中国法律事情「中国会社法の外資企業設立規制その2」高橋孝治

2018/01/10

 前回は中国の会社法の基礎知識と中外合弁企業について解説しました。今回はその続編です。

・中外合作企業
中外合作企業とは、外国企業と中国企業が中国の法律に基づいて共同出資により中国国内に会社を設立し、共同経営を行い、合作契約により合作当事者間の権利義務関係を規定する企業形態をいいます(中外合作経営企業法第2条)。出資比率ではなく、契約により権利義務関係を規定できる点や有限会社以外の形態にもできる点に中外合弁企業との違いがあります。

中外合作企業の設立時にも許可されない場合が法律上列挙されています。①中国の主権または社会公共利益を損なう場合、②中国の安全を脅かす場合、③環境汚染をもたらす場合、④法律、行政法規あるいは国家の産業政策その他の事由に違反する場合の4つです(中外合作経営企業法実施細則第9条)。

また中外合弁企業のように奨励されている業種は中外合作企業にもあります。中外合作企業の場合は、製品輸出または技術が先進的な生産型企業を奨励するとしています(中外合作経営企業法第4条)。

・外資独資企業
外資独資企業は、外国企業などが全額出資により設立する企業です。ただし中国国内の分支機構は除きます(外資企業法第2条)。

外資企業にも設立許可が下りない場合があり、その理由が法律上に列挙されていますます。

①中国の主権または社会公共の利益を損なう場合、②中国の安全を脅かす場合、③中国の法律または法規に違反する場合、④中国の国民経済発展の要求に符合しない場合、⑤環境汚染をもたらすおそれのある場合の5つです(外資企業法実施細則第6条)。

また外資独資企業は明確に新聞、出版、放送、テレビ、映画、対外貿易、保険、郵便通信などの業種を行うことを禁止しており(外資企業法実施細則第4条)、公用事業、交通運輸や不動産業などにも制限があります(外資企業法実施細則第5条)。

さらに外資企業は中国国民経済の発展に有利で、顕著な経済効果および利益を取得することができるものでなければならない、ともしています(外資企業法第3条)。(続く)

高橋孝治

〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

Pocket
LINEで送る