尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.43

2021/05/05

独占禁止法における市場支配的地位の濫用

 独占禁止法は、市場で支配的な地位にある会社が、その地位を濫用することを禁じています。では、「市場支配的地位」と「地位の濫用」とは具体的に何を意味するのでしょうか。

 

 「市場支配的地位とは、次のa. b.のいずれかに該当する場合をいいます。

a.関連市場(関連市場とは、事業者が一定期間内に特定の商品又はサービス(以下まとめて「商品」という)について競争を行う商品の範囲又は地域範囲を指す)で、商品の価格、数量、その他の取引条件をコントロールできること
b.その他の事業者の関連市場への参入を阻害し、もしくはこれに影響を及ぶすことができる能力を有すること

 

 「そして、市場支配的地位の有無を判断するときは、以下の要素が考慮されます。

1)関連市場での占有率、関連市場の競争状況
2)販売市場、原材料調達市場をコントロールする能力
3)財力、技術条件
4)他の業者のその会社への取引依存度
5)他の業者の関連市場への参入の難易度等

 もっとも、上記の要素を考慮しても、具体的に市場支配的地位があるかどうか明確ではありません。そこで、一定の数値基準を作り、市場支配的地位の存在を推定しています。市場支配的地位を有していないことを証明する証拠がある場合を除き、次の基準のいずれかに該当すれば、市場支配的地位があると推定できます。

 中国法務速報

 

1)独占禁止法第17条に基づき、「市場支配的地位の濫用」にあたるのは、以下のような行為です。具体的行為態様は「市場支配的地位の濫用行為禁止の暫定規定」の規定をご参照ください。

1)不公平な高価格で商品を販売し、又は不公平な低価格で商品を購入すること
2)正当な理由なく、原価を下回る価格で商品を販売すること
3)正当な理由なく、取引相手との取引を拒否すること
4)正当な理由なく、取引相手が自分だけと取引するよう限定し、又はその指定した者とだけ取引を限定すること
5)正当な理由なく、商品を抱き合わせ販売し、又は取引時にその他の不合理な取引条件を付けること
6)正当な理由なく、条件が同一の取引相手に、取引価格等の取引条件において差別的取扱をすること
7)国務院独占禁止法執行機構が認定するその他市場における市場支配的地位を濫用する行為

 市場支配的地位の濫用に該当する場合、違法行為の停止、違法所得の没収、前年度売上額の1~10%の行政制裁金(罚款)という重い罰則が設けられています。

 次回は、国家市場監督管理総局が2021年4月10日、アリババグループに対し、独禁法違反で違法行為の停止を命令するとともに約182億元(約3040億円)の罰金を科した事例について紹介します。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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