尹弁護士が解説!中国法務速報「広東深秀律師事務所」Vol.5

2019/06/19

ライセンス契約締結の際の注意点④(完)

中国企業とのライセンス契約の交渉で、中国企業(ライセンシー)が日本企業(ライセンサー)の提示した条件を拒否してきました。その理由は、「日本側提示の条項は、中国の法律により禁止されている」というものです。条件が中国の法律上禁止されるという相手方の主張は本当なのでしょうか。

中国の「技術輸出入管理条例」第29条は、「技術輸入契約」で以下の①~⑦の条項を定めることを禁止していましたが、2019年3月2日付で国務院から公布・施行された「一部行政法規の改正に関する決定」第38条によって、ライセンシーの権利を制限し、義務を課すことを禁止する規定は削除されましたので注意が必要です。

①不可欠ではない付帯条件(技術、原材料、製品、設備またはサービスの購入を含む)の受け入れを要求するもの。

②特許権の有効期間が満了した技術、特許権の無効が宣言された技術について、ライセンスフィー(ロイヤリティ)の支払などの負担を要求するもの。

③供与した技術を改良することを制限し、改良技術の使用を制限するもの。

④類似または競合する技術を、他のソースから入手することを制限するもの。

⑤原材料、部品、製品、設備の購入ルート、購入先を不合理に制限するもの。

⑥製品の生産数量、品種、販売価額を不合理に制限するもの。

⑦対象技術(輸入技術)を利用して生産した製品の輸出ルートを不合理に制限するもの。

また、「技術輸入契約の有効期間内において、技術改良の成果は改良側に属する」といった規定(技術輸出入管理条例第27条)や、「技術輸入契約の受入側が供与側の供与した技術を契約の定めに従って使用し、第三者の合法的な権益を侵害した場合、供与側が責任を負う」という規定(技術輸出入管理条例第24条第3項)も、上記の「一部行政法規の改正に関する決定」によって削除されました。

上記のほか、「中外合弁企業法実施条例」第43条第2項に定めている「技術移転契約の期間は通常10年を超えないこと」及び「技術移転契約の期間満了後、技術輸入側は当該技術を継続使用する権利を有する」という規定も上記の「一部行政法規の改正に関する決定」第33条によって削除されています。

このように、外国企業に対する差別的規定を設けたことで問題視されていた技術移転(輸入)に関する条項を削除することで、「外商投資法」の可決(2019年3月)に合わせて、開放政策の拡大、市場進入制限措置の緩和及び外商投資の保護策を積極的に打ち出す中国当局の決意が窺われます。一方、細則規定など具体的な後続措置がもっと重要であるとの冷静な見方もあり、今後の立法動向が一層注目されるところです。


 

Profile Photo代表弁護士、慶應義塾大学法学(商法)博士。西村あさひ法律事務所(東京本部)、君合律師事務所(北京本部)での執務経験を経て、2014年から深圳で開業、華南地域の外国系企業を中心に法務サービスを提供。主な業務領域は、外国企業の対中国投資、M&A、労働法務、事業の再編と撤退、民・商事訴訟及び仲裁、その他中国企業の対外国投資など。

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