PPWビジネス通信 × アナシス Vol.44

2021/08/25

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

 

 「台風になったら香港は休みですか?」

 

 

問い:台風になったらいろいろルールがあると聞きました。会社は休みになるのですか?

黒崎:会社で休みだと規定していなければ、多くの場合は「自宅待機」となるでしょう。それを休みだと受け取るかどうかが問題なのです。

 香港では労工處が台風・豪雨時のガイドライン「Code of Practice in Times of Typhoons and Rainstorms」を発行しています。これはあくまでガイドラインであり、実は法的強制力はありません。つまり、極端に言えば香港では台風の日に働かせても、労働者への安全の配慮があれば許されるわけです。しかしながら就業規則で「休み」と規定していれば話は別となります。

 今年5月には深センでも「深セン市気象災害公衆防災ガイドライン」が試行されており、そうしたものは再度確認することをお勧めします。また香港では在宅勤務ルールとの整合性の問題などもでてきております。今回はその考え方を整理しておきたいと思います。

 問題は香港などでは「台風=休み」と勘違いしている人の多さと、一部日本の台風に対する考え方と現地のそれとの差があるときです。そこへ昨年からコロナ対応による在宅勤務が始まると、在宅勤務できるのに「休み」なのかと議論が一部で起こったのです。元々その日に在宅勤務予定だった人と、シフト勤務で出社予定だった人とで、不公平ではないかという声が挙がったりしました。

 その対策としては、事前のアナウンスメントを明確にしておくこと。どんなシグナルが発令した時に自宅待機になるのか、あるいは在宅勤務なのか休みなのか。また、警報解除時の出退勤はどうなるのか、交通機関の混雑を考慮するのか。在宅勤務が可能なのであれば、そんな時にわざわざ出社させるのは生産性が低いとは思います。

 台風に関しては事前にある程度の予測がつくものです。それゆえ使用者側は先読みして判断し、最善の策を事前アナウンスすると良いでしょう。その際最優先されるのは労働者の安全の確保。そして、お客様への出来る範囲での継続的なサービス。この後者の点で、過剰なサービスになっていないかを見直す機会となったのがコロナ対応だったかも知れません。

 これらのことを明確化したとき、既存の就業規則と不整合を起こすようであれば、たとえば「台風の日は在宅勤務」などとするのであれば、その修正も必要となります。その際、在宅勤務ができる・できないで在宅勤務か自宅待機かと分かれることにも注意が必要です。労働者側はその二つの区別がつかないことも多いようです。

 筆者は2002年より香港在住となりましたが、当初は「台風=休み」というコンセプトに反感を覚え、自宅待機時に課題図書を出したことがあります。しかし、激しく反発されました。慣習というものを変えることは、相当な障害があります。自宅待機時のオンライン研修などを用意していても、活用する企業は本当に少ないものです。それを実行するには、「明確な経営方針」「トップの覚悟と労働者との信頼関係」「在宅勤務制度の有無」「労働者の仕事に対する成熟度」が必要です。

 そもそも出社そのものや在宅勤務そのものを要望するのではなく、成果を求めていれば、こんな問題も起こらないのかも知れません。休もうが休むまいが、成果さえ出ていればいい。そういう考え方もあるでしょう。しかしそこへさらにチームワークを求めるにはどうしたらいいのか。在宅勤務できない職務にはどう対応すればいいのか。この辺りを管理職者達としっかり話し合っておく機会が来たのではないかと考えています。

 今から3年前、2018年9月に大型台風「山竹」が香港で猛威をふるいました。その時は翌日には3号に警報が引き下がっていたのですが、交通機関は大いに麻痺して出退勤に大きな影響が出ました。そこから翌年新ガイドラインが登場しています。そこには台風8号警報を3号に変更する前に「極端な状況:Extreme conditions」が発令・公布された際の労働者の出退勤について追加されました。また労工處は悪天候下において「労働者の安全確保」が最優先事項であること、また使用者は個別状況に基づいて、より「柔軟な対応を行うこと」を強調しています。

 日本ではその昔、台風であろうがなんとしてでも出勤するような雰囲気がありました。それもテレワークができるようになって変化が出ているはずです。台風への考え方は誰もが見ています。積極的な先手を打つことをお勧めします。


●この1年でのべ2,000名以上のご参加者を得たアナシスの各種ウェビナー講座。
「人材育成」「報連相」など充実したコース内容も弊社までお問い合わせ下さい。

お問い合わせ等はアナシス香港の牧野までご連絡ください。 (hkinfo@anaxis-asia.com

 

アナシス Anaxis

 


Anaxislogo

会員制の人事労務コンサルティングファームです。地場に根ざす、経験と実績のあるコンサルタントが対応いたします。香港・深圳・広州・上海でトータルサポートいたしております。詳しくはアナシス香港の牧野までご連絡ください。

住所 : Suite 8, 12/F., Tower 2, China Hong Kong City, 33 Canton Rd., TST
電話 : (852)2180-2005
メール: hkinfo@anaxis-asia.com
ウェブ: www.anaxis-asia.com

Pocket
LINEで送る