メディポート健康コラム:私の健康論

2023/11/01

スクリーンショット (2476)1948年に設立された世界保健機関(WHO)は、健康とは「病気でないというだけではなく、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態」であるとその憲章にあげています。つまり人の幸福や生活の質も健康にかかわる重要な要素であるとしています。健康の定義を調べてみると、このように抽象的でわかりにくい書き方がされていますが、現代における健康とはそれだけ複雑な概念であり多くの要素がからむものなのです。難しいことは置いておき、私なりに「健康」というものを考えてみたいと思います。

死亡原因の推移
ところで日本人の死亡原因はどのように変化してきたのか、過去を振り返ってみましょう。1950年における最も多い死亡原因は結核で、その数は人口10万人当たり146.4人。対して悪性新生物(がん)による死亡は結核のほぼ半数の77.4人で、死因としては5位に過ぎませんでした。さらに1960年になると脳血管疾患が160.7人でトップに躍り出ます。この傾向は1980年代まで続きますが、1990年統計で初めて悪性新生物(がん)による死亡が第一位となり(177.2人)、次に心疾患によるものが134.8人、脳血管疾患は3位となりました。その後は悪性新生物(がん)による死亡が増え続け、2016年統計では298.3人に達しました。日本人の死因が戦後大きく変わってきたことが読み取れますが、人々の「健康」の捉え方も変化してきていることも明らかです。

平均寿命と死因
1950年における平均寿命は男性58.0歳、女性61.5歳にしかすぎませんでした。それが2022年にはそれぞれ81.47歳、87.57歳にまで伸びています。死亡原因の第一位は、結核から脳血管疾患、そして1990年に悪性新生物(がん)がトップになりました。がんによる死亡者数はその後も毎年増え続けています。結核による死亡が減ったのは、人類史上最大なる発見のひとつである抗生物質が大きく貢献しています。もちろんそれでも結核は侮れない感染症に違いありませんが、少なくとも怖い病気ではなくなりました。それに代わって死因の第一位になった脳血管疾患は、おそらく当時の塩分摂取過剰と関連があります。健康に対する意識が高くなったことや、治療技術の進歩によってこの病気による死亡率が下がったのです。このところ悪性新生物(がん)が死因の第一位を独走していますが、これはがんの確実な治療法が確立されないままに進む高齢化が最も大きな要因ではないでしょうか。

健康に対する意識の変化
WHOの小難しい健康の定義など一般の人が考える必要はありません。その時代時代で漠然と「健康でありたい」と思う内容が変わるのは当然です。戦後しばらくは結核が最も恐ろしい病気であり、結核感染が疑われたときの動揺は、現代のがんの告知を受けた時に似ていたのではないでしょうか。その後、脳血管疾患が発症後の後遺障害を恐れて、「脳卒中にはなりたくない」と誰もが願った時期もあります。現代人はがんを最も恐れていることに誰もが疑いませんが、これはがんが今でも早期発見が強く求められているに過ぎない難しい病気だからです。現代人が、自分は健康であると考える最も大きな理由は、健康診断などで健康上の問題を指摘されていないことかもしれません。しかし、健康診断で何らかの問題を指摘されたところで、苦痛や不快感、あるいは何らかの不都合がなければ、自分は健康なグループに入るものと認識している人が少なくないようです。ほとんどの人は、自分は健康であると思っているのかもしれません。

ヒトは死に向かって生きる
2022年に出生した人が90歳を迎える可能性は男性で28.1%、女性ではなんと52.6%にも及ぶと言われます。100歳を迎える人口が著しく増加することに疑いの余地はありません。今年の敬老の日に厚労省から発表された日本の100歳以上の超高齢者人口は過去最多の9万2139人です。いったい人はいくつまで生きる可能性があるのでしょうか。ヒトは死に向かって生きるものと言えますが、どんなに長生きしても当然のことながら身体機能は衰え続けます。一言でいえば老化ですが、新陳代謝の一環で新しく生まれ変わる細胞にも変化が生じ、遺伝子のミスプリントが起きる可能性が大きくなるのも事実です。これは高齢化を原因とするがん患者増加の一因です。一方でがん治療も急速に進んでおり、一説によると、十数年後にはがんでは死ななくなると言われています。この場合日本人の平均寿命は約8歳延びると試算されており、高齢者人口は著しく増加します。自分が100歳を迎える可能性が高いものと思って、それに向けて早くから準備しておきたいものです。

支える人がいなくなる
今後も少子高齢化が著しく早いスビードで確実に進みます。家族の形態も核家族から孤独化が進んでいます。昔は家族で高齢者を支えたものですが、今は行政サービスで支えられるしかない高齢者が増えています。そのセーフティーネットからさえもこぼれ落ちてしまう高齢者も少なくないのが現状です。WHOの健康憲章にある「社会的に満たされた状態」でないと健康でないのであれば、今生きる多くの高齢者は不健康と言えましょう。十分に長生きしている超高齢者にとっての健康の定義は「自分で歩けること」だけだと思います。シモの介助を受けることなく自分でトイレに行ける状態です。ヒトの健康に対する認識は年齢によって変わりますが、若い時から意識して少しだけ努力することが将来にわたって健康を維持する上できわめて重要です。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


Metro Medical Centre医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
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