メディポート健康コラム:コレステロールの真実

2024/06/05

スクリーンショット (2605)「コレステロールは悪いもの」そんなイメージはありませんか?その数値は低ければ低いほど良いと思っている人は少なくありません。コレステロールへの誤解が人々の認識に定着して独り歩きしているかのようです。確かに高コレステロール血症は心臓や脳血管系への影響が大きく、循環器系疾患の直接的な原因になります。しかしその一方で、コレステロールがなければ生命を維持することは不可能であるのも事実。正しい知識の下でコレステロールを考えなければいけません。

コレステロールの役割り
コレステロールは細胞膜の材料です。数十兆個の細胞で構成されている人体は、骨などの一部組織は除きますが1年もあればすべて新しい細胞に置き換わります。新しい細胞が生まれる時にはコレステロールが必要であり、コレステロール抜きでは細胞の再生はありえません。お腹に赤ちゃんを持つ母親は、急激に成長する赤ちゃんにコレステロールを送り続けているため、母体の血中総コレステロール値は300㎎/dlほどにもなります。
また、骨の形成に不可欠なビタミンDの原料として欠かせないのもコレステロールです。その元となる7-デヒドロコレステロールは皮下に多く存在し、これが紫外線を受けてビタミンDを合成するので、少々極端ではありますがビタミンDはコレステロールそのものです。
胆汁に含まれる胆汁酸は、過剰なコレステロールを消化管内に排泄させるために変換されたものですが、これは脂肪分を乳化してリパーゼなどの消化酵素を効きやすくさせるのに重要な働きを担います。一方で胆汁とともに排泄されるコレステロールが、時として結晶化して胆石になることもあります。さらに忘れてはいけないのは副腎皮質ホルモンや性ホルモンなどのステロイドホルモンです。これらもコレステロールが原料となるなど、コレステロールは人体にとって重要な役割を担っていることを理解しておかなければいけません。

悪玉コレステロール、善玉コレステロール
コレステロールは脂質であり、そのままでは血液に溶けることはできません。これは中性脂肪も同じこと。そこでHDL、LDL、VLDLなどのリポタンパクと結合した形となって血液中を運ばれています。このうち良く知られているのが善玉と呼ばれるHDLコレステロールと悪玉のLDLコレステロールです。これらは基本的には行き先が違うものと思ってください。LDLコレステロールは悪いものではなく、これから使われるものとして肝臓から末梢へ送られていくもの。反対にHDLコレステロールは、末梢で余ったコレステロールが回収されて肝臓に戻っていく途中です。良いも悪いもありません。確かにLDLコレステロールが必要以上に多いと動脈硬化など血管系疾患のリスクを高めますが、HDLコレステロールとして回収されるものが多ければ良く、それらのバランスが大切です。

コレステロール値はなぜ上がる
コレステロールはその必要量を維持するために肝臓で調節されています。つまり食べものから一時的に多くのコレステロールが摂取されたとしても、肝臓で血中濃度を上昇させないよう調整します。また反対にコレステロール摂取が少ないと、それを補うために肝臓はコレステロールを増産します。一般に体質によってコレステロール値は調節され、遺伝情報に刻まれた数値を目指します。高コレステロール血症の人は、親も同じ体質を持つことが多いものです。これに肥満などが加わると更に数値を上げてしまうと考えられます。

食事では調整が難しい
コレステロールを多く含む食品の摂取を控えても、コレステロール値を下げることは一般的に難しいものです。コレステロールをまったく摂取しない食生活を続けたにもかかわらず、その思いに反してコレステロール値が大幅に上昇してしまったという事例もあるほどです。卵にはコレステロールが多く含まれるという理由で食べるのを制限している人もあるようですが、卵(魚卵などでも同じ)は、これから盛んに細胞分裂してあらゆる器官を作り上げるのに必要なすべての栄養素を含む「完全栄養食」ともいえる食品です。卵が貴重でとても高価だった時代は、病気にならないと食べさせてもらえないほどの食品でした。コレステロールを多く含むという理由だけで卵を避けるのは、とてももったいないことです。コレステロールに限るわけではありませんが、ある食品を健康のために避けるということは賢明な選択とは言えません。
まず確認しておきたいことは自分の体形。やせ形でコレステロール値が高い人は、ほぼ間違いなく「家族性」です。つまり遺伝。この場合はどんなに食事制限しても、その値を下げることは困難です。肥満体でコレステロールのほかにも中性脂肪や血糖値が高めなどいくつかの問題が重複している場合は食事療法がとても有効です。とにかく減量してください。体重減少に伴って健康状態が回復し、コレステロール値も下がる可能性が期待できます。コレステロールはそれを単体で考えるのではなく、そのほかの要因も加味して健康への影響を考えるべきです。
今回のお話で、コレステロールについての誤解が少しでも解けると嬉しいですね。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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