心に支えてい ますが、上述のようなナショナルステックな圧力が高まると、ギリシャを支えにくい流 れがでてきています。もし、ギリシャの債務問題が深刻化すれば、これは特定の一国 の話ではなく、EUの中で信用不安に繋がることになります。今年は、リスクファクター として欧州を見ていかなければなりません。

 東アジア情勢も、地政学的に心配です。中国は経済的には、成長率の鈍化に注目 が集まりがちですが、今年に限っていえば、人民元の下落圧力と資本の国外流失にど う対処していくかが問題であると考えています。

 その他では、インドに関しては、高額紙幣が廃止され、経済も一時、混乱がありまし たが、これは長期的にはプラスに働くと考えています。その理由は、この政策が、イン ド経済のデジタル化投資を呼び込み、経済変革を速めると予想するからです。既に、 株価も上昇傾向を回復し、国内成長率も再び7%台を回復できる見通しで、モディ政 権の支持率も高いことから、インドへの期待は萎まないと考えています。

NBW

〈編集部レポート〉

 今回の講座は、2017年の動向予想からNWBの活用方法、投資の基礎知識まで行われ、参加者にとって満足 度の高い結果になったようだ。講演だけでなく、日本人に定評のある中華レストランでの昼食や会員制のチャ イナクラブでのディナーで香港の多様な食文化を楽しみながら、参加者同士の交流ができることもまた、この 講座の魅力だろう。最新の金融事情や国際税務、アジア情勢について、日本ではなかなか得られない貴重な 情報が手に入るこの集中講座は一部のセッションだけでも参加が可能なので、興味のある方はぜひ参加して みて欲しい。

5月20日(土)「初夏の集中講座」開催

NWB取扱商品や、ケーススタディを含めた実践的な内容で、NWBの経営陣や 社員が投資実践について講演をする投資集中講座です。 参加費用: HK$1,500(ご昼食:飲茶 / ご夕食:中華料理@チャイナクラブ 付)

Nippon Wealth Limited,a Restricted Licence Bank

住所:16/F., The Peninsula Office Tower, 18 Middle Rd., TST

電話:(852)3958-8828

メール:info@nipponwealth.com

ウェブ:https://jp.www.nipponwealth.com

 

 

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