2019年の経済予測を発表「UBS」

2019/01/16

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世界的な経済循環の成熟に伴い、世界経済成長の鈍化、中央銀行を中心とした金融政策の厳格化、不透明な景気と収益成長の鈍化、インド、南アフリカ、ギリシャ、カナダ、アルゼンチンの選挙、EU議会の行方、米国の大統領選挙運動、不安定なイタリア、ドイツ、イギリスなど各国の政治的課題や、持続可能な経済活動と環境クレジットの逼迫、長期的な収益の可能性の限界とボラティリティ(大きな変動)への対応といった要因により、投資を取り巻く環境は厳しくなってきている。

UBSリージョナルCIO兼チーフ・チャイナ・エコノミストのイーファン・フー博士は、「グローバル株は重視すべきだが、大きな変動にも備えておく必要がある。経済成長や収益において、多少の減速は成長の停止を意味するわけではない。最近のセールオフ(株の大量売却とそれに伴う株価の下落)で、多くの資産がより魅力的な価格評価となったが、緊迫した地政学的環境や政治的な金融引き締め策も考慮すべきだ。」と述べ、来年は国際株式への比重維持を投資家たちに推奨する一方、米国中期国債や日本円に比重を置くことで、ボラティリティにもヘッジをかけるべきだと語った。優良企業中心に投資し、過度の信用リスクを回避することも同様だ。また、米国および新興市場におけるバリュー株、世界のエネルギー株、米中の金融企業の株式を含む、市場で見過ごされてきた分野にも注目を促す。新興市場や日本の株式、米ドル建ての新興市場のソブリン債(各国の政府または政府関係機関が発行または保証している債券)等、持続可能でインパクトのある投資は長期的な成長が見込めるからだ。

同社調査によれば、個人投資家と、プロの投資家及び米国拠点の富裕層では予測が異なっているという。例えばプロの投資家の半数が、来年は米国市場が世界市場に遅れをとると予想したが、個人投資家の3分の2は米国株式が世界株式と同レベルか、上回ると回答した。また約半数のプロの投資家は米ドルはユーロに対して下落すると予測したが、個人投資家でそう回答したのは6分の1未満だった。プロ投資家に人気な商品は新興市場株式、個人投資家が好むのは米国株だが、プロの投資家は米国株の動向について、個人投資家よりも楽観的である。米中貿易戦争や高金利より米国の政治的リスクを脅威と見なす専門家は少ないが、個人投資家は米国の政治的リスクを警戒している。

なお次の景気後退時期について、専門家の間で最も多い答えは2021年だったが、個人投資家の半数は2年以内と予想した。

 

同社株式アナリスト、デニス・ラム氏は「アジアの投資家には厳しい状況が続くが、選択と分散、長期的視点により、ボラティリティは対処可能だ。そして企業が地政学的秩序の変化に対応し、市場がその地域の収益見通しを再評価すれば、潜在的価値によるチャンスが来る。」と語った。

アジアの中では、金融と技術部門が、成長と価値エクスポージャー(変動リスクにさらされている資産の割合)の良い組み合わせとなる一方、堅固な財務基盤と持続可能な返済履歴を持つ企業の高収益株は弾力的であるべきとフー氏は考える。中国のインフラや資材関連企業は、政府の景気刺激策の拡大を追い風にし、長期的に見れば、中国から東南アジアへの製造業の移転は、受入国、特にベトナムに恩恵をもたらす見込みだ。

今年上半期には米ドル利回りの優位性を背景に、経済活動の減速と輸出の伸びとが相まって、アジア太平洋地域(APAC)の通貨が下落することが予想される。しかし、連邦準備制度(FED)がより穏健になり、USD相場が転換期になれば、APAC通貨は安定するだろう。

(テキスト:Hilary Kwan 翻訳:Shoko Masuda)

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