総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:糖尿病 怖い合併症

2017/11/22

現代病と呼ばれる慢性疾患のなかでもがんと並んでその筆頭に挙げられるものが糖尿病です。世界の総患者数は、なんと4億人を超えていると推計されています。日本人に限ってもその疑いがある人は1000万人に達しており、自分自身が糖尿病であることを知らずに生活している人も少なくはありません。また、1億人超の患者を抱える中国は、世界一の患者増加率を記録しています。最近では合併症の問題が大きくなりつつあり、その経済成長にも影響しかねない事態となっているようです。

メディポート代表:堀 真
メディポート代表:堀 真

糖尿病は大きく2種類に分けられます。膵臓のβ細胞が壊れてインシュリンが分泌されなくなって血糖値の上昇を招くのが1型糖尿病。患者の多くは幼少期に発症し、インシュリンを自己注射することによって人工的に血糖値を調整しなければ生きていけません。これに対して、おもに過食による肥満が引き金となって発症してしまうのが2型糖尿病です。多くの糖尿病患者は2型であり、これは生活習慣病の延長にあるものです。糖尿病は特別な症状もなく進行し、気が付いた時には取り返しがつかないほど悪化して合併症を発症してしまうこともある「深刻な病気」であることは、一般にはあまり認識されていないようです。

厚生労働省の統計資料「2016年人口動態統計」では、人口10万人当たりの糖尿病による死亡率は10.8人となっています。都道府県別で最も死亡率が高い青森県であっても17.0人に過ぎませんから、糖尿病を直接的な原因とする死亡は決して多いわけではありません。ところが高血糖状態は血管にダメージを与えて循環器系疾患のリスクを高めることになります。その結果として心臓や脳血管系の病気での死亡者数を引き上げる大きな要因になるわけです。

さて、怖い合併症の話をしましょう。糖尿病性神経障害(末端壊死―四肢の切断など)、糖尿病性網膜症(高齢者の失明)、そして糖尿病腎症(腎臓透析)は三大合併症といわれているものです。どの合併症が発症しても生活の質を著しく低下させるため、患者の苦痛は計り知れないものになります。このところ透析患者が増え続けている背景には糖尿病患者が増加している現実があります。臨床工学技士として透析業務に長年携わっている私の友人の話ですが、新規で透析を受けに来る患者の多くは糖尿病患者で、しかもその患者のなかにはすでに末端壊死で片足を失っている人もあるそうです。糖尿病患者は痛みを感じにくくなるため、けがをしても気付くことなく組織を壊死させてしまうことがあるのです。さらに成人後の失明はとても深刻です。高齢になって突然視力を失うと白杖をついて歩くこともままならず、自宅に引きこもった状態になってしまうことも稀ではありません。最近はこれらに加えて脳梗塞が4番目の合併症として注目されるようになってきました。多くの合併症は血管の損傷を引き金として発症します。脳の血管が詰まってしまう脳梗塞に関しても同じことが言えますが、これはさらに認知症(脳血管性認知症)とも大いに関連しています。もちろん糖尿病だけがその原因ではありませんが、高血糖状態は認知症のリスクを高めることが疫学的にも証明されていることです。実はアルツハイマー型認知症とも関連しているとの報告もあり、患者にとっては気になることではないでしょうか。

ずいぶん昔の弊社のお客様の例ですが、糖尿病に加えて高血圧症、肝機能障害、脂質異常症を認めるなど、その方の健康状態は極めて悪いものでした。ところがこの方が一念発起して減量したところ、すべての検査項目でまったく問題がないレベルにまで改善したのです。ご本人も大喜びでしたが、それも束の間、油断したところで一気に体重がリバウンドして血糖値も急上昇してしまいました。会社では海外部門で将来が約束されたような優秀な方でしたが、帰国後に週3回の透析を余儀なくされる生活が始まり、仕事ができる時間も5時間程度に制限されてしまったとのことです。もちろん再び海外で仕事できるチャンスも失ってしまいました。

糖尿病の原因は様々ですが、少なくとも肥満が引き金となって発症したものであれば減量で改善することが大いに期待できます。改善できた事例はいくらでもありますが、一方で諦めてしまうケースも少なくはないようです。もともと糖尿病は痛みなどの苦痛を伴うことなく静かに悪化していく病気であるため、サイレントキラーとも呼ばれているものです。苦痛を取り除きたいという動機が生まれることはなく、食欲という最大なる欲望が優先されてしまうため、よほど強い意識を持たなければこの病気の克服は難しいことは確かです。減量で改善できる可能性がある多くの患者は、とにかく痩せるべきです。減量は最も効果的な治療といえましょう。ただし重症化してしまった患者の場合は、やみくもな減量は危険な場合もあるので、必ず医師の指導の下で改善を図ってください。

糖尿病はコントロールできる病気です。医師や専門家の助けを借りつつ、自分の努力で血糖値を適正なレベルにおくことさえできれば、合併症を恐れることはありません。もちろんその予防が最も大切であることは言うに及びませんが、飽食の時代、誰にでもそのリスクがあるものと理解しておきたいものです。

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