総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:インフルエンザに備えよう

2018/11/21
メディポート代表:堀 眞

メディポート代表:堀 眞

秋が深まり、カラッとして心地が良い季節になると、咳やくしゃみなど風邪症状を訴える人が増えるのは毎年のこと。日本では11月に入るとインフルエンザ患者が増えてきます。北国のみならず全国から初雪の便りが届くころになると、その患者数はうなぎのぼりに増えていくのは毎年のことです。香港など中国南部でもこれからの季節はインフルエンザに注意が必要ですが、例年日本の流行期と比べると1か月くらい遅れるように感じます。昨年は11月に雨が多く、12月も比較的暖かかったせいかインフルエンザの本格的流行は少し遅れましたが、いくら遅れても毎年確実に爆発的に流行するので、決して安心することはできません。

ところでインフルエンザというと気温が低く乾燥した季節に流行するものだというイメージがありますよね。確かに日本では木枯らしとともにやってくるような気もします。ところが香港では春節が明けてから流行のピークを迎えることになります。この季節は最も湿度が高い時期にも関わらず、日本の常識に反してインフルエンザ流行の勢いが増すのです。この理由がわからず、鳥インフルエンザが流行したときに来港した感染症専門家に質問したものの、答えは首を傾げて「わかりません」の一言。当時は専門家であってもその理由には説明がつかなかったようです。インフルエンザウイルスが湿度に弱いことは確かですが、最新の知見では、湿度が100%に近くなると、反対にその生存強度を増すことがわかりました。熱帯地方にも一定規模のインフルエンザが存在することを考えると、このウイルスが高湿度に弱いとは一概に言えないはずですよね。

さて、これからの季節、日本の爆発的な流行を追うように香港華南地方でのインフルエンザ患者が増えていきます。インフルエンザはちょっときつい風邪ではありません。場合によっては死に至る感染症なので、決して甘く見てはいけません。また、自分自身のみならず自身から周囲に感染を広めない努力も必要です。賛否ある予防接種ですが、これは受けておいた方が良いことは明らかです。予防接種を受けたにもかかわらず感染したから予防接種を受けても意味がないという意見もありますが、これは決して正しい意見ではありません。受ける受けないは自由ですが、受けることによって大きなメリットがあることは確かです。現在のワクチンは4種類のウイルスに対応できるものです。ワクチン製造は、その年の南半球での流行状況を確認したうえでWHO(世界保健機関)が決定し、各国政府に通知されます。通知を受けた国ではその内容にそれぞれの事情を加味したうえで、どのようなワクチンにするのか決定し製薬会社に製造が指示されるのです。今年日本では4価(4種類)にするのか、3価のままでいくのかの判断の遅れで製造開始が遅れたことから、一部で供給が滞っていたそうです。

ある研究論文では、ワクチンの有効性を30%としています。つまりワクチン接種してもぴったりと型が合わなければ効果が少ないため、予防できる可能性は3割にとどまるというのです。しかし疫学的には、この数字を見て効果がないとみるのは早計なのだそうです。3割もの人の感染発症を抑えることができるということは、感染の拡大を阻止するためにもとても効果的なのだそうです。つまり予防接種を受けることは自身の感染予防だけにとどまるわけではなく、社会一般への貢献にもつながるのです。

さて、現在の懸念は新型ウイルスです。今のところ鳥インフルエンザは偶然ヒトに感染することはあっても、ヒトからヒトには感染していません。これがいつヒトの間で感染するようになって大流行するのか、どんなに高名な専門家であってもわかるものではありません。ひとたび流行が始まると大きな人的被害が予想されるだけに、その被害を極力小さくするためにも早急に具体的な対策を考える必要に迫られています。

最大の武器になるであろうことが期待できるのが万能ワクチンです。インフルエンザウイルスは常にその構造を変化させていますが、その中でも変化することがない構造に対するワクチンを開発しているのです。これが開発されれば間違いなくノーベル賞でしょうが、そう簡単にはいかないもの。難しい研究ではあるものの、万能ワクチンが完成した場合の人類への貢献は絶大で、現在世界中の研究者が日夜その成果を競っています。

感染をなるべく抑えるためには、予防接種に加えて手洗いの励行はもちろん、十分な睡眠や栄養摂取など免疫力を低下させないための努力が必要です。まだ流行が拡大していない今から予防を心がけておきたいものです。

 

Capture_2018.07宇宙飛行と食中毒予防

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