中国法律コラム18 産休を取得した女子従業員の評価について

2017/05/23

今回のコラムでは、今月クライアントから問い合わせのあった興味深い問題について、みなさんと共有したいと思っております。ふたりっ子政策が実施されたこと
により、今後産休を取得する女子従業員が増えることが予想されます。
弊所のクライアントは、産休を取得する従業員が増えたことにより、彼女たちに対する人事評価についてお悩みで、次のような問い合わせをされました。

一、「問合せ事項」
(1)産休を取得した従業員と、1年間フルに働いた従業員を比較すると、職位に対する責任も、目標達成も、どうしても達成度は低くならざるを得ないと思います。しかし、法律によれば、出産休暇期間中も休暇前と同等のパフォーマンスを示したとして評価をしなければならないということでしょうか?
(2)皆勤賞には影響は与えないが、評価については、休みなく働いた従業員との比較では差を付けることは問題ないでしょうか?
(3)産休を取得したり、産休前後に残業できない、退社時間が早い等、勤務時間に差が出ていることも事実であり、時間が少なければその分成果も低くなることは当
然の状況です。1年間フルに働いた従業員から見ると、全く差異なく評価されることに不公平感を感じているのも事実です。1年間フルに働いた従業員と合理的な範囲で差を付けたいということです。
(4)出産休暇終了後について、出産前の職位、待遇を保証しなければならないのでしょうか?

二、関連法令
「広東省人口及び計画出産条例」
第30条 法律、法規に適合する子女を生育する夫婦について、女子は80日の奨励休暇を享受する…(中略)…当該期間における賃金は従来通り支払うものとし、福利待遇及び皆勤賞に影響を与えてはならない。

「労働人事争議事件審理の若干問題に関する広東省高級人民法院、広東省労働人事争議仲裁委員会の座談会議事録」
第22条 使用者が労働者の職場を調整するにあたり、次の各号に掲げる全ての条件を満たす場合、使用者が適法に人事権を行使したものとみなす。
①労働者の職場調整が使用者の生産経営の必要性によるものである
②職場調整後の労働者の賃金水準は元の職場に基本的に相当するものである
③侮辱性、懲罰性を有するものではない
④その他の法令に違反しない

三、法的分析
(1)「広東省人口及び計画出産条例」30条によりますと、計画生育政策に適合する出産をし、出産休暇及び奨励休暇を取得する女子従業員について、その休暇期間は正常に出勤したものとみなさなければならず、福利待遇、皆勤賞に影響を与えてはいけません。ここにいう「福利待遇」を厳格に理解すると賞与や昇給に影響を与えてはいけないということです。もっとも、出産休暇期間以外の期間において、病気休暇、私用休暇などがあった場合、それを評価の対象とすることはできます。
(2)出産休暇を取得したため、休暇期間中は業績がないとして他の従業員と比して低い評価とすることは、女子従業員保護の観点から不当であると考えます。そこで、業績評価部分については、例えば次の方法を検討できると思います。
①過去の本人の評価の平均値を使用する。
②本年度出勤期間の業績の1年の期間に相当する値を
算出して使用する。
このような処置を講じれば、休みなく働いた従業員とある程度差をつけることができると思います。
(3)産休を取得した社員の評価を下げる場合、産休を 取得したこと以外を理由にすべきと思います。出勤日 数・時間が少ない又は産休を取得したことを理由とす ると、女子従業員保護の観点から不当とされるリスクが 高いと言えます。そこで、直接に産休を取得したことを 評価の理由とするのではなく、その他の業務に対する 態度や成績などを理由にすべきでしょう。
(4)前述の「議事録」22条によりますと、出産休暇を終え て職場復帰した女子従業員について、会社の需要に応 じて業務内容及び職場を調整することができますが、 調整後の報酬待遇は基本的に出産休暇前の待遇に相 当するものでなければならず、かつ、侮辱性及び懲罰 性を有するものであってはいけません。もっとも、従業 員本人の書面による合意を得ることが出来れば、その 報酬や待遇を引き下げてもリスクはありません。

四、まとめ
いかがでしたか? 今後、産休を取得する女子従業員の評価をされる際に、今回のコラムを参考にしていただければ幸甚です。

盛唐法律事務所
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM

法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

 

 

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