総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:とっても怖い“糖尿病”

2023/02/22

スクリーンショット (2384)現代病として最も身近なものは、間違いなく糖尿病です。がんも代表的な病気ですが、これは高齢化を背景としてその患者数が増加したもので、糖尿病とは全く性質が違うものとして捉える必要があります。それに対して糖尿病の最大の原因は現代人の飽食であり、食生活が満たされている中では、食欲が続く限りなくならない病気です。もちろん目の前にある食べものを食べずにやり過ごせる強い意志があれば糖尿病の心配はありません。しかし美味しい食物にあふれている現代ですから、自分の食欲を抑えることは難しく、空腹時に目の前に出された食事を制限するなど苦行にしかなりません。これは、生存のために脳から出される摂食の指令があり、食べることができる時にできる限りたくさん食べて多くのエネルギーを摂取して次の飢餓に備えるという、生物学的特性があるからです。生物の生存のために備わった性質が、ヒトの場合には満たされた食生活の中で肥満をもたらす原因になっているのです。余談ですが、ペットの動物にも肥満が増えています。その原因もヒトと同じです。

糖尿病患者が急増中
世界の糖尿病人口は5億3700万人(2021年)、日本に限っても、その疑いも含めると患者数は1000万人にも達するそうです。また中国の糖尿病問題は深刻であり、予備軍を含めると人口のおよそ15%が該当するという研究報告もあります。ここ30年間ほどの急速な経済発展で、人々の食生活とライフスタイルが大きく変わり、さらに運動不足も加わって患者数が激増しています。その時間経過を考えると、現在は合併症に見舞われる患者が急増しているものと考えられ、中国ではその社会的な影響が懸念されているとの報告もあります。

深刻な合併症
糖尿病は血液中のグルコース(血糖)の値が高いというだけの病気で、初期においてはこれといった症状がありません。しかし必要以上に高濃度の血糖は「血管毒」となり、全身の血管にダメージを与えて多くの循環器系疾患の直接的な原因となります。何も対応しないと静かに、そして確実に進行する怖い病気です。基本的に合併症は4つ。どれも生活の質の著しい低下をもたらすものです。

① 糖尿病神経障害
手先や足先といった末梢の神経が障害を受け、痛みやしびれなどの感覚障害が現れます。やがてけがを負っても痛みを感じ難くなって、知らないうちに潰瘍や壊疽をきたしてしまうことにもなります。そのため足の切断手術を余儀なくされる患者も少なくありません。

② 糖尿病腎症
片方の腎臓に100万個ほどある毛細血管の集合体(糸球体)が血液のろ過器です。高血糖によってこの糸球体に障害が起きると腎臓の大切な機能を損ない血液透析が必要になります。現在、透析を必要とするに至る理由で最も多いのが糖尿病です。私の友人の臨床工学技士の話では、透析を受けに来る新規患者の中には、すでに片足を切断している人もいるそうですから、たかが糖尿病と軽く見るわけにはいきません。

③ 糖尿病網膜症
成人後に視力を失う最大の原因が糖尿病です。カメラのセンサーに例えられる網膜には微細な血管が走行していますが、高血糖で障害されると網膜症が起きます。血管新生といって、機能を失った血管領域を補うかのように生まれたとても細かな脆弱な血管は、網膜剥離や出血の原因となり、やがて重篤な視力障害をきたします。

④ 脳梗塞
脳梗塞は糖尿病の第4の合併症といわれます。高血糖状態は動脈内にプラーク(脂質の蓄積)を生じさせるほか、動脈を直接損傷するため、動脈硬化を進行させて梗塞が起きやすくなります。脳梗塞は原因によっていくつかの種類に分類されますが、糖尿病はすべての脳梗塞のリスクを高めます。なかでも無視できないのは症状に乏しい小さな梗塞(ラクナ梗塞)です。あまり知られていませんが、これは認知症との関係も無視できないものです。

血糖値を管理する重要性
血糖値が高くなる最大の原因は肥満です。家系的に糖尿病の体質を持つ人の場合はもちろんですが、それとは縁がないと思っていても肥満を原因として血糖値が上昇してしまう事例はいくらでもあります。子供に多い1型糖尿病は、血糖値を下げる働きをするホルモン、インシュリンがつくられない病気であり、その多くはインシュリン注射が必要になります。これは生活習慣とは一般に関係ないものです。肥満を主因として発症する2型糖尿病は生活習慣の改善によって自らがコントロールするべき病気です。現代病として重要なのはこの2型糖尿病であり、その多くは予防できます。

糖尿病の予防
食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスなどを避けることが予防に必要ですが、一言でいえば「太らないこと」が最も大切です。特に直系の親族に2型糖尿病の患者がいる場合は、体重が増えれば糖尿病を発症するリスクが著しく高まると認識するべきです。血糖値が100㎎/dlを上回ったら要注意。糖尿病はたとえその診断を受けても、肥満がその引き金になった場合であれば減量するだけで血糖値の大幅な低下が期待できます。身体的な苦痛を感じ難いのが糖尿病の特徴であるだけに、その予防と改善には強い自覚をもって臨まなければいけません。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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