総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:二足歩行と進化、健康

2022/09/21

 Capture 人類が著しい進化を遂げたのは、ヒトが直立二足歩行をするようになったからだと言われています。アフリカ中央部に棲む霊長類の中から二本足で歩く猿人が分化してヒトへと進化したのは、およそ500万年前だと考えられています。なぜ二足歩行を始めたのかという理由については諸説ありますが、樹上生活から地上生活へ移行したことが、結果的に二足歩行を可能としたとする説が有力です。ほかの動物から襲われ難い比較的安全な樹上から、自身の生存を脅かす危険性が高い地上へと生活の場を変えたのにはそれなりの理由があるはずです。

ちなみに二足歩行が可能な動物はヒトだけでなく、サルやカンガルーなども後ろ足で立ってなんとか歩けます。しかしいずれも直立ではなく、しかも身体を支えるために前足を常にスタンバイさせています。足から骨格が垂直に伸びて、一番高い位置で頭部を支えるスタイルで、常に手をフリーの状態にしている動物はヒト以外にいません。

 

二足歩行の利点

まだ樹上生活をしていた初期猿人でも、地上に降りて活動する機会は多かったはずです。後ろ足を多用するうちに、上体を支える機会が減った前足が自由になる時間が増えました。その結果、前足を別の用途に利用する術を徐々に習得したのです。完全直立歩行になって前足を「手」と呼べるようになったわけですが、この最大の利点はモノをたくさん運べることです。つまり食べものを一度にたくさん運べるようになってより生存に有利になっただけではなく、これが異性、特に雄(男性)から雌(女性)へのアピールにもなったのです。さらに自由になった手で道具が使えるようになりました。猟具をつくって、より効率的に食糧を手にできるようになりました。もちろん危険を回避するためにも両手は役立ちます。さらに火を使えるようになったのも直立歩行できたからこそ習得できた技です。食べ物を加熱することで食中毒の危険性と死亡リスクを大幅に低下させました。また栄養素の消化吸収が格段に良くなって、これが脳の発達に直結して知的能力の向上に貢献したのです。脳が発達するにつれ、体重に対する脳の重量がほかの動物に比べて格段に重くなったものの、直立歩行で重い頭部を十分支えることを可能としました。火が使えるようになった人類は、この時点で完全にヒトとしての進化を確実なものにしました。

二足歩行は100万年単位のとても長い時間をかけて獲得した超特殊技能で、人類の著しい進化につながった最大の理由です。現代人は誰もが普段まったく意識することなく歩いていますが、このような事実を時には認識して歩いた方が良いのかもしれません。不幸にして歩けなくなってしまう人もいますが、歩くことに特に支障がないのであれば、楽な移動手段を常に選ぶのではなく、できる限り積極的に歩いて、2本の足をしっかりと使ってやりましょう。

 

歩行は行動の基本

現代はとても便利な時代です。地球上のどこへでも、飛行機が飛んでいるところであれば2日間もあれば到達が可能です。歩くだけの時代は時速数㎞ほどで移動するしかなく、一日中歩いたとしてもその距離はせいぜい数十㎞ほどにしかすぎません。定住生活する前は、ただ食糧を求めて歩き続けていたのです。農耕が始まるとヒトは狩猟や採集に加えて定住して食糧を生産するようになり、常に移動する必要はなくなりました。このような大きな生活変化があっても、その生活圏内における比較的短距離の歩行による移動は日常における基本的な行動であったはずです。

現代人は車など様々な交通手段を利用して早く遠くに移動できることを前提として日常生活を営んでいます。またその生活は、物流システムで自分の生活圏と大きくかけ離れた場所ともつながって成り立っています。災害などで交通が遮断されるとたちまちにして生活が脅かされてしまうという、とても危ういシステムの中で我々の生活が成り立っているのです。災害時の状況を想像すれば、歩くことがいかに大切であるかが理解できます。歩くことを半ば放棄して生きる現代人は、その生存に対してとても脆弱になってしまったようです。

 

気持ちだけでも原点に

超便利な生活と引き換えに失ってしまったものがたくさんあるはずです。便利になって体を極端に使わなくなってしまいました。進化の過程で栄養状態が格段に良くなったヒトは、現代ではエネルギーの摂取過剰になっています。肥満は現代病であり、さらに様々な生活習慣病の原因にもなっています。食べ過ぎて健康を害してしまうなど、自然界であり得ないことです。便利な社会から今さら後戻りできるわけではありませんが、せめて気持ちだけでも本来のヒトの姿を思い浮かべてみたいものです。食生活を少し見直してみることはもちろん、便利さを求めるだけではなく時には不便さを強いて受け入れることも大切ではないかと考えます。

たまには長い距離を歩いてみてください。エレベータやエスカレーターではなく階段を利用するだけでも良い運動になります。これから爽やかな気候になるので、身体を動かすにはちょうど良い季節です。ちょっとだけ頑張ってみませんか。

 

 


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


Metro Medical Centre医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
みなさまの健康管理室 メディポート

健康診断のお問い合わせは
日本語ホットライン ☎2577-1568
✉ info@mediport.com.hk 💻www.mediport.com.hk

健康診断のお申し込みはウェブサイトからもどうぞ。
痛くない 苦しくない 内視鏡検査(胃・大腸)実施中です。
Rm.1811, 18/F., Olympia Plaza, 255 Queen’s Rd., North Point, Hong Kong

Pocket
LINEで送る