総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:血圧のはなし

2019/01/23
メディポート代表:堀 眞

メディポート代表:堀 眞

血圧というあまりにも身近な医療用語。健康上とても気になるものですが、その意味について正しく理解できている人はそれほど多くはないと思います。これはインフルエンザで熱が出ることを正しく説明できる人などほとんどいないであろうことと同じです。血圧には最高血圧と最低血圧があって、どちらにしても高いことが一般的に健康に良くないという程度の理解でしかないかもしれませんが、もちろんこれだけで日常生活においては十分です。

血圧は酸素や栄養を血流に乗せて全身に送るために必要な圧力です。そのための重要なポンプの役割を担っている心臓は、まさに全身の血管の総元締めともいえる器官です。心臓が拍動することで血液に圧力がかかり全身に血液を循環させることが可能なのですが、その一方で常時血管に作用する力は動脈硬化の原因にもなります。これは加齢現象ともいえますが、場合によっては動脈を損傷させるなどして突然の大きな疾患につながります。血圧の高低は心臓の働き具合と血管の状態に左右されますが、それらの働きは単純ではなく、血管の硬さや弾力性、ホルモン、さらには精神状態などその要因は様々です。

ところで血圧は動物の種によって大きく異なります。たとえばキリンの血圧をご存じだろうか?心臓の高さは地上3m、さらに首を伸ばした頭部までは2mもあります。高いところにある脳に十分な血流を届けるためには高い血圧が必要であり、最高血圧は260、最低血圧は160くらいあります。その一方で、水を飲むときは心臓より3mも低いところに頭部をもっていかなければいけないので、その際に脳にかかる血圧はかなりのものになります。キリンには頭部への急激な血液の流入による脳組織へのダメージを抑えるために、ワンダーネットという毛細血管の塊のような特別のシステムが備わっています。一般に大きな体の動物の方が高い血圧を必要としますが、もちろん例外もあります。七面鳥です。この鳥は多血であり血液の粘り気が大きく、全身に血液を送るために高い圧力を必要とするので、なんとその血圧は200―300にも達するそうです。どのようにしてこれら動物の血圧を測定するのか興味あるところですが、ちなみにヒトでも多血の場合には血圧が高くなりがちで、循環器系疾患のリスクを高くすることがあります。

高血圧症患者は、患者数は日本で1000万人を大きく上回ります。子供のころはしなやかで弾力性に富む血管壁であったものが、脈拍(血圧)の刺激にさらされたり、脂質などによってその組織構造が変化したりしていきます。年齢とともに血管壁の弾力性が失われるため、血圧の上昇を招くことになります。これが誰にでも起きる加齢による若干の血圧上昇ですが、実際にはこれに塩分摂取量、飲酒喫煙、ストレスなどが複雑に絡み合って血圧の上昇を招きます。また日常生活では睡眠不足は直接的に一時的な血圧上昇を招きます。

さて、血圧が高いと指摘された場合は、いったいどうすれば良いのでしょうか。多くの場合は、気にはなるものの放置してしまうのではないでしょうか。白衣高血圧と言って、病院などで医師や看護師に測定されると高めになってしまうことがあります。極端に高い場合は即座に治療を開始しなければいけませんが、まずは日常の血圧の推移を確認することがとても大切なので、ぜひ血圧計を購入してください。手首で測定できるものが使いやすく持ち運びもできるので便利です。自分で測定を始めたら、毎日できる限り回数多く測定して、自分の血圧変化の傾向を把握してください。また、起床直後に血圧が急上昇(血圧サージ)していないかも確認することが大切です。自分は高血圧とは無関係だと思っていても血圧サージが起きていることもあります。この場合の循環器系疾患のリスクは常時血圧が高めに推移している人よりも高いともいわれていますから、特に注意が必要です。

高血圧症を指摘されたからといっても必ずしも医師の下で降圧剤を服用して治療しなければいけないというわけではありませんが、医師と相談して血圧以外に問題がないかを確認し、何をするべきなのかを決めなければいけません。高血圧症の改善は投薬治療も大切ですが、自分自身で管理することがとても大切になります。体重管理するためにも食生活改善は必須ですし、軽度の運動を毎日継続することも血圧の改善には効果的です。こうしなければいけないという厳格なルールはありませんが、改善に向けての努力がなければ報われることはありません。これこそ自己責任と言えるのでしょう。

春節に向けて飲食機会が多い時季です。太ることは血圧の上昇に直結して心臓や脳血管の病気のリスクを高めます。このリスクは自分の努力でいくらでも低くできます。人生100年の時代です。寝たきりにならないためにも、今から頑張りましょう!

 

 

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