目から鱗の中国法律事情 Vol.24「中国の手形小切手の概要 その4」

2018/10/16

前回までで5種類の中国の手形小切手のうち、3種類までを解説しました。今回はこの続きで、 本票と支票の解説をします。

 

本票(約束手形)の概要

本票を使う際は、まず①手形の申請人が自身の取引銀行に手形の申請をします。②申請を受けて銀行は、申請人に対して手形を発行(振出)します。③手形を受け取った申請人は、その手形で現金の代わりに支払いなどを行います。④手形を受け取った人は、手形を裏書譲渡することもできます。⑤手形所持人のうち、現金にしようと思った人が自身の取引銀行に手形を呈示すると、手形に記載されている金額を受け取ることができます。⑥その後、手形所持人の取引銀行と手形申請者の取引銀行が口座間取引で決済を行います。

本票も取引銀行を経由するので、個人で使用することはできません。また、最終的に口座間取引で決済がされるので、銀行匯票(銀行為替手形)と異なり申請の際に現金を支払う必要がありません。また本票は、管轄する手形交換所の区域内でしか使えないという制限があります。つまり、例えば北京で申請した手形を上海で呈示するなど、遠隔地取引には使えないということです。また、銀行匯票(銀行為替手形)と同じく現金取得のために銀行に手形を呈示することができるのは、手形の振出から1カ月以内です。

 

支票(小切手)の概要

支票を使う際は、まず①小切手の振出人が自身の取引銀行に小切手用紙の申請をします。②申請を受けた銀行は、振出人に対して小切手用紙を交付します。③用紙を受け取った振出人は、その小切手に金額を書き込み、それを現金の代わりに支払いなどを行います。④小切手を受け取っ た人は、小切手を裏書譲渡することもできます。⑤小切手所持人のうち、現金にしようと思っ た人が自身の取引銀行に小切手を呈示すると、所持人の取引銀行が振出人の取引銀行と決済を行います。⑥その後、小切手を呈示した人は、小切手に記載されている金額を受け取ることができます。

支票は、あらかじめ小切手用紙を受け取り、それに振 出人が自由に金額を書き込める点が最大の特徴です。この点は日本の小切手と同様です。ただし、中国の小切手は預金金額を超える金額を記入することは禁止されています。中国の小切手は金融機能を持たず、決済機能と送金機能しか持っていません。(続く)

 

 


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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