尹弁護士が解説!「中国法務速報 第2回」

2019/04/03

ライセンス契約締結の際の注意点 ①

国際取引のトラブル案件のお話を伺う際、「相手方とは契約書を交わしていない」と言われることがよくあります。しかし、国際取引で争いが起きた場合は契約書が解決の拠り所となります。すなわち、「契約書に何と書いてあったか」が問題解決の基準となります。

また、中国の法律上、契約書の作成が要求されるものや、契約書がないと送金できないものがあります。例えば、中国企業に特許やノウハウ等のライセンスを行った場合、ライセンス契約を主管部門で登記することが必要とされています。登記がないとライセンスフィー(ロイヤリティ)を中国国外に送金することができません。このような場合は、送金を受けるためにも契約書を作成する必要があります。

別の例で、中国企業に製品を納入し、技術指導を行うことを合意したとします。この場合、日本企業は技術指導は別料金と考えているが、中国企業は無料のアフターサービスと考えている可能性があります。技術指導と技術指導料の支払いに関する条文を規定することでこのような事態を避けることができます。

契約書を作成すべきもう1つの理由は、海外取引をする際に使用する契約書のひな型を事前に用意し、「これがいつも使っている契約書です」と相手方に契約書を提示した方が交渉が有利に進むことが多いです。最初は多少の法律費用がかかっても、海外取引をする際に使用する契約書のひな型を用意することをお勧めします。

本誌では、中国企業に特許やノウハウをライセンスする際、ライセンス契約締結の際の注意点について計4回に分けてご紹介します。皆様の中国ビジネスの成功に少しでもお役に立つことができましたら幸いです。

 

Point
中国でも、口頭の合意だけの契約も有効であり、書面の契約書を作成することが絶対に必要というわけではありません。しかし、口頭で合意したというだけでは、「言った」、「言ってない」の争いになることが多いのは、中国でも日本でも同様です。
特に、国際取引では、共通の慣習や文化の基盤がないことが多いため、「信義誠実の原則」に基づいて話し合いにより紛争を解決することは期待できません。取引相手と友好ムードの中でも、「現段階で合意できた内容を書面にしてお互い署名しましょう」という冷静な一面も求められるのです。また、契約書の形にすることで、取引の基本条件のみならず、交渉の段階では気づかないさまざまな問題点を予め明確に定めることができます。

 

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尹秀鍾(Yin Xiuzhong)
代表弁護士、慶應義塾大学法学(商法)博士。西村あさひ法律事務所(東京本部)、君合律師事務所(北京本部)での執務経験を経て、2014年から深圳で開業、華南地域の外国系企業を中心に法務サービスを提供。主な業務領域は、外国企業の対中国投資、M&A、労働法務、事業の再編と撤退、民・商事訴訟及び仲裁、その他中国企業の対外国投資など。

 

 

 

 

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