中国法律コラム 22「内部規定の制定手続きについて」広東盛唐法律事務所

2017/10/24

今回のコラムでは、会社が就業規則などの内部規定を制定するにあたって、その内容について従業員の同意を得る必要があるのか?という問題について論じたいと思います。

一、問題提起
就業規則などの従業員の切実な利益に直接かかわる内部規定を制定するにあたり、中国の労働契約法は、いわゆる民主的手続を履行するよう求めており、従業員と平等に協議をすることが要求されています。そこで、ここにいう協議とは、ただ単に話し合いの場を設ければ良いのか、それとも、従業員の同意までを必要とするのかという点が問題になります。

もし、従業員の同意までを要するとすると、従業員にとって厳しい内容の内部規程を制定することが大変難しくなります。この点、まずは次の関連法令を見ていきましょう。

二、参照法令
1.労働契約法
第4条(使用者の義務)
使用者は、法により労働に関する内部規定を確立し、及び完全化し、労働者が労働権利を享有し、労働義務を履行することを保障しなければならない。

使用者は、労働報酬、勤務時間、休憩、休日及び休暇、労働安全衛生、保険、福利、従業員の訓練、労働規律並びに労働ノルマの管理などの労働者の切実な利益に直接かかわる内部規定又は重要事項を制定し、改訂し、又は決定する場合、従業員代表大会又は全従業員における討議を経て、案及び意見を提出し、工会又は従業員代表と平等に協議して、これらを確定しなければならない。

内部規定及び重要事項の決定を実施する過程において、工会又は従業員は、これらを不適当と認めた場合、使用者に対し申し出て、協議によりこれらを改訂し、及び完全化する権利を有する。

使用者は、労働者の切実な利益に直接関わる内部規定及び重要事項の決定を公示し、又は労働者に告知しなければならない。

2.「労働紛争調停仲裁法」及び「労働契約法」の適用における若干の問題に関する指導意見
第20条後段(民主的手続を経ない内部規定の取扱い)
「労働契約法」の施行後において、使用者が労働者の切実な利益に直接かかわる内部規定又は重要事項を制定し、又は改訂した場合において、「労働契約法」第4条2項に規定する民主的手続を経ていないときは、原則としてこれらを使用者の労働者使用管理の根拠としてはならない。ただし、内部規定又は重要事項の内容が法律、行政法規及び政策の規定に違反せず、明らかな不合理な事由が存在せず、かつ、すでに労働者に公示され、又は通知され、労働者に異議のない場合は、労働仲裁及び人民法院裁判の根拠とすることができる。

三、「民主的手続き」の履行について
前述の法令のとおり、使用者は労働者の切実な利益に直接にかかわる内部規定を制定するとき、必ず民主的手続き(従業員代表又は工会と協議をすること)を履行しなければならず、また、決定した内部規定を労働者に公示しなければなりません。なお、内部規程の内容が法令に違反せず、かつ、不合理な事由が存在しない場合は、従業員に公示されていれば、従業員に対して法的拘束力を有します。

四、内部規定の内容について、従業員の同意が必要か?
使用者は経営自主権を有するため、自身の状況に応じて、法令に違反しない範囲において内部規定を制定することができます。労働契約法は、内部規定の制定にあたり、必ず従業員と平等に協議しなければならないと定めていますが、これは協議すること自体を要求しているのであって、協議により従業員と合意を達成することまでは要求されていないと解釈されています。つまり、内部規定の内容については、最終的な決定権は使用者が有しているといえます。したがいまして、使用者は内部規定を制定するとき、必ずしも全従業員の同意を得る必要はなく、従業員代表又は工会との協議を経て、かつ、これを公示すれば、一部の従業員がその内容について反対したとしても、内部規定は適法に効力を生じ、従業員全体に対して法的拘束力を生じるといえます。

盛唐法律事務所
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

 

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