総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:香港トイレ事情

2022/07/20

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  私が「アライグマ」と勝手にニックネームを付けた香港人男性がいます。彼は、私の会社と同じフロアーにある香港企業に勤める名も知らぬ人物。果たして彼は仕事をしているのか、と思えるほどトイレでよく会うし、そこでの滞在時間も長い。トイレで何をしているかというと、肩のあたりまで袖をまくり上げて、抗菌剤入りの石鹸でこれでもかというくらい腕全体をごしごしと洗っている。それも何度も何度も勢い良くやってるので周囲は水浸し。新型コロナの影響で、アルコール消毒を頻繁に使うようになったり、ビニル手袋を着用して外出したりするなど、香港の人々は時として少々やり過ぎではないかと思えるほど神経質にウイルスを避けようとしていますが、彼はそんな人々の中でも突出して病的にまで潔癖症になってしまったひとりではないかと思います。

  昔はトイレで手を洗うなどほとんどしなかった香港人。男性だけかと思ったら、なんと女性でも洗っている人は少ないと聞いたときには声が出ませんでした。それどころか、便座には座らず、そこに上がって用を足していたとか。便座には常に足跡が付いて、周囲は尿でびしょびしょになっているのが常だったようです。話を聞いて、男性用トイレの方がまだましなんだと思ったほどですが、もちろん男性用もその汚さや臭いは負けていなかったと思います。実はこれ、田舎のトイレの話ではなく、都心の商業施設のトイレ事情でもあったのです。またある有名な観光地に唯一あった公衆トイレは、隣の個室ともつながっている溝をまたいで用を足す形式で、時々、係りの人が上流側の一番端からホースで水を流していました。

  私が香港に駐在員として渡ってきたのは1990年代の初めのこと。当時、香港に在住していた日本人の間では、あまりにも不衛生な香港のトイレ事情が話題になることが少なくありませんでした。外出時に安心して使えるトイレがあるのはホテルくらいに限られ、行く先々の「使えるトイレ」の場所をチェックして出かけることもありました。余談ですがそんなトイレには施設を奇麗に維持してくれる管理人(トイレおじさん、トイレおばさんと呼んでいました)がいて、手を洗うと紙の手拭きや、高級なホテルなどでは布のおしぼりがサッと差し出されたものです。もちろんチップが目的であり、毎度2~5ドルを渡していたものです。大きなレストランでも事情は同じでした。ビールを飲んでいるとどうしてもトイレが近くなってしまいます。トイレに行くたびに小銭を用意しなければならなかったわずらわしさも、今となっては懐かしい思い出です。現在のトイレは管理人が常駐している場合と、頻繁に掃除している場合とがあるようですが、衛生的に管理されているトイレが多くなったのは事実で、トイレチップの慣習もなくなりました。

  2003年の新型肺炎SARS流行後、香港政府は日本からも専門家を招き入れるほど力を入れてトイレの改善に取り組んだものです。最近ではハイキングコースの入口など辺地にも公衆トイレが設置されていることが珍しくなくなったことだけでも私にとって大きな驚きですが、そんなトイレにもトイレットペーパーが常備されています。昔はホテルのトイレ以外にはトイレットペーパーは無く、女性は必ずティッシュを準備してトイレに行くのが常だったので、山の?公衆トイレでトイレットペーパーを始めて見た瞬間には驚きで声を上げてしまったほどでした。90年代初めのトイレを知る者としては、SARS後の香港トイレ事情はとても信じられないほど大きな進化を遂げています。便座シートや便座殺菌剤等が香港の多くのトイレに常備されるようになるなど、香港のトイレ事情は今も進化を続けています。最近はトイレにもデザイン性が取り入れられたり、便座や洗面にもひと工夫されたりするものもあります。

  国や地域の衛生環境はトイレ事情と比例するものです。衛生環境の改善は住民の感染症の罹患率を下げるだけでなく、健康状態の改善に直結するものです。さらに尿や便の状態を観察しやすくなるなど健康管理にも役立つこととなり、ひいては市民の健康増進にも大いに貢献することとなります。昔は外出先のトイレが嫌で、時としてそのまま我慢して「持ち帰る」ことも珍しいことではありませんでしたが、奇麗なトイレであれば我慢する必要もなくなり、特に女性にとっては膀胱炎リスクを回避できることにもなりました。

  香港のトイレ事情が良くなったと思っていたら、日本のトイレはさらに快適さを増しているようですね。私は2年以上帰国できていませんが、それまでたまに帰国するたびに日本のトイレの良さを実感したものです。日本では商業施設などのトイレにも普及してきたシャワートイレは、使用される水が海水であるという香港の事情もあってか、ほとんど普及していません。「おしり」が洗えるトイレは世界的にも日本での普及率が飛びぬけていますが、特に「痔主」の皆様にとっては、香港でも普及することを待ち望んでいるのではないでしょうか。

  都市生活の快適さをあらわす指数があるとすれば、「清潔な公衆トイレ」の存在はかなり大きなポイントとなるでしょうね。現在も香港のレベルは上昇中です。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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