目から鱗の中国法律事情 Vol.22「中国の手形小切手の概要その2」

2018/08/07

前回、中国の手形小切手は日本のものと大きく異なり、政府による取引の管理と送金機能が主な機能になっていると説明しました。今回から、具体的な制度の説明に入ります。

 

中国の手形小切手は5種類

中国では手形小切手を一般的には「票拠」といい、票拠法という法律で規制されています。中国の手形小切手は、滙票(日本語では「為替手形」。以下カッコ内は日本語訳)、本票(約束手形)、支票(小切手)の3種類があります(票拠法第2条第2項)。さらに、滙票は銀行滙票(銀行為替手形)、銀行承兌滙票(銀行引受為替手形)、商業承兌滙票(商業引受為替手形)に分類できます。以下、計5種類の手形小切手の主な説明をしましょう。

 

銀行滙票(銀行為替手形)の概要

Capture_655_中國法律[confirmed]銀行滙票を使う際には、まず①手形の申請人が銀行に手形の額面にする金額を支払い、手形の申請をします。②申請と額面相当の金銭を受け取った銀行は申請人に対して手形を発行(振出)します。③手形を受け取った申請人は、その手形で現金の代わりに支払いなどを行います。なお、この時の支払い額は、手形の額面と異なっていても問題はありません。銀行滙票には、「手形の額面」とは別に「実際の決済額」を記入する欄があります。④手形を受け取った人は、この手形を他の人へ譲渡したり、別の支払いに使うこともできます(手形の裏書譲渡)。⑤手形所持人のうち、現金にしようと思った人が銀行に手形を呈示すると、「実際の決済額」の現金を受け取ることができます。⑥現金を支払った銀行は手形を振出した銀行に支払った金額の請求をします。⑧「手形の額面」と「実際の決済額」が異なっていた場合、手形を発行した銀行は手形の申請人に差額を返金します。
銀行滙票の最大の特徴は、手形が振出された後に「実際の決済額」を決められるという点です。つまり、取引の金額が直前まで分からない場合に使うことができます。また、現金取得のために銀行に手形を呈示することができるのは、手形の振出から1カ月以内という制限があるので、手形を受け取る時には注意しましょう。(続く)

 

 


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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