教えて!総経理!第7回【キヤノン香港カンパニーリミテッド 尾澤 一弘氏】

2022/12/21

社員が元気な会社づくりを
時代にあったニーズ解決とともに
1 - Mr. Ozawa_IS Logo_1_pmC-7108キヤノン香港カンパニーリミテッド
董事長 尾澤 一弘氏

カメラやビデオなどの映像機器、およびプリンタや複合機などの事務機器メーカーとして、誰もがその名を知るジャパンブランド「キヤノン」。スマートフォンの普及でデジタルカメラの市場は縮小傾向にある中でも、同社の製品は世界でもトップシェアであり続ける。また、オフィス複合機においても同社の強みである技術力の高さを武器に、競合の日系メーカーと肩を並べ販路を広げて来た。
今回弊紙では、今年9月に着任した同社の董事長、尾澤氏にインタビューを行ない、前任地や香港での新生活について、またご自身の信念などを伺った。

Q:ご入社からの経歴と前任地についてお聞かせください。
A:今年で勤続33年となりますが、入社当時はセールス畑におりました。日本本社を経て、オランダ4年、ドバイ2年、日本帰国後に再赴任となり、シンガポール5年、フィリピン5年の赴任から、今年9月に香港へ着任となりました。
入社当時を振り返ると、大学を卒業したばかりの若かった私は、本社へ配属され期待で胸がいっぱいでした。しかし、当時の仕組みでは1年間営業部で経験を積むことが義務付けられていましたから、入社すぐオフィスビルの上階から飛び込み営業を行う日々でした。管理部に配属された同期は、入社初日から空調の効いたオフィスで働く一方、自分は汗水たらしアポイントなしで企業をまわる日々。つらくなかったと言えば嘘になりますね(笑)。公園のベンチで落ち込んだことも今となってはいい思い出です。5. Mr. Ozawa_IS Lens_pmC-7330 edited v2

Q:日本本社を経て初めての駐在地へ行かれたのはいつですか?
A:1996年ですね。当時のキヤノンでは全世界の販売子会社経由でビジネスを展開する中、中東は本社が直接担当するエリアでした。この販売管轄の欧州子会社への移管とともにオランダに赴任となり、中東地域を管轄することに。その後は、ドバイ赴任にて中東拠点立ち上げ、アジアのヘッドクォーターであるシンガポール赴任、その後フィリピンへ異動となりました。フィリピン駐在当初は治安面などの心配もありましたが、気をつけるポイントさえ押さえていたら快適でしたよ。また、今回は香港駐在ですが、日本の物が何でも手に入る利便性はアジア全般に言えることだと思います。

Q:在宅勤務やペーパーレス化が叫ばれる時代ですが、貴社ではどのような取り組みを?
A:オフィス複合機の分野では、コロナ禍で在宅勤務が増えたことや、ペーパーレスが奨励される潮流など、弊社にとって少なからず影響はありました。しかしその一方で、財務決済の仕組みの中で書類が必要であることに変わりはありません。それら書類の電子化はもちろんですが、弊社独自システムにより効率的なワークフローソリューションを提供しています。
またお客様からよくいただくお悩みに、自社以外の、外部から送付された文書を取り込むことが難しいとの声も届きます。弊社では前述のシステムにより外部文書をスキャンしデータベースとして蓄積可能な技術があります。いわゆるインプットからアウトプットまで、一括で行えることが強みでもあります。
また、コロナ禍で在宅勤務や家庭学習のための家庭用プリンターの需要が増えました。一部地域では生産が追い付かないほどのニーズがありましたね。私たちはその時代のニーズに寄り添うプロダクトやサービスを常に提供することを心掛けています。
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Q:印刷業界からも注目される新製品プリンタが発売されたと伺いました。
A:はい、「imagePRESS V1000」ですね。同製品は、ネオンサインのような蛍光カラーや淡いパステルカラー、自然なグラデーションなど、ポスターやパンフレットなどの印刷物に最適な超高発色の印刷を実現させました。また、チラシや封筒から高級名刺、グリーティングカードなどの重厚感ある印刷物まで幅広く作成することができます。さらに、一冊の冊子に厚紙と普通紙が混在するような印刷でも、機器を分けずに効率よく連続印刷することが可能となっています。今まで外注でオフセット印刷を行っていたお客様が、自社で必要な少量ロットベースのオンデマンド印刷を行えるようになり、コストセービングにつながったとの声もいただいています。3. 36_Basic Config_PRISMA_front221115-Canon-018 edited

Q:カメラなどイメージング事業の近年の動向はいかがですか?
A:ここ香港で言えば、観光客が戻ってきていない現在では、やはり以前のような勢いはありません。また、加工技術の進歩でスマホで撮影した写真でも十分と考える方も多いでしょう。
弊社の原点はカメラ事業です。創業より培ってきた光学精密技術が強みと言えます。弊社のカメラは、人物撮影であれば「加工ツールに頼らず、自然な表情をより自然に美しく残せる」ということ。被写体によって使うレンズは違うので、一般の方でもいろいろなレンズを気軽にお試しいただけるレンズ貸し出しプログラムなどもあります。いい写真を撮るためのノウハウを伝えるワークショップや故障時の保証制度なども整っています。カメラをただの製品として販売するのではなく、カメラを通してたくさんのお客様のライフスタイルを豊かにするお手伝いをすることが我々のゴールです。

Q:オフィススタッフとの交流を大事にされている背景を伺えますか。
A:私自身が大事にしている信念が2つあります。一つ目は「一緒に考えよう(Think Together)」ということ。定期的にマネジャーたちとランチに行き、自己紹介や直面している問題などをヒアリングしています。中には新人が入社してすぐに退職してしまうこと、定着率の悪さに悩むマネジャーがいたこともありました。話を聞くと、オフィスがシーンとしていて居心地が悪く感じた社員がいたそうです。私自身も以前の赴任地で見かけた光景でしたが、隣同士の席に座っているスタッフがPCでチャットをして業務を行っているんです。職場はもっとガヤガヤと活気があるべき場所だと思います。人と人が一緒に働いている以上は、声にして交流を行うべきなんです。
また、このようなマネジャーたちとのランチは私にとっても社員の顔を覚えるいい機会となっています。ヒアリングでは、口外しないことを約束に部署や上司に対する不満や意見も受け付けていますよ(笑)。これら交流を通して、各部署が直面する課題や対応策をまとめた資料を各マネジャーにシェアし、意識共有を図っています。
二つ目は「Never x 5 Give Up!」。文字だけを見るとアツい精神論に響くかもしれませんが、今までのやり方にこだわらず、いろいろな方法を模索し、フレキシブルに対応しようというものです。目標に向かって簡単にあきらめず、様々なアプローチをできるか否かが現代でも必要とされる要素ですね。


 

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