メディポート健康コラム:カビとヒトの暮らし

2023/05/31

スクリーンショット (2416)とかく嫌われるカビとは、いったい何者なのでしょうか。私たちが「カビ」と呼ぶものは増殖した菌類が集合体(コロニー)をつくって目に見える姿となったものです。カビはバスルームやキッチンなど水気が多いところで増殖しやすいものの、一般に場所を選ぶことなく繁殖します。ある時、室内の壁の一部が何となく黒っぽいなと思ったらカビだった、という話も珍しくありません。生活空間に関係が深いのが黒カビなら、食品には青や白、黄色など様々な色のカビが生えます。お正月の鏡餅の上下の餅を離したときに、そこに生えている色とりどりのカビに驚いたという経験もあるのではないでしょうか。カビはその種類によって、色も違えばその生態や性質も異なります。

カビの利用
まさかカビが好きな人はいないと思いますが、カビの恩恵を受けていない人もまずいません。我々の生活にカビが利用されていると言うと、ほとんどの人は、「そんなもの使うわけがない」と否定するのでしょうが、特にアジアの人々の食生活はカビなしでは成り立たないほど大切な存在となっています。日本食の味の基本とも言える醤油や味噌はカビの一種である麹菌がなければ製造できませんし、日本酒や焼酎をつくるにも麹菌が欠かせないことはご存じの通りです。また世界で最も硬い食品といわれる鰹節(枯節)も、カツオからカビの力で極限まで水分を抜き取るとともに余分な脂分を分解し、最終的に石のように硬くしなければ完成しません。さらに洋食の範疇になりますが、ブルーチーズは青カビ、カマンベールチーズは白カビを利用してつくられます。カビは水分を抜き取るだけでなく、旨味成分であるアミノ酸を産生するなどその食味にも大きな影響を与えるものです。それぞれのカビの性質を上手く利用して生み出される様々な味や食感が、我々の舌を楽しませてくれます。

抗生物質の発見
1928年、スコットランドの細菌学者アレクサンダー・フレミングによって発見されたペニシリンは、青カビから分離された抗生物質です。実験でブドウ球菌を培養していた時に不手際から生えてしまった青カビ。培地にカビを生やしてしまうなどもっての外ですが、その青カビの周囲のブドウ球菌が溶解していることに気付いたのは素晴らしい着眼点でした。研究者としては恥ずべき大失敗が転じて人類史上まれにみる大きな発見につながったのです。こんな経緯で発見された抗生物質ペニシリンは、ある意味人類を救った魔法の薬。実際に臨床への応用にはその後10年ほどの年月がかかったものの、第二次世界大戦中の負傷兵など多くの人々を感染症から守り、彼らの命を救うことができました。梅毒治療には今でもペニシリン系の治療薬が切り札になっており、著しい治療効果を発揮しています。なお、フレミングは抗生物質発見の功績によりノーベル生理学・医学賞を授与されています。

カビと健康
我々にとってその種類によっては利用価値が大きな「カビ」ですが、反対にその有害性として、アレルギーや発がん性、あるいは食中毒といった健康面に対しての影響も無視できるものではありません。気密性が高くなったマンションの部屋は、とてもカビが発生しやすい環境です。気を付けていてもカビの発生を完全に止めることは難しく、室内を無数に飛びまわる眼に見えないカビの胞子がアレルギーの原因になることもあります。しばらく使ってなかったエアコンは、その稼働の前に必ず中をチェックしてください。黒カビがびっしり生えていることもあり、パネルの中を掃除せずにスイッチを入れると、その瞬間、大量の胞子を部屋中にばらまくことになりかねません。また、豆類に発生する黄色いカビにはアフラトキシンという強力な発がん物質が含まれています。開封後しばらく食べていない豆類には特に注意が必要です。ヒトの身体に繁殖して水虫などの原因となる白癬菌は皮膚の角質などのタンパク質を栄養とするカビです。菌糸を皮膚に侵入させるので薬の成分が到達しにくく治療を難しくしています。

カビ対策
カビの繁殖条件は温度、湿度、そして栄養であり、これらの条件が揃うと急速に増殖します。しかし、温度に関してはそれほど大きな条件にはならず、ヒトが生活できる環境下であれば十分なことから、現代ではカビに季節性はないものと思われます。特に現代の気密性の高い住宅は湿気がこもりやすく、冬でもカビの繁殖に好適な条件になります。カビ対策には室内の湿度を常に70%以下に維持することが理想です。時には衣類が入った引き出しやクローゼットを開けた状態でひと部屋ずつ集中的に除湿して衣類のカビ予防をおこないたいものです。また水を使うバスルームやキッチンには水を残さないように、できれば使用後に水分を拭き取っておくことをお勧めします。普段目に入らない洗濯機の内部はとてもカビが生えやすいところです。できる限り乾燥させるように心掛けてください。
長く履いていない靴、使わずにしまい込んであるバッグ、その中の小物入れなどがかびていませんか?使わないものでも時々ケアすることが大切です。使おうとしたら白いカビに覆われていたということがないように。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


Metro Medical Centre医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
みなさまの健康管理室 メディポート

健康診断のお問い合わせは
日本語ホットライン ☎2577-1568
✉ info@mediport.com.hk 💻www.mediport.com.hk

健康診断のお申し込みはウェブサイトからもどうぞ。
痛くない 苦しくない 内視鏡検査(胃・大腸)実施中です。
Rm.1811, 18/F., Olympia Plaza, 255 Queen’s Rd., North Point, Hong Kong

Pocket
LINEで送る