総合健康診断サービス「メディポート」医療情報:感染症と地名の関係

2016/03/03

インフルエンザが大流行しています。今季は流行開始が非常に遅かったため、そのピークも2月下旬くらいまでずれ込むのではないかと専門科は予想しています。インフルエンザは毎年冬場を中心に流行を繰り返しているA型ウイルスと、際立った季節性はないB型が流行の主流ですが、今年は、例年春先に患者数が増える傾向にあるB型に、流行が遅れたA型の流行ピークが重なる可能性が大きくなっています。悪いことに日本では花粉症の季節にもあたります。人によってはかなり苦しい思いをしなければいけないので、十分な注意が必要になります。メディポート

ところで、感染症の名称に地名が付けられていることが珍しくはないのをご存知でしょうか?インフルエンザであれば香港型が毎年流行を繰り返していることは広く知られていますが、このウイルスを細かく分類するとニューカレドニアとかフロリダといった地名もその分類に使われているのです。また昨年から中南米を中心に感染者数が増えだしたジカ熱ですが、ジカというのもアフリカ・ウガンダにある森の名前です。現在散発的な感染者を出しているMERSも中東呼吸器症候群という名称であり、地名とはいえませんが同様の名称ですね。地名がついた感染症は他にも多くの種類があります。日本脳炎は日本人にとってはありがたくない命名ですが、英語名もJapanese Encephalitisとなっており、しっかりと「日本」が入っています。そのほか今ではなくなりましたが日本住血吸虫や宮崎吸虫という寄生虫疾患もかつて日本で流行していたことがあるものです。ライム熱という病気の名前を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは米国コネチカット州ライムで最初に流行したことで名付けられました。ウイルス性食中毒の代表であるノロウイルスも、最初にウイルスが発見されたアメリカ、オハイオ州のノーウォークがその名前に付けられていたのです。

このように病名や病原微生物を命名する場合に、その感染症が初めて流行した地域(都市名や国)の名が付けられることが少なくはありませんでしたが、最近ではそのようなことは殆どなくなったように感じます。新しい病原ウイルスが発見されたといって、その地名が付けられてしまっては、そこに住む人々にとってはとても迷惑なことです。ジカ熱にしても、一般的に知られるようになったのが最近であるだけで、ウイルス自体は1947年にジカの森のアカゲザルから分離されて命名されているのです。最近発見されたウイルスであれば、このような名前はつかなかったのではないかと思います。

ところで、インフルエンザウイルスに関しては、現在でもいろいろな地名が付けられています。これは世界的に流行しているウイルスであり、ウイルス名に地名が付けられたとしても大きな影響がないからかもしれません。同じA香港型インフルエンザでも、少しずつ構造や性質が変化していきますが(亜型)、新な亜型ウイルスが初めて分離(発見)されると、その場所の名前がつけられます。ニューカレドニアやシドニー、あるいはカリフォルニアといったものもありますし、もちろん中国や日本の都市名がついているものもあります。ニューカレドニアなどおよそインフルエンザとは結びつかないような場所ですが、最近までは世界的にこのウイルスが多かったようです。リゾートを連想してしまいますが、ウイルスの毒性が弱いというわけでは決してありませんのでイメージで誤解することは禁物です。

そういえば現在流行を繰り返しているA香港型ウイルスの起源は、1918年から19年に世界的に流行したスペイン風邪に行き着くようですが、実際にはスペインから流行が始まったわけではないようです。世界的に大流行して3000万人以上が犠牲になったと言われていますが、これは当時、主要な国のうち病気に関して報道規制をしていなかったのがスペインであったため、あたかもスペインだけの状況が酷いように思われてしまったからだそうです。その後も現在に至るまでスペインが、最も被害が大きかったインフルエンザウイルスの名前として歴史に残ってしまっているのです。

感染症にはその名前に様々ないわれがあるようです。気になる感染症があったらネットで検索してみると、意外な発見があるのかもしれませんね。

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